数か月振りのブログ更新となる。台風15号の襲来後、更新が途絶えていたことに関しては、その後に再び関東地方は台風19号や豪雨に見舞われたためとか、僕の勤務先が人材難に喘いでいて連日の長時間勤務で疲れ果てていたとか、例によって言い訳が山盛りなのであるが、一番の理由は、僕自身が購入した限界分譲地の土地の整備に追われていたためである。夏場はどうしても酷暑や、猛烈な勢いで生育する雑草のために作業が進まないので、暑さが和らぐ秋から冬場にかけてが、土地整備の本番となる。

 当記事執筆時も、依然として作業は続行中ではあるが、とりあえず先日、ひと段落着いたところなので、その作業の模様は近日中に当ブログで簡単に紹介したいと思うが、その前に初心に帰って、今日は僕の自宅からも遠くない、富里市立沢に位置する典型的な限界ニュータウンである「立沢ニュータウン」を紹介したい。


 立沢ニュータウンは、富里市の実質的な商業中心地である七栄地区の中心部からおよそ5㎞ほど。市内には、富里市役所(商業エリアからはやや離れた立地にある)の近くに、名称がよく似た「立沢台団地」という住宅団地があるが、それとは位置も大きく異なり、近隣に工業団地はあるものの、もはや言うまでもなく広大な旧開拓地の片隅に取り残されたように位置する限界ニュータウンである。
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立沢ニュータウンの入口。市道脇に、団地名を記した看板が立てられている。
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看板が設置された入口から、少し奥まった位置に団地がある。
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団地の周辺は富里らしい広大な旧開拓地だ。

 「取り残された」という表現は比喩でも何でもなく、以前の記事でも少し触れたが、富里市は現在、この立沢地区の南部を始め、高松、高野、十倉といった市内東部の農村エリアは、コミュニティバスの運行を取り止めてしまっている。それは1便当たりの平均乗客数が5人に満たなかったという、あまりに低い利用率に起因するものだが、そのため現在、この立沢ニュータウンにアクセスできる公共交通機関は、富里在住の市民のみ利用登録できる予約制のオンデマンド交通以外には全くない。民間のバス事業者のバス停までは2㎞ほどあり、しかも団地周辺の市道は歩道もほとんど整備されていないことから、事実上、自動車でのアクセスしかできない状況にある。
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入口からしばらく進むと、周囲よりやや低い位置に団地が見えてくる。
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立沢ニュータウンへアクセスする路線バスは存在せず、団地内に富里市のオンデマンド交通の乗降場が設置されている。


 立沢ニュータウンの開発は70年代の半ばで、1979年の航空写真では既に数戸ほどの家屋が見られる。70年代の分譲地ということで、街路は狭く、また宅地の多くが古びた擁壁の上に位置するが、立沢ニュータウンは元々谷津田に面した傾斜地に造成されているため団地内においても高低差があり、擁壁が造られてしまうのは当時の住宅開発事情を考えれば仕方ないのかもしれない。
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団地は谷津田に面した傾斜地に造成されており、周囲には、富里ではあまり見かけない水田が広がる。

 団地の入口に、比較的中規模な住宅団地によく見られる管理規約の看板がある。新規の住宅建築を行う事業者に向けられたもので、工事の保証金や注意事項を明示したものだ。気になるのは、団地内をA、Bの2つの地区に分類し、「施設利用料」の名目で、異なる金額の負担を要求していることだ。団地南部のA地区が負担額1万円なのに対し、北部のB地区は2万円という、倍額の負担金を必要とする。
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団地入口に設けられた自治会の看板。区画によって施設利用料の負担額が異なる。

 立沢ニュータウンは、造成当時の航空写真を見る限りでは、看板上で指定されたA、B地区は、異なる時期に開発されている様子はなく同一の分譲地であるようだが、理由もなく負担額にこれほどの差を設けるはずはないので(到底住民の同意が得られるものではなかろう)、合理性のある理由があってのことだと思われる。

