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 今年(2018年)の関東地方は、ほとんど梅雨らしい降雨もないまま早々と梅雨明け宣言してしまい、7月に入るや否や突然の猛暑に襲われ、季節は一気に夏となった。

 ところで夏と言えば空き家だが、当ブログで最初に紹介した限界ニュータウンである成田市の「ビバランド団地」は真冬に調査を行ったもので草木は枯れ果て、しかもあいにくの曇天で画像は陰鬱で薄暗く、常々季節が変わったら再訪したいと考えていた。そこで、今回はビバランド団地内の「空き家」に焦点を絞って、限界ニュータウンにおける空き家の現状を紹介しつつ、それぞれの空き家に勝手なコメントを寄せていきたい。
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ビバランド団地遠景。前回は冬の訪問だったが、さすがに夏は明るい印象だ。

 空き家問題は別に限界ニュータウン固有の問題でもなく、昨今では首都圏各地の郊外型住宅団地や、場合によっては市街地でもその問題が取り沙汰されているが、これまで当ブログでも時折取り上げてきたように、千葉の限界ニュータウンの空き家は、果たして無事に住宅ローンの返済を完了できていたのか疑わしい築年の住宅が、早々と空き家として放置されてしまうという現象が起きている。
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ビバランド団地。

 ビバランド団地は、その立地条件や交通アクセスの悪さは言うに及ばず、開発時期にせよ、空き家の数にせよ、空き地の数にせよ、団地の共有部にせよ、僕のブログで紹介する限界分譲地の定義を一通り備え持っているうえ、その出所不明な謎の団地名も相まって、今でも僕の心に強烈に刻み込まれている限界ニュータウンであるので、『都市をたたむ』(響庭伸著・花伝社)でも超郊外住宅地のモデルとして取り上げていたのと同様、当ブログでもビバランドは一つのモデル団地として扱いたい。
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限界ニュータウンの典型例であるビバランド。空き家もよく目につく。
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 ビバランド団地は、南北の団地の出入り口を結ぶ街路を除き、幅員の広くない街路がほとんどなので、今回も適当な空き家の前に車を止めて徒歩で散策したが、当然のことながら団地内の空き家に番号が振られているわけでもないので、紹介はあくまで僕が歩いて見つけた順となる。

 なお、空き家の判定というのは実は微妙なところがあり、家屋が荒れているから空き家と思いきや、単に修繕費用を惜しんでいる方が住んでいるだけというケースもある。そこで今回、空き家として判定する基準として、以下の点を判断材料とした。

 ①玄関先や駐車場などに雑草が繁茂し、人が足を踏み入れた形跡がない。
 ②郵便ポストにチラシや郵便物が多く残されている。
 ③門扉が鎖などで、日常的に開閉できないように封鎖されている。
 ④窓にカーテンがなく、室内に家具類や荷物類が一切見当たらない。
 ⑤電気メーターが作動していない。
 ⑥外観から見て家屋に腐朽がある。

 空き家と思われる家屋で、この項目をすべて確認したわけではなく、またすべて当てはまるわけでもないが(電気メーターは確認できないものも多い)、この項目のいくつかが当てはまれば、それは空き家と判定して差し支えはないだろう。
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人の出入りがない門扉の前は雑草が踏まれた気配もない。

 さて一つ目の空き家は、これは以前「探索こぼれ話」の記事でも紹介したことのある空家で、以前は売家として広告が出されていて、うっかり問い合わせた僕はその後しばらく仲介業者から電話で執拗な営業を受けるのだが、その広告も消えて久しく、しかし物件は全く利用される気配もなく、事実上の空き家として今に至っている。
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元々売物件として広告が出されていた空き家。
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庭の草木は伸び放題だ。

 角地で隣地に家屋がなく庭もあり、駐車場も縦列で2台可能なので、物件の条件としては悪くないと思うのだが、確か600万円ほどの価格でビバランドの中古物件としては安くないので、結局売り止めにしたのか、現在は全く広告を見かけなくなった。

 駐車スペースは物件の命運を左右する最重要要素であり、特にビバランドはひな壇型分譲地であるため、駐車場の拡充には大掛かりな外構工事が必要となり、それが周辺の他の分譲地と比較してもビバランドの地価が安い理由のひとつだ。団地内には自治会が管理する月極駐車場もあるもののその数は充分とは言えず、実際は空地にも駐車はされているのだが、適切に管理された住宅はほとんどが複数台の駐車スペースを確保している一方、空き家はやはり駐車スペースに難のあるものが多い。
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団地の管理組合が運営する月極駐車場。

 続いて、この元売家と同じ街路を東に少し歩くと、細長い宅地に狭苦しく家屋が数戸並んだ一画がある。そのうちの真ん中の、両脇に隣家が迫り、やや開放感に欠けたバブル期前後のミニ戸建が、出窓から家財道具が一切見えないうえ、電気メーターが作動しておらず無住であった。
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バブル期の典型的なミニ戸建群が見えてくる。
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門扉の前に雑草が茂り、出入りしている形跡がない。

