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 このブログは、これまで訪問した分譲地のすべてを記事にしている訳ではなく、むしろどちらかと言えば訪問しても記事にしないことの方が多い。物件広告を見て、気になって見学しに行っただけの場合はまず記事にしないし、記事にするつもりで訪問しても、あまり伝えるべき事象も見受けられなかった場合はそのままお蔵入りにすることもある。
  
 今回紹介する横芝光町宮川の放棄分譲地も、今から1年半前の2019年3月に、グーグルマップの航空写真で見かけたので気になって訪問してみたものの、そこで僕を待っていたのは単なる不法投棄のゴミの山であったものだ。それはそれで問題ではあるが、その時はわざわざ記事にする話でもない気がしたので、数枚撮影した写真とともにずっとお蔵入りにしていたのだが、今日、たまたま久しぶりにこの放棄分譲地の前を通りかかったところ、一年半とは全く異なる様相に変わり果てていたので、改めて一つの記事として紹介することにしたものである。
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宮川の放棄分譲地の南側からの遠景。高規格な二車線道路に面した雑木林の裏側に分譲地がある。
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北側からの遠景。画像中央付近が放棄分譲地。

 この分譲地は、旧光町役場(現在の横芝光町役場)からそこまで離れているわけでもなく、歩道も備わった高規格な二車線道路に面しているにもかかわらず、分譲地内には電柱もなく、住宅地として利用された形跡がまったくない。横芝光町においては家屋が1戸もないミニ分譲地を所々で見かけるが、その中には、おそらく分譲地内の道路が建築基準法上の道路として認められていないのか、今日では建築許可が下りない分譲地もあり、ほとんど管理もされず、もはや住宅地としては再起不能なまでに荒れ果てているのが現状である。

 分譲地の入口は、杉の倒木が幾重にも折り重なっている。2019年春の訪問時にも、ここは確かに倒木はあったのだが、ここまで進入が困難になるほどの量ではなく、これはおそらく2019年9月に房総半島を襲った台風15号の影響によるものであろう。前回の訪問時は、まだ辛うじて分譲地としての名残を留めていたのだが、いつの間にかここは、既に一目見ただけではとても分譲地があるとは思えない惨状に変わり果てていた。

 横芝光町を含めた九十九里平野は、旧山武町周辺の杉に覆われた丘陵地帯と比較すれば、倒木による停電の影響は軽微であったのだが、それでも平野部の所々に残る山林ではそれなりの被害が出ている。この分譲地の近くにも、未だ倒木が放置されたままの山林がある。
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「不法投棄禁止」の看板が立てられた放棄分譲地の入口。
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台風15号の影響と思われる杉の倒木がひどく、この先に分譲地があるとはとても思えない。
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上2枚の写真は2019年3月訪問時に撮影したもの。この時点でも倒木はあったが、進入に苦労するほどのものではなかった。
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未だ台風の爪痕が残る分譲地近くの山林。

 折り重なった杉の大木の下を潜り抜けると、その先には舗装された路盤が見える。しかし、相変わらず周囲は不法投棄のゴミがひどい。放棄分譲地の地主の多くは町外在住者であり、無住の放棄分譲地は住民による監視の目もなく不法投棄の温床となりやすいため、その入り口にはしばしば不法投棄禁止の看板が立てられる。苦情を申し立てる者もいない放棄分譲地ではそのゴミが片付けられることもなく、ゴミはそのまま藪に埋もれていく。
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2019年の訪問時に撮影した不法投棄のゴミ。処分費用が掛かるブラウン管テレビなどが投棄されていた。
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片づける者もなく、雑草や藪に覆われていく不法投棄のゴミ。

 倒木を潜り抜けた先は、私道は二股に分かれるのだが、向かって左側の道路の先は、土留めは見えるので区画はあるはずなのだが、既に猛烈な藪に覆われほとんど立ち入ることもできない。その道路の先には、芝山町で今も営業を続ける不動産業者の看板が残されているのだが、これではもはや通行人の目に触れるチャンスは0であろう。看板には「管理」の文字があるが、どう贔屓目に見ても恒常的な管理を続けているとはとても思えず、あるいは業者自身も、あまりに問い合わせがなさ過ぎて、既にこの看板どころか、この物件の存在自体すら失念しているのかもしれない。
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進入路は途中で二股に分かれるが、左側の道路はもはや全く進入不能となっている。
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既に路盤も見えなくなっているが、土留めの石だけが辛うじてまだ見える。
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芝山町の業者の看板が残されている。残念ながら、とても管理されているようには見えない。

 右側の道はまだ舗装された路盤も見え、今の時点では進入に苦労するほどではないが、既に路盤にも蔦の浸食が進んでおり、やがては左側の進入路同様、こちらも蔦に覆われて進入が困難になっていくだろう。既に分譲地の奥の方は猛烈な藪に覆われている。

 しかし、既に荒れ果てているとは言え、舗装の仕上がりそのものは通常の分譲住宅地のものと比べても遜色はない。既に土砂が詰まっているとは言え側溝もあり、消火栓のマンホールまである。限界分譲地の設備の規格としては標準以上のものである。

 この分譲地はおそらく建築不可であると思うが、僅かながらも家屋が建てられて今もなお利用が続く限界分譲地と、こうして放棄され原野に還っていく放棄分譲地が、分譲地としての明暗(どちらも「暗」かもしれないが…)を分ける要因がよくわからない。横芝光町においては、ここよりもずっと接道状況も利便性も悪い分譲地であろうと、居住している住民はいる。言ってしまえば今僕が住む分譲地もそのうちのひとつだ。それに対し、ここはいったい何が要因となって放棄に至ったのであろうか。
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右側の進入路も蔦の浸食が始まっているが、今の時点では進入はまだ可能だ。
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利用者もなく荒れているが、分譲地の規格自体は他と変わらない水準である。放棄に至る要因が今ひとつわからない。
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私道上に残る消火栓のマンホール。造成当初は、実際に住宅地として利用することも想定していたのだろうか。