 立沢ニュータウンは富里市の公営水道が供給されているので、団地内で共用施設として見当たるものは、公園や集会場、駐車場(後に詳述)の他には集中浄化槽しかない。しかし2019年12月現在、施設負担料が安いA地区に位置する、約50坪の宅地が60万円で広告が出されているのだが、その広告の備考欄を見ると、排水は汚水、雑排水共に宅内処理とある。

 不動産の広告はえてして事実誤認に基づく誤記が目立つものだが、集中浄化槽の設備を擁する宅地にわざわざ宅内処理の誤記をすることは考えにくく(宅内処理の記載がある物件広告自体が珍しい)、推測になるが、A地区の区画は、配水管の老朽化か、あるいは別の何らかの理由で集中浄化槽に接続されておらず、それが施設利用料の負担額の差異の理由なのかもしれない。

 なお、立沢ニュータウンの集中浄化槽は団地最奥部、B地区の北端に位置し、ポンプ音も聞こえ通常に稼働している模様だ。
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立沢ニュータウンA地区の売地広告(Yahoo!不動産より)。備考欄の制限事項に、汚水・雑排水は宅内処理との記載がある。
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団地最奥部に位置する集中浄化槽。さすがに設備の古さは隠せないが、ポンプ音が聞こえ正常に稼働している模様だ。

 団地の中をしばらく散策していて気付くのは、少なくない宅地が、駐車場として転用されていることだ。それも、単に不在地主の空地に無断駐車している様子ではなく、おそらく近隣住民が取得して、防草シートなどを打ってれっきとした駐車場用地として利用している雰囲気である。この団地は区画によって広さにばらつきがあるが、狭い区画はどう見ても30坪にも満たない狭小地で、これではバスもないこの立地で充分な駐車スペースを確保できないため、このように駐車スペースを別に設けているようだ。

 よく見ると、駐車場だけでなく、この団地はプレハブやコンテナハウスで増築している住宅も至る所で見かける。これも駐車場同様、宅地が狭く居住空間を拡張できないため、隣接区画にコンテナハウスを設置しているのだろう。限界ニュータウンの売地は、こうした形で近隣住民の需要があるケースがあるので、仲介業者の中には、積極的に近隣住民へ営業を掛けるところもある(どこもそうかもしれないが)。
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立沢ニュータウン団地内。
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空き地は住宅の狭間に至る所に残されているが、今日の感覚では宅地として狭すぎる区画も少なくない。
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充分な駐車スペースや居住空間を確保できない区画所有者は、隣接区画を取得して利用している模様だ。

 そして特筆すべきなのは、この団地には、住民が個人的に確保している駐車場とは別に、自治会が運営している月極駐車場が存在することだ。それも、空き区画を転用した小規模なものではなく、舗装こそされていないものの、数十台分の駐車スペースを確保し、更に来客用のスペースまで確保した本格的なものだ。
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自治会が運営・管理する住民用の駐車場。
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住民用の駐車スペースの他に、来客用のスペースも確保されている。

 たかが駐車場で何を大袈裟な、と思うかもしれないが、特に立沢ニュータウンのような70年代の古い限界ニュータウンにおいては、駐車場の確保は生活の根幹をなす重大な問題である。限界ニュータウンに限らず、二流の開発業者が適当に造成した70年代の分譲地は、車両一台がようやく通れる程度の幅員しか確保されていないところがほとんどで、駐車スペースの増設もままならない多くの限界ニュータウンにおいては、住民や来客は仕方なく近隣の空地に無断駐車したり、車両の往来に支障の出ない袋小路などの私道上に路上駐車しているのが現状だ。

 これまで訪問した限界分譲地で、管理組合が運営する駐車場を目にしたことはほとんどなく、記憶にあるのは唯一、成田市のビバランド団地管理組合が、団地内にごく小規模な駐車スペースを設けているのみであった。私道上の駐車は、道路交通法の適用外なので法的な問題はないとは言え、事故の危険性や、緊急車両の通行の阻害など様々な問題を孕むため、管理組合自ら運営する駐車スペースが広く確保されていることは、高く評価できるポイントだ。

