むつみ台団地/火野口台団地

山武市

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 前回紹介した山武市横田の森の中の分譲地を、更に最寄のバス停から遠ざかる北東方向へ進んだ先にも、より一層寂れた誰得ニュータウンがある。

 元々快速もほとんどなく(早朝1本のみ)、不便で都心までの通勤には不向きであるとの評判である総武本線の八街駅から、1日数便のコミュニティバスのバス停で下車し、そこから更に徒歩20分以上。もはや郊外でも何でもないただの農村どころか、その農家住宅すらまばらになり、人口密度はますます低くなる。分譲地と原野商法の境目がいよいよ曖昧になってくるエリアで、ここまで来れば成田空港ももうすぐだ。

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住宅もまばらな寒村に寂しく立つむつみ台団地の看板。

 この辺りまで来ると、時折道路に勾配が現れてくる。ひたすら平坦な地形が続く北総台地から丘陵の稜線上を下り始め、谷津田が目につくようになる。その下り途中に「むつみ台団地」と書かれた小さな看板が現れる。

 団地の入口付近には建物は何もなく、雑草や樹木が伸びきった更地があるだけなので果たしてこの先に本当に団地があるのか疑わしくなるが、ある意味それは正解とも言える。団地の中も家屋の密度は周辺地域とまったく変わらず、そもそも「住宅団地」としての定義を満たしていないからだ。ただ擁壁の存在だけが、辛うじてここが住宅団地を想定して開発されたものであることを示している。

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団地の入口には家屋は一切なく、電線だけが延びている。

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むつみ台団地内部。家屋はまばらだ。

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ほとんどの区画は更地で、家屋のある宅地は1割程度だ。

 家屋のある宅地はおおむね1割程度。あとは全て更地だが、草刈業者の手が入っている区画は意外と多く、すっきりした印象だ。一部未管理の街路はあるものの、擁壁や街路にも傷みらしい傷みも見当たらず、全体的には荒れた雰囲気はない。ただ、カメラには収めなかったが、街路にタイヤの潰れた廃車が1台放置されていた。

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家屋が一棟も建てられていない区画の街路は管理はされていない。

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特に大きな発見や特徴は見られなかった。

 僕もこの頃になると、この程度の寂れ方では驚かなくなってきており、また家屋が少ない以外には、地形もなだらかでこれといった特徴もない団地なので、ここは早々に調査を打ち切って、次の団地に向かう。ここから5分ほど歩いた辺りに、もうひとつの団地があるのだ。

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火野口台団地はむつみ台団地のすぐ近く。

 むつみ台団地を出て少し歩くと、谷津田の向こうに「火野口台団地」が見えてくる。大字は変わり、ここは山武市の実門(さねかど)地区だ。南向きの視界が開けた傾斜地に位置し、日当たりは良好そうだが、家屋の密度はむつみ台と似たり寄ったりというところか。

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火野口台団地の入口看板。住宅を建築する方は自治会までご連絡くださいとの記載がある。

 ここは2017年12月現在、築24年で4DKの一戸建てが320万円という愉快な価格で絶賛発売中なのだが、アットホームの物件広告をよく読むとこの家は現在賃貸中で、来年初頭に退去予定であるとのことだ。居住者のみならず、家主まで出口戦略に突入する段階に入った火野口台団地。売地もいくつか出ており、取材日には丁度、業者が空地の草刈を行っていた。

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比較的空地の管理が行き届く火野口台団地。

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少し見辛いが、空地の草刈をする業者。

 火野口台団地は集中井戸が配備されており、そのため団地の看板にも、住宅を建築する方は自治会までご連絡くださいとの旨が記載されているが、こうした団地はどうしても一定レベルの自治会活動を要求されるためか、空地の管理が割と行き届いていることが多い。不在地主に対して、雑草の管理の要望を出す機会も多いのではないかと思われる。

 まあ中には、誰も何も言ってないのに「ご近所から苦情がきてますYO!」などと言って営業を掛け、雑草のみならず地主の尻の毛までむしり取ろうとする草刈業者もいるかもしれないが、基本的には空地の雑草や樹木は、近隣住民がクレームを入れることも多い。特に冬場の枯草は火災の際に延焼を引き起こす危険性があるためだ。ただひとり丸損するのは不在地主だが、こればかりは仕方ない。A列車でどこまで行くつもりだったのかは知らないが、都市開発の読みが甘かったと言わざるを得ないだろう。

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団地は掃除も行き届いて気持ちのいい環境だ。

 団地の奥の方は平坦で、家屋の密度も少し高くなる。草刈が行き届いていて、街路も綺麗に清掃されているので、日当たりの良さも相まって暗い印象はまったくない。気になる320万円の売家は団地の一番奥の隅にあった。

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右側の家が売家。隣は売土地だ。

 居住者は退去はしていないものの、引っ越しも近いためかあまり生活感の感じられない家だった。敷地は40坪もなくやや狭いものの隣は売土地で、ボラれなければ隣地を買い取って敷地を広げるのもいいが、外構工事が必要になるうえ、物件広告によればこの家は南側に傾きがあるとのこと。盛土の造成が甘かったのかもしれない。

 まだ内見も出来ないのでお気に入り登録者が多い割にはいつまで経っても成約する様子がないが、空室になったら誰か買うのだろうか。

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 ということで、今回のむつみ台団地と火野口台団地は、正直地味であり、ブログのネタとしてはややパンチ力に欠けるところがあるが、実際には、ネタが豊富な分譲地など現実の居住地としてはロクなものではないので、不便さを問わない方が格安で土地を利用できそうな分譲地も、まだまだ調査を続けていきたいと思う。

むつみ台団地へのアクセス

山武市横田

  • 総武本線八街駅より八街市ふれあいバス「東コース」 後野分バス停下車 徒歩22分

火野口台団地へのアクセス

山武市実門

  • 総武本線八街駅より八街市ふれあいバス「東コース」 後野分バス停下車 徒歩23分

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