 この家は北側道路なので接道道路との高低差はないが、敷地面積そのものが狭いため駐車スペースは1台分しかない。この手のミニ戸建は、中古物件でも安めであるのでしばしば貸家に転用されるのだが、貸家でも駐車場1台分の戸建は賃料は安めに抑えざるを得ない傾向があり、正直言って見通しは暗い。そもそも都会と比べて、その利便性においては月とスッポンの違いであるにもかかわらず、家屋のクオリティばかり都会の水準では、都会と田舎の悪い所取りしかしていない。

 つづいて、このミニ戸建空き家のある街路から、一本南側の街路沿いに、別のミニ戸建の空き家がある。この空き家は電気メーターなど確認するまでもなく一目瞭然、2012年に撮影されたグーグルのストリートビューの画像でも、既に今日と変わらない状態である。スペースの余裕のなさは先の空き家以上で、駐車場も当然一台分しかなく、しかもこの家は南側にも隣家が近接しているので日当たりが極端に悪い。ちなみにビバランドの宅地は坪数千円から販売されているので、多額のリフォーム費用や解体費用を要する古家付土地として僕が独断で査定すれば、この家は5000円くらいだろうか。
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2012年の時点で既に同様に荒れ果てている空き家。
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隣家と極めて狭苦しく隣接し、北側にしか開けていない。僕の査定額は5000円。

 さらに、先ほどの電気メーターが停止した空き家の、一本北側の街路沿いにも、同様に藪化した空き家がある。こちらも2012年のストリートビューの撮影時点で既に空き家で外壁に蔦がまとわりついた状態だが、今日では状態はますます悪化し、ストリートビューでは確認できた外壁が、全く見えない状態になっている。
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もはや巨大な蔦の塊と化している空き家。
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バブル期頃の建築物なのだが、敷地内の立ち入りすら困難だ。

 ストリートビューの画像を見る限り、造りとしては先の2つのミニ戸建の空き家同様、外壁はサイディングで、出窓もある典型的なバブル期のミニ戸建であるのだが、見ての通りこれではもはや家屋の構造を確認することは不可能になっている。住宅の世界では壁面緑化という概念があり、省エネ効果があるとのことで自宅をあえてこのように蔦で覆いたがる方もいるのだが、ここまで放置して繁茂してしまったら、窓や外壁材の継ぎ目などから室内まで蔦が浸食していることはほぼ間違いなく、再利用には膨大な手間費用が掛かる事であろう。査定5000円。

 そしてこの蔦まみれの空き家から、街路を挟んで南東の斜め向かいに、現在売出中の空き家がある。建物面積85㎡、敷地面積105㎡の築24年の中古住宅であり、10年ほど前に外装をリフォームしていて売出価格は480万円とのことである。「売物件」の看板の他にのぼりまで掲げて販売意欲がうかがえるが、あいにく近所に点在する廃屋と化したミニ戸建とほとんど変わらないスペックだ。(参考リンク:https://www.athome.co.jp/kodate/6965253856/?DOWN=1&BKLISTID=001LPC&sref=list_simple

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480万円の売家。さすがに売家だけあって外観は綺麗だが、スペックは周辺の空き家と大差ない。

 物件広告には「両側が空き地の為開放感があります」とあり、確かに東西側は空地であるが、肝心の南側に隣家が近接していて、一番重要な方角の閉塞感が強い。駐車場は1台分で、隣の空地は売地であるが、看板を出しているのが、ほとんど冗談に近いボッタクリプライスを並べる大阪の仲介業者のもので、安く取得できる見込みは薄い。投資物件としてもしこの戸建を検討されている方がいたら、近隣の同スペックのミニ戸建がどういう状態に陥っているか、よく調べてから再検討した方がいいかもしれない。

 今度はこのミニ戸建群から少し離れて、団地の西側、南北に数本の街路が並ぶエリアへ足を延ばす。こちらにも、バブル期の典型的な戸建の空き家がある。これも2012年のストリートビューの撮影時点で明らかに空き家の状態である。ただこの家、ストリートビューの画像でも確認できるが、以前隣にあった傷んだプレハブ倉庫はいつの間にか撤去され、先述した大阪の仲介業者の看板が立てられている。
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2012年の時点で空き家となっていたバブル期の戸建。
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隣にあった倉庫は撤去され、更地となっている。

 この空き家はこれまで紹介してきたミニ戸建よりは敷地面積が広く、駐車場は1台分であるものの庭もあるのだが、今となってはその庭は猛烈な雑草や樹木に覆われ、刈り払いしなければ立ち入ることもできない。しかしどういう訳か駐車場には1台の駐車車両があり、放置自動車にも見えない。詳しい事情は不明だが、駐車場だけは誰かに利用されている模様だ。

 この白い空き家の北西側の区画にも、また空き家がある。遠目に見ればごく普通に見えなくもないのだが、この空き家は以前火災があった模様で、北側の窓辺りに黒焦げが残り、内装もひどく燃えたのが分かる。ビバランドの地価を考えれば、火災で半焼した家屋が放置されてしまうのはごく自然な成り行きで、火災は不幸な出来事なのであまり多くを語るのは控えるが、再利用は絶望的であろう。
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外壁は無事に保たれているのだが、窓枠に火災の跡が生々しく残る空き家。