 なお余談であるが、この駐車場の一角には、公営水道が敷設された現在では使われなくなった団地水道(集中井戸)の圧力タンクが今も残されている。製造年は昭和53年とあり、かなりの年代物だ。
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駐車場の一角に今も残る集中井戸の圧力タンク。
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圧力タンクの製造表示板。

 その他にも、団地内のゴミ置き場はキレイに管理され、ゴミ当番の方の名札も下げられていたり、側溝の各所にゴミ入れの缶が設置されていたり、さすがに住宅団地としての規格の古さは隠せないとは言え、開発からおよそ半世紀を経た今でも、適切な管理が行き届いていることが推察できる。富里市東部に点在する分譲地、とりわけ規模の小さな分譲地は、もはや取り返しがつかないほど荒廃したところも少なくないのだが、この立沢ニュータウンは、それらのミニ分譲地と比較すれば戸数も多いこともあってか、利便性に極めて難のある立地でありながら、住宅団地としての一定の水準の住環境は維持されている。団地内には小さな公園と集会場もあるが、遊具も錆びて朽ち果てていることはなく、集会場も綺麗なものだ。
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団地内のゴミ集積場。清掃は行き届いている。
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公園と集会場。いずれも良好に管理されている。
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立沢ニュータウンの年間行事予定。


 だが、この程度の戸数の住宅団地において、これだけの管理を維持していくのは容易なことではない。この団地は、冒頭で紹介した看板にも記載されているように居住者の自治会加入が規約で義務付けられており、その自治会費は月額1500円と結構な額だ。集中浄化槽の利用費としては安すぎるので、おそらくこの自治会費の他に、集中浄化槽の利用料も別途必要なはずである。

 自治会の運営実態は地域によって千差万別で、中には確かに守銭奴のような悪徳理事長に牛耳られた、宴会で自治会費を浪費するようなろくでもない自治会があるのも事実だが、さして規模が大きいわけでもないこの団地で、住民自治で公園や駐車場を維持管理していくとなれば、月額1500円は必要になるのではないか、とは思う。ただ問題は、いかに団地内が適切に管理されていようと、この立沢ニュータウンに、年間2万円近い自治会費を負担してでも住みたいと思えるほどの訴求力があるかどうかとなると、それは全く別の話であるということだ。すなわち既に述べたように、団地自体の規格がもはや古すぎるうえ、あまりに立地条件が悪すぎるのである。
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商業地域の近隣を中心に、今なお新規の宅地分譲が続けられる富里において、その訴求力を高めることは難しい。

 北総台地上に位置する富里は元々市内全域にわたって平坦な地形で、今でもその気になれば高速道路のインターや商業エリアの近隣に、宅地として開発可能な土地は多く残されている。実際、京成成田駅からの路線バスの本数が一定数確保されている地域は、今でも地元業者によって宅地分譲が盛んに行われている。
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富里インターチェンジ付近の商業エリア。
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京成成田駅からのバス路線の沿線上で分譲される建売住宅。

 その一方で、立沢ニュータウンを含めた市内東部は、後出しジャンケンのような線引きによって市街化調整区域に組み込まれ(線引き前に開発された住宅団地は建築可能だが、住宅ローンの審査に不利になる可能性がある)、バス路線網も剥ぎ取られ、事実上、富里は市内東部から、富里インターや商業エリアのある市内西部への居住空間の誘導を行っていると言える。それは見方によっては冷酷な施策と言えるかもしれないが、だが重要なことは、現在の日本においては、この現在の富里の施策こそが、一般的には奨励されるべき都市計画のあり方なのである。

 限界ニュータウンは紛れもない乱開発の産物であり、インフラ整備の効率性を考えれば、それはもはや止めようもない時代の流れなのかもしれないが、地域社会から、居住に適さないと判定されてしまった地域は、その後一体どのような結末が待ち受けているのか、富里市東部に今なお多く残る限界分譲地は、その一つのモデルケースとなる気がしてならないのだ。
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立沢ニュータウンへのアクセス

富里市立沢
・東関東自動車道富里インターより車で15分


追記:
コメントにお返事もできない状態が続きお詫び申し上げます。返信がなくとも、頂いたコメントはすべて読ませていただいております。ありがとうございます。