清和団地

神崎町

清和団地 (9)

 清和団地は、先に紹介した成田市の「リバティヒル500」からほど近いところに造成された分譲地であるが、ここは神崎町域に属する。もともと成田空港より東側に位置する限界ニュータウンはすべて、旧下総町や旧大栄町など、未線引き自治体であった旧自治体の頃に開発されたものが、吸収合併されて成田市域となったものであるが、神崎町は成田市と合併しなかったため、成田市への昇格が叶わなかった団地である。

 もっともこの辺りに住居を構えるような人は、あまり自分の居住する自治体名や町域名をステイタスとして捉える発想はないとは思うが、だが現実に成田市は空港があるがゆえに、千葉県では浦安と並んで最も財政状態が健全な自治体のひとつで、地方交付税の不交付団体でもある。対して神崎町は町内に農業以外のさしたる産業もなく財政規模も小さいため、財政力では千葉県でもワースト5に入ってしまうような状態で、こうなるとどうしても自治体による住民サービスに差が出てきてしまい、立地条件では全く大差ないのであれば多くの住民は成田市内を選択してしまうことは想像に難くない。

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成田市との市境に位置する清和団地。神崎町の中心部からも遠く、不利な条件下にある。

 そのためであろうか、清和団地は近隣にある他の成田市内の限界ニュータウンと比較して土地取引の動きが鈍い。団地内は限界ニュータウンではおなじみの草刈り業者の看板を見かけることもほとんどなく、物件サイトなどでもここの売地の広告を見かける機会は少なく、雑草は生えるに任せた状態となっている空き地が多い。また、この団地は街路の大部分が狭い未舗装道路であることも、取引が進まない遠因の一つと考えられる。

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街路は未舗装で、草刈りの行われていない未管理宅地が目立つ。

 ただしこの団地は、近隣の他の分譲地と異なり平坦な土地上に造成されていて、一部の宅地に若干の高低差はあるものの、巨大な擁壁を構えたひな壇の宅地がない。しかも元は丘陵上の畑であって、田んぼや沼地を埋め立てて造成した分譲地ではないのである程度地盤は強固である。ひな壇住宅地は、確かに日照や眺望が良好というメリットもあるが、街路にも勾配が多く出来てしまうし、駐車場を敷地内に確保するには多額の外構工事費用が必要となる。

 実際に暮らしてみれば平坦な土地の方が暮らしやすいし、安価に、そして安全に暮らしたいならこうした平坦地を選ぶべきだと個人的には考える。水害や土砂災害の恐れもない。未舗装の狭隘路であるという点も、アスファルトより水はけがよく、余計な通過車両を抑制できると考えればすべてデメリットとも言えないだろう。

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ほとんどの街路は平坦で、未舗装のため交通量も少ない。

 また一つ、この清和団地の大きな特色として、この手の小規模な分譲地には珍しく、団地中央を貫く比較的幅員の広い道路や、建築物のない街路沿いに杉の木が植林され、杉の並木道を形成している点があげられる。国土地理院の航空写真閲覧サービスを利用して開発前や開発当時の航空写真を確認すると、この団地は元々畑であり、造成中には樹木の姿が確認できないことから、分譲後に、利用の進まなかった宅地に杉木を植林したものと思われる。それから長い年月が経過し、杉木の生育が進みここまで背丈が伸びたのだろう。

 杉木は等間隔に配置され枝木の伐採等の管理も行き届いており、まるで神社の参道を思わせる。何より並木道というのは一朝一夕で完成させられるものではなく、長い年月の管理の努力の賜物だ。杉であるので好まない人も多いとは思うが、個人的にはなかなか気持ちのいい景観である。

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団地内に形成された杉並木。木漏れ日の間を散歩するのもいい。

 よく見れば側溝の水流も滞りなく清掃が行き届いており、空き地が未管理なだけに一見すると荒れた印象のある清和団地だが、菜園として活用する住民も多く、自主管理意識の高い団地であることが想像される。限界住宅地は、こうした管理状況も細かく見ていきたいものだ。

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菜園として活用される宅地。限界ニュータウンではポピュラーな空き地の再利用法だ。

清和団地へのアクセス

香取郡神崎町古原

  • 圏央道下総インターより車で5分
  • 京成成田駅より成田市コミュニティバス 津富浦ルート「古原入口」バス停下車 徒歩2分
  • 成田線下総神崎駅より神崎町営循環バス「古原清和団地」バス停下車

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