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 この4月で、僕達夫婦が八街に引っ越してきてからちょうど1年になる。東京を出て千葉の片田舎で暮らすことを考え始めたのは、その更に1年ほど前。以来、引越しに至るまで、僕達は日々物件情報と睨めっこし、休日には千葉まで足を延ばして、物件を下見する生活が続いていた。

 下見と言っても、北総にあるバブル期の安戸建を転用した貸家は、正直なところ物件画像を見る限り、内装はどれも似たり寄ったりであり、その間取りも大差なく、壁紙だけ張り替えて見た目だけ取り繕ったようなものばかりなので、内装よりむしろ周辺環境を重視していた僕は、仲介業者を通さず、自分で所在地を調べ、直接現地に赴いてそのロケーションや外観を確認することがほとんどだった。

 やがて引っ越しシーズンである年度末が近づくにつれ、目をつけていた物件は次々とポータルサイトから消えていき、最終的に今の貸家に決めたわけであるが、物件情報に関しては、取引相場を掴むため転入後も引き続きチェックする日々が続いていた。そこで判明したことは、北総では、200万~400万程度で販売される中古住宅のうちのかなりの数が、投資家によって購入され、貸家として転用されているという事実であった。
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この張り紙は今でも見かけるが、400万円以下の安戸建は貸家に転用される例が多い。

 アットホームでは、その物件の「お気に入り登録」の数が表示されるのだが、400万以下の安物件は、情報が公開されるや否や、一気に数十人単位のお気に入り登録がなされることも少なくなく、早々に売物件情報から消えたと思いきや、その数か月後に、何食わぬ顔で「新着物件」の貸家として再登場するという例を、もうこれまで何度見てきたかわからない。

 北総の分譲地の現状を考えれば、居住者のいなくなった住宅が空き家として放置されるよりは、事業意欲を持った方が貸家として再生する方が地域にとってもプラスであることは疑いはない。資産価値の上昇が望めない北総の中古物件は、住んではみたくとも購入には抵抗のある方も少なくないだろうし、貸家の主要な利用層は、小さな子供を抱えた子育て夫婦であることを考えると、貸家の供給は地域の新陳代謝にもつながるだろう。

 だが、更地が圧倒的に供給過多にあり、物件の実勢価格が極めて掴みにくいこの北総の地で、賃貸業を営むのはおそらく容易ではない。戸建でも、都市部のような高額な賃料は望めないし、今更都心へのベッドタウンとして機能する立地条件でもない地方都市なので、駅が近ければ有利であるとも一概には言えない(不利にはならないが)。投資は何でもそうだと思うが、いくら安いからと言って下手なものに手を出すと、かえって負債を抱え込むことにもなりかねない。と言うことで北総には、借り手の決まらないアパートなら常時供給されているが、実は貸戸建の中にも、入居者を募集し続けているにもかかわらず一向に成約に至らないものがある。年度末の引っ越しシーズンにおいても置き去りとなり、広告が掲載され続けている物件がいくつもあるのだ。
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膨大な数の空地を抱える北総は、不動産の実勢相場がつかみにくい。

 当ブログでは、売物件であれ賃貸物件であれ、これまで個別の物件をレビューすることは、いくつかの例外を除き基本的に控えてきた。しかし北総は、そもそも分譲地自体が投機目的に特化して開発されたものがほとんどなうえ、大東建託やレオパレスのように「資産形成」を謳って地主から高額の建築費用を巻き上げたり、「太陽光売電」を謳って、数十年間見向きもされなかった屑土地を売りつけるビジネスが横行してきたことを考えれば、北総の安戸建も「投資物件」として、根拠の薄い営業トークで販売が行われている可能性も否定できない。

 入居者の決まらない戸建が、全て投資家によって購入されたものとは限らないが、少なくともそれらの戸建が、北総の賃貸市場において、ほぼ需要を失っていることは事実だ。売家の貸家への転用は今なお続いており、次々と新規物件が投入される状況の中、今の時点で残り物となっている貸家の未来は暗い。今回はそんな戸建をいくつか紹介して、なぜ入居者が決まらないのか、その理由を探るとともに、北総の物件情報に関心をお持ちの方の何らかのお力添えとなるような記事を提供したいと思う。ご存知のように貸家の物件広告というのは囮広告が多く北総も例外ではないが、今回紹介する貸家はいずれも正真正銘の空室、入居者募集中である。