 いくつかの区画には、今も草刈り業者の看板が立てられている。看板の立つ区画は雑草の繁茂がそれほど進んでいないので、草刈りは今も行われているのだと思うが、看板自体は既に色褪せて、業者名を読み取るのも一苦労である。ちなみに、この分譲地内に建てられていたいくつかの看板は、すべて山武市内の草刈り業者「ログ平」のものであった。
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分譲地内に今も残る色褪せた看板。

 既に車両の進入が難しくなっているこの荒れた分譲地の奥まで刈払機などの機材を運び込む業者も大変だが、そもそもそれ以前の問題として、既に分譲地の奥は私道上にまで猛烈に蔦が繁殖している状況で、わざわざ部分的に草刈りする必要があるのかという疑問がある。これは以前別のところでも指摘したとは思うが、おそらく地主は、自らの足で分譲地の現状を確認することもなく、既に入口が倒木で塞がれている事すら把握していないのだろう。
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こちらは2019年訪問時の写真。継続的に草刈りが行われている模様が確認できる。
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いくつかの区画が草刈りされているのみで、その奥は私道まで藪に覆われて進むことができない。


 さてこの放棄分譲地の紹介はこのくらいに留めておくとして、実はこの分譲地に面した二車線道路の反対側のすぐ近く、はす向かいに、もう一つ別の放棄分譲地がある。こちらは入り口付近の区画が太陽光パネル基地として利用されているが、住宅地としてはやはり一切利用されておらず、多くの区画は荒れ、事実上の放棄分譲地である。

 ちなみに分譲地前の二車線道路に面した区画に日栄不動産の看板が立っている。一見したところここは建築可能であるように見えてしまうが、この手の分譲地は、一見公道に面しているように見えても、公図を確認すると、公道との間に謎の私有地が挟まっていて接道していないこともあるので油断できない。きちんと調べてみないと建築可能であるかは断言できない。
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向かいにある別の放棄分譲地の入口。一部は太陽光パネル基地として利用されている。
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太陽光パネル付近の道路の管理状態は悪くない。
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分譲地の入口にある日栄不動産の看板。

 こちらの放棄分譲地は、「ログ平」の独断場となっていた先ほどの分譲地とは異なり、複数の草刈り業者によって今も草刈り業務が行われているが、草刈り業者はあくまで依頼主の所有地の区画しか作業を行わないので、私道上は雑草が刈り取られることもなく荒れるに任せたままである。

 何故か仮設トイレだけが設置された区画もあるがそれはさておき、すでに奥の区画は、既に道路でのアクセスが難しくなっていて事実上の袋地と化しており、他の区画、つまり私有地に足を踏み入れて通り抜けなければ到達できなくなっている。そしてこちらの分譲地にもまた、台風の影響と思われる倒木が放置されていた。
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複数の草刈り業者によって管理されている区画がある。
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理由は分からないが、仮設トイレが設置されている区画もある。
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草刈り業者は依頼主の区画しか草刈りを行わないので、共有部である私道は荒れる一方だ。
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舗装は見えるものの、既に事実上の袋地となって、私有地を通り抜けなければたどり着けない奥の区画。
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放置された倒木。

 分譲地が放棄されていようとなかろうと、使い道もない分譲地を持て余しているのはどの不在地主も同じであるが、それにしても、今となっては建築許可も下りない、それどころか立ち入りすら既に困難となりつつある分譲地を取得してしまった地主は、いったいこの先、もはや引き取り手を見つける事も絶望的な自らの所有地をどうするつもりなのだろうか。

 それ以上に問題なのは、すでに完全に流動性が失われてしまったこれらの放棄分譲地は、ここまで見てきた通り、どれほど不法投棄が繰り返されようとも、あるいは台風などの災害で倒木などの被害に見舞われようとも、管理する者もいなければ、復旧させる者もなく、また所有権が細分化されているがゆえに、公的機関や第三者による復旧・整備も表向き認められないという点である。
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 現実的には、仮に倒木が公道を塞ぐような事態になれば、連絡も取れない地主の所在などを悠長に探すよりも先に、公益を優先して撤去を進めてしまうものだろうが、それにしても所有者不明の私有地が災害復興の妨げになっているということは、既に発生から10年近くが経過した東日本大震災の発生後からずっと指摘されてきた。

 千葉の放棄分譲地に限らず、野放図な分筆によって細分化された原野や山林など、それこそ原野商法で切り売りされた北海道や、当ブログでも時折紹介する茨城県の大洋村をはじめとした古い別荘地など、日本全国にいくらでもある。分譲地の入口が倒木で塞がれ、道路もろとも蔦で覆われても、なおも登記簿上だけは、固定資産税の徴収以外にはほとんど機能していない「所有権」によって細分化されたままの状態を続けるのだろうか。

 横芝光町のような財政規模の小さい自治体にとっては、一区画数千円程度の固定資産税であれ無視できない重要な税収かもしれないが、それにしても町内の放棄分譲地の無惨な現状を見るにつけ、常々繰り返し述べていることであるが、もはや「所有権」の枠組みを超えた抜本的かつ柔軟な対策が必要ではないのかと思うのだ。
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復旧の妨げとなる放棄分譲地へのアクセス


横芝光町宮川
・銚子連絡道路横芝光インターより車で6分
(この分譲地の訪問に適した公共の交通機関はありません)