成田空港周辺の自治体の中でも、富里市は成田市に隣接し、空港からも至近な距離にあるため、当ブログで紹介している多くの限界ニュータウンと異なり、富里の分譲地は、開発・造成とほぼ同時期に建築されたと思われる、やや築古な家屋(築40年前後)が隙間なく建ち並ぶところが多い。富里でも、近年販売されている建売住宅はもちろん複数台駐車可能なスペースを備えたものが一般的だが、一方で富里は今でもそれなりにバス網も充実しているために、駐車スペースが1台分しかないような古い戸建でも割り切れば居住は可能であり、市街地に近い分譲地は、郊外のどこでも見られる典型的な住宅地である。

 しかしその一方で、富里の市街地から離れた農村部の分譲地は、すでにバス便も途絶し、加速度的に荒廃が進んでいる。こと富里の場合、現在は農村部の多くが市街化調整区域に指定され、人口が増加する可能性はまったくない。調整区域内に点在する分譲地はそのほとんどが線引き前に開発されたものなので、分譲地内に限れば住宅の建築は可能だが、実際には孤島に置き去りにされた形といえよう。これまでにも富里東部の十倉地区の分譲地はいくつか紹介しているが(「インフラが消えていく」参照)、成田市との隣接エリアの状況と比較して、そのギャップはあまりに大きいものとなっている。
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広大な畑が残る十倉地区。線引きが行われその環境の保全は保証されたが、線引き前に開発された分譲地は事実上置き去りだ。

 今回紹介する分譲地は、富里と八街の境付近に位置しており、富里の市街地よりも八街の市街地の方が圧倒的に近い距離にある。僕の家から非常に近いにもかかわらずこれまで訪問したことはなかったが、最近になって、この分譲地に、築年数は古いものの敷地面積が広い中古住宅が300万円で売り出された。物件の備考欄に「近隣に火事跡あり」という不穏な一文があるが、それはさておき、気になるのはやはりその築年数の古さだ。1974年となるとまだ成田空港の開港前で、北総では盛んに宅地造成が進められていた時代だ。その時代でいち早く住宅が建築されているのは、ここが八街駅からも比較的近い立地であるためか。最近は土地探しがメインであまり中古住宅に関心を持つことは少なかったが、せっかく近所なので見に行ってみることにした(写真は2日に分けて撮影しているので画像によって気候が異なります)。

参考:https://www.athome.co.jp/kodate/6965426474/?DOWN=0&BKLISTID=017LPC&SEARCHDIV=5&sref=favorite(アットホームの物件広告)
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アットホームに掲載された十倉の売家の広告。

 分譲地の周囲は畑の他に雑木林が目立ち、車の通りは少ない。市境を超えた八街側(朝日地区)は、畑の合間にミニ分譲地が散在しているが、富里側は市域の辺境となるためか分譲地の数はぐっと減り、昔ながらの開拓農村の趣となる。件の分譲地は街路が舗装されておらず、一見して淋しい雰囲気だが、まずは物件広告にあった売家をチェックしてみる。
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分譲地の周囲は雑木林が目立つ。

 広告の売家は分譲地のはずれの方に位置していたが、なるほど確かに築年数の古さを伺わせる佇まいである。しかし物件広告には「賃貸中」と書かれていたが、庭は鬱蒼とした雑木林と化しており、何だか人が住んでいる気配があまりない。広い庭付きの家に住んでみたものの、高齢となってその手入れが追い付かずジャングルと化してしまう例は郊外では多いが、こうなると日当たりも悪くなり湿気もひどくなるので、あまり広すぎる土地というのも考えものだ。
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広告にあった売家。庭が雑木林と化している。

 備考欄にあった「火事跡」は、売家の南東側の区画にあり、庭に隣接している。既に屋根も外壁もほとんど崩れ落ち無惨なものだが、骨格と一部の外壁がまだ崩れず残されている。非難覚悟で言わせていただくと、このような中途半端な状態で鎮火させると、かえって後始末に困る気がする。この分譲地のように近隣の家屋に延焼の可能性がある場合はその手段を取るわけにもいかないが、延焼の可能性がないのなら、全焼させて骨組みや外壁まですべて崩れ落ちてしまった方が、後々土地の処分に困らないのではないか。こと北総の限界ニュータウンにおいては、解体費用が地価を上回るのは明白なのだから、この火事跡のように、再利用が不可能な古家付土地というのは、その処分が極端に難しくなってしまうのだ。ただ仮にこの売家を利用する場合、この火事跡の区画を適切な価格で取得して敷地を広げるという手もある。
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売家の南東側の区画に残された火事跡。

 続いて売家の周囲を散策してみる。分譲地内は建物が少なく空き地が目立つが、事業所と思われる規模の大きい建物もいくつか目に入る。しかし、この分譲地にある一般の家屋は空き家が多い。先に紹介した売家同様、近隣の家屋も築年数の古そうなものが多いが、それにしても目に入る住宅がどれもこれも空き家ばかりでとても寂しい雰囲気だ。中には、さほど築年数が古くもない家屋もあったがそれも空き家。既にこの分譲地にある民家は、その半数が空き家と化している。
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分譲地内にある空家。
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門扉やドアが塞がれ、利用されている気配のない空き家。
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さほど古そうには見えないが、ポストがテープで塞がれ無住であった。
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放置されて長い年月が経過していることをうかがわせる。

 そんないくつかの空き家の隣の区画に、手書きの売地の看板があった。仲介業者や草刈り業者のものではなく、連絡先には個人名が掛かれているが、44坪で20万円という破格値が示されている。正直、外部の人間が通りすがりに見かけるような立地ではないのでなかなか問い合わせもないのか、価格は訂正されている形跡がある。同じ地主の売地の看板は分譲地内にもう一つあったが同様に空き家に隣接しており、そちらはなぜか坪数と価格が消されたままだったので詳細は分からない。
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空き家に隣接した区画に建つ売地の看板。
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44坪で20万とある。坪5000円以下だ。
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同一地主の売地の看板はもう一つあったが、こちらも空き家に隣接している。

 これまで訪問した分譲地でも、空き家を見ることなど珍しくもないというか、むしろ空き家のない分譲地というものの方が珍しかったが、さすがにこれほどまで空き家の占める割合の多い分譲地は少ない。市域のはずれにある分譲地というのは、やはり敬遠されやすいのだろうか。空き地は菜園や車両置き場に転用されているものもあるが、草刈り業者の看板は少ない。何とも先行きが不安になる分譲地で、同時にこの立地の古家で300万円という価格も疑問に思わざるを得ないような環境であったが、八街の市街地に比較的近いことはメリットといえるだろうか。
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草刈り業者の看板は僅かに見かけるのみ。
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菜園に転用された区画。
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車両置き場として利用される区画もある。
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富里の辺境という立地条件でもあり、今後が不安になる管理状態だ。


家屋の半数が空き家と化した辺境の古い分譲地へのアクセス 



富里市十倉
・東関東自動車道酒々井インターより車で23分
・総武本線八街駅より八街市ふれあいバス「東コース」 「朝日十字路」下車 徒歩11分