 ところで最初にお断りしておくのは、今回の記事では、昔から都会田舎問わず存在している、地元の地主が当初から賃貸経営を目的として自らの所有地に建ち並べたような、床面積50㎡前後の2DKくらいの平屋の簡素な貸家は紹介していない。あの手の貸家は既に北総ではほとんど需要を失っていて、入居者が決まっている気配はまったくなく、貸し出されることもなく放棄されているものも多いので、今回は、あくまで分譲地に建つ、元々は一般の居住用家屋として建築されたであろう戸建の貸物件を紹介していきたい。


①東金市西野飛地 未舗装の田んぼ道の先にある3LDK
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 東金の市街地から南方向におよそ5㎞。九十九里町との境付近にある戸建。近くには真亀川が流れ周囲に広大な田んぼが広がる中、1棟のアパートと3棟の住戸が存在する小さな分譲住宅地にその貸家はある。床面積は70㎡と、この辺りの戸建にしては少々こじんまりした築25年の3LDKで、家賃は55000円。内装もリフォームされており、物件画像を見る限りはそれほど悪そうには見えない。しかし、ヤフー不動産の情報登録日は2017年3月。既に1年以上募集しており、引越しのハイシーズンを2回も逃してしまっている。
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九十九里町との境界付近に位置する西野飛地。広大な田んぼが広がる。

 理由は現地を訪れれば一目瞭然。利便性の悪さに関してはこの戸建に限ったことではないのだが、分譲地に至る道路はまるっきり田んぼの農道で、街灯もないうえに車両の離合も不可能。更にその農道と宅地の合間には用水路が流れ、小橋によって繋がれている。漆黒の闇に包まれるであろう夜間では、自宅がなければ車両での進入などおよそ考えられないロケーションだ。とはいっても周囲の住戸やアパートには居住者はいるのだが、前述のように貸家の利用層は若い子育て世代。幼い子供を留守番させるのにはかなり不安の残る立地条件である。駐車場スペースも、小型車であれば、小橋の上も利用すれば縦列で2台は可能だと思うが、若干出し入れが億劫だ。
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田んぼの向こうに、孤島のような分譲地が見える。左から2棟目のクリーム色の家屋が件の貸家。
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田んぼの脇の未舗装の農道がアクセス道路。右側は用水路だ。

 南側が田んぼなので日当たりは良すぎるほど良く開放感もあるので、決してデメリットばかりでもない貸家なのだが、宅地と農道をつなぐ小橋には柵もなく、夜間の車両移動は確かに少し怖い。実はこの貸家を見学に来るのは2度目なのだが、物件サイトの画像だけでもこれまで述べてきたデメリットが生々しく伝わってくるためにあまり内見者もいないのか、前回も今回も庭は雑草が生え放題で、あまりマメに管理している様子がない。ちなみに北側は雑木林だ。
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貸家の外観。前回訪問時同様、庭の雑草も刈られておらず、空き家然としている。
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住戸の前を流れる用水路。小橋には柵もない。

 この物件は、貸家としてだけでなく売家としても広告が出され続けており、以前は580万円という値段だったのが値下げされ、現在は498万円というコンビニ弁当のような半端な価格で売りに出されている。物件広告には「東金駅徒歩62分」と、かえって入居意欲を減退させる誰得な所要時間の記載があるが、一応九十九里バスがわずかに運行されており、近所にはコンビニやホームセンター、ドラッグストアもある。

貸家情報:https://realestate.yahoo.co.jp/rent/detail/000001135354f8fae7f392c76ba09706d6ba7e5115a2/(Yahoo!不動産)

売家情報:https://www.homes.co.jp/kodate/b-81310014009/(Home's)



②八街市朝日 入居者が決まらないのに賃料の値上げに踏み切った4DK
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 お次は八街市朝日の貸家。築28年と少し古く、駐車スペースは1台のみ。一見すると縦列で2台可能に見えるが、エアコンの室外機や井戸ポンプがあるため厳しい。