 そして団地の南西側。何故か4階建ての鉄筋コンクリートのビルがある他は、家屋もなくほとんどが未管理の空地となっている1画の隅に、空き家が1棟残されている。団地の隅であり、開放感はありそうだが、敷地面積は異様に狭く、細長い家屋だ。この空き家は以前のビバランド訪問記事でもその画像を掲載したことがある。
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団地のはずれに位置する空き家。周辺に家屋は少ない。
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敷地面積が狭いので細長の構造だ。
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空き家の周辺は鬱蒼とした藪の中の道だ。画像左に少し見える屋根が当該の空き家。

 周辺の藪が高くてわからないが、立地を考える限り、この空き家の2階からは団地周辺の谷津田が広く望めるはずで(ただし南西側に大量の太陽光パネルがある)、日当たりも間違いなく良いし、個人的には好みの家なのだが、空き家になる事情は様々なので、良い家だから空き家にならないとも限らない。まあ、良い家、と言っても、一般的な不動産市場では格安物件になることは間違いないのだが。

 そして団地の南端に至ると、本来、一番日当たりも眺めも良いはずの区画に、またしても廃屋に近い状態の空き家が2棟あり、異様な雰囲気を醸し出している。1党は、70年代から80年代初頭頃によく建てられた様式の軽量鉄骨の建物と思われ、もう一棟はジャングル化がひどく年代は不明だが、どちらもほぼ山林化した状態にある。周辺はゴミ捨て場のような資材置き場や、団地の規約で禁止されているはずの太陽光パネルの発電基地があり、この1画はビバランドでも特に荒んだ印象が漂う一帯だ。
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ジャングル化した二棟の空き家。どちらも傷みが激しい。
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周辺はゴミが散乱し、太陽光パネルまである。

 そして追い打ちをかけるように、この2棟の空き家の東側の隣の区画に、またしてもミニ戸建の空き家がある。しかも2棟並んでいる。向かって左側の家屋は、実はここだけの話、空き家である確信はないのだが、2階の出窓をよく見ると、ゴミ袋のようなものがうず高く積まれており、空き家でなくとも、今風に言えば「あっ…(察し)」という感じである。ここまでくると、さすがに、細切れの狭い敷地に建てたミニ戸建には、通常の家屋より荒れやすい何かしらの要因が潜んでいると疑わざるを得ない。
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またしても現れたミニ戸建の空き家。
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同じ規格のミニ戸建が2棟並ぶ。
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出窓付近があまり片付いていない模様。

 この画像の2棟のミニ戸建はほとんど同じ構造の建物で、おそらく建売住宅であったものだと思われるが、バブル期の地価高騰期に、これほどの悪条件の立地で、これだけの細切れの土地に建てられた建売住宅の購入層と言うのは、率直に言って、そもそも持ち家を維持するほどの経済力を持ち得ていたのかどうか、かなり疑問である。実際僕の住む八街では、ローン属性の悪い人にまで販売業者が半ば強引にローンを組ませて売りつけた結果、この手のミニ戸建を中心に、のちに大量の競売物件が発生する事態に陥ったからだ。その結果がこのような放置家屋であるとすれば、それはあまりに乱暴な住宅開発と断じざるを得ないだろう。

 そして最後は、団地を南北に貫くもっとも広い街路沿いに残された2つの空き家だ。こちらはここまで紹介してきた空き家よりもずっと古い建築様式のもので、この団地は1974年に開発許可が出され、75年頃から分譲が開始された団地なので、広い街路に面していることから考えても、おそらくビバランド団地の分譲当初に建てられた家屋だろう。このくらいの年代の空き家なら、別に限界ニュータウンでなくとも目にする機会は多いので、画像の紹介だけにとどめておく。
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古い平屋の空き家。
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分譲当初に建築されたと思われる空き家。

 ということで、ビバランド団地で見かけた空き家で、今回紹介したものは合計で14棟。ビバランド団地は全部で百数十棟の家屋があるので(区画数は500ほど)、ざっと計算して10棟に1棟が空き家ということになる。今の時代、これが割合として多いのか少ないのかわからないが、ここで紹介しているものは、本文中に述べた1棟を除き、いずれも空き家であると確信できたものしか紹介しておらず、見た感じ人が住んでいる気配が感じられないものの、果たして空き家なのかどうか確信が持てなかった家屋については紹介していない。

 いずれにせよ確実に言えるのは、空き家のほとんどが築30年前後のバブル期の戸建であるということだ。そもそもビバランド団地は、80年代後半に入るまでほとんど住宅建築の進まなかった団地なので、空き家に限らず、団地に存在する家屋の大半は、築30年程度のものだ。30年と言えば、当時の住宅ローンの一般的な返済期間である。それが今、このような状態にある。このバブル時代のなれの果てを見るにつけ、地価狂乱のバブル期を経て「家余り」と呼ばれる時代に突入しつつある現在、僕たちは、今こそ改めて自分の「住まい」について、もう一度真剣に考える必要があるのではないか、と強く思うのだ。
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