 情報登録日は、現在の物件情報に関しては2018年2月とまだ新しい。だがこれには裏があり、実はこの住宅は、以前は別の物件サイトに「古谷貸家」という名称で、家賃5万円で長期間にわたって広告が掲載され続けており、その後290万円という売出価格で一旦売家になったものの、やがてその広告情報も消えたかと思いきや、近日「サンステージ朝日」なる別名で、家賃が5000円値上げされて再登場したという複雑な経過をたどっている。
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市場から取り残される中、あえて賃料の値上げという暴挙に出たサンステージ朝日。

 以前の「古谷貸家」のオーナーと、現在のオーナーが別人物であるかは未確認だが、貸家になろうと売家になろうと、引き続き入居者が現れない状況は変わらないにもかかわらず、その状況で賃料の値上げに踏み切るとは、何とも余計なチャレンジ精神が旺盛だが、この貸家は簡易水洗(汲取)であり、このたびの値上げによって周辺の賃料相場よりも高くなってしまい、自ら入所者獲得のチャンスを逃してしまっている。
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簡易水洗にしては賃料が高いサンステージ朝日。

 八街は下水道の普及率が低いので、バブル期に建てられた戸建は簡易水洗の住宅は珍しくなく、簡易水洗であるからと言って必ずしも入居者が決まらないわけでもないのだが、駐車場1台分で55000円という賃料は、浄化槽が設置された貸家の相場であり、簡易水洗の貸家はこれより1割ほど安いのが普通である。朝日は八街の市街地からは比較的近いのだが小学校が遠くファミリー層に敬遠されがちなのか、やや貸家が供給過多の状態にあり、常に数戸の貸家が市場に出されている。

 ちなみにこの貸家のある分譲地は街路の舗装の傷みが目立ち、空き地も多いので寂れた印象が漂うが、前述のように市街地からそれほど遠くはないので、日常生活に不便を感じる点はあまりない。隣接家屋もないため日当たりも悪くなく、またこれは余談だが、僕の家からも近い。
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街路は傷みが目立つ。

貸家情報:https://www.homes.co.jp/chintai/b-39047060000108/(Home's)



③八街市八街へ 共有設備の管理費が必要な4LDK
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 お次は、以前このブログでも紹介した、八街市八街へに位置する中規模分譲地「光ヶ丘タウン」内にある貸家。築32年と古めだが床面積は87㎡とそこそこ広い。駐車場が1台分しかないのがネックであるが、それを差し引いても45000円という家賃は周辺相場と比較しても安すぎる。北総に限らず不動産市場において、周辺より不自然に安い物件を見かけたら、まずは疑ってかかるのが鉄則だ。
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家賃月額45000円と、不自然に安い光が丘タウンの貸家。

 まあ、疑ってかからずとも、仲介業者から説明はあるとは思うのだけど、僕達も八街で住居を探した際、この貸家ではないが、同じ光が丘タウン内の別の貸家を紹介されたことがあり、その貸家も若干お安めの家賃だったものの、光が丘タウンは集中井戸、集中浄化槽を備えた分譲地であるため、家賃の他に管理費が月10000円必要との説明を受けた。

 共有設備の管理費を借主が払うのはごく普通であり、それ自体は目くじらを立てることでもなく、その分賃料が安めに設定されているのも何らおかしいことではないのだが、しかし借り手の立場で考えてみると、やはり戸建で「管理費1万円」というのは心理的インパクトが大きいと言うか、第一印象が悪い。ましてやこの貸家の場合、賃料が安いだけに、その安さに惹かれた問い合わせも少なくないであろうから、尚更ガッカリ感が強いだろう。

 実際のところは、個別浄化槽であれ管理費は必要になってくるとはいえ、生活用水を井戸で賄う住宅が多い八街では、この管理費はひどく高額に感じる。「井戸ポンプでいいや…」と考えてしまう人が少なくないのは容易に想像がつく。
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僕たちが八街で家を探していた頃からずっと募集している。
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共有設備の存在が仇となるケースもあり得るようだ。

 ということで、光が丘タウンは住環境も整った落ち着いた分譲地であるにもかかわらず実際に敬遠されているようで、情報登録日が2016年11月と、既に1年半が経過している。

貸家情報:https://realestate.yahoo.co.jp/rent/detail/_000001179305f8fae7f392c76ba09706d6ba7e5115a2/(Yahoo!不動産)



④山武市木原  ほとんど罰ゲームに近い3DK
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 最後に紹介するのは、山武市の木原にある「玉井邸」という貸家。床面積が68㎡の3DKで家賃は40000円という破格値。もちろんお安いのには理由がある…と言うか、安くなる理由しかない、と言わざるを得ないのが、この玉井邸だ。強烈なインパクトのある貸家なので、住む気がなくとも関心がある方は一度は見ておく価値があるかもしれない。遠いけど。
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丘陵の合間に谷津田が広がる木原の農村風景。分譲地も多い。

 物件広告には「日向駅徒歩44分」とある。以前はこの貸家のすぐ近くに「木原新田」というバス停が存在したのだが、今はそのバス路線も消滅し、分譲地にアクセスする公共交通機関もない。ところがこの貸家には駐車場がない。近隣にはほとんど同じような構造の住戸が数戸並んでいるのものの、建売住宅にしては1戸当たりの敷地が狭くあまりに粗末なので、あるいは当初から貸家用に建築された可能性もあるのだが、いずれにしても、築27年という建築年数を考えると、いくらバス停が存在したとはいえ、この立地で駐車場を備えていないというのは当時の水準で考えてもまったく理解できない。
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駅から遠く離れた雑木林に隣接する立地でありながら、駐車場のない玉井邸。

 しかも北側の外壁が恐ろしく汚れているうえ、極めて狭苦しく建ち並んでいるために玄関先は暗く陰鬱な空気が漂う。そのうえ、本来採光部を設けるはずの南側は隣家が近接しているため窓すらなく、東西も隣家に囲まれているため日当たりが極端に悪い。道路側に出窓が見えるがこちらは北側であり、しかも雑木林が目前に迫っている。
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外壁が恐ろしく汚れた玉井邸。
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極めて陰鬱な雰囲気の漂う分譲地。

 玄関までの通路は隣家と共有なので、ただでさえ狭い通路にはモノを置けるようなスペースはほとんどなく、おそらく原付以上のオートバイも厳しいのではないか。この玉井邸の周辺はコンビニもスーパーも何もなく、木原を含めた旧山武町は元々商業施設が乏しい小さな町なので、何か買い物するとなれば八街の市街地まで自転車で赴く必要があるが、この玉井邸から八街に至る道路は昼間でも薄暗い雑木林の合間の道で、日没後は薄気味悪くて走れたものではない。
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中型バイクの保管にも困る狭い共用通路。
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八街側から玉井邸に至る道路は雑木林の合間の道だ。

 この物件は僕たちが千葉の物件を探し始めた当初から広告が出され続けているのだが、物件画像が変更された際に情報登録日も更新されてしまったので、今回、最も古い情報登録日が残された物件サイトを探したところ、「いい部屋ネット」の広告の情報登録日が「2014年12月」となっていた。つまり既に4年以上広告が掲載され続けていることになる。4年も空室で「いい部屋」も何もあったものではない。ちなみに玉井邸の近隣にある同構造の家屋のいくつかは空き家である。

貸家情報:http://www.eheya.net/detail/detail.jsp/sc_property_full_id/300156891000057000001


 ということで今回は、八街転入1周年ということで、僕がこれまで注目していた北総の「売れ残り物件」を少し紹介してみたが、ここで紹介している他にも、借り手が一向に決まらない貸家はまだいくつかある。ただそれらは場所が特定できなかったり、明らかに賃料が高いのが未入居の理由であることが明白なものだったりと、あえて紹介する必要もないので割愛した。

 「売れ残り物件」の探し方は簡単で、要は物件サイトの検索結果を「新着順」に並べ直して、その最後尾からチェックしていけばいいだけの話であるが、特に先行き不透明な北総の不動産を利用する際は、こうした物件サイトもフルに活用して、情報収集を入念に行いたいものである。