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 突然のご報告となりますが、おかげさまで、当ブログは2020年5月22日付で、総訪問者数が延べ20万人に到達しました。開設からおよそ2年半、どこに需要があるのかもわからないまま細々と更新を続けてきましたが、地域の文化や名物を何ひとつとして引き出せていないこの内容で、よくここまで来れたものだという思いで感無量です。ありがとうございます。北総への移住を機会に始めた当ブログを通じて、様々な出会いや発見を経験させていただいております。今後ともよろしくお願い申し上げます。
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 と言うわけで、別に到達したからと言って何かあるわけでもないのだが、10万人達成の時のように、本人もその事に気づかぬままスルーしてしまうのもなんだか淋しいので、今回は20万人到達の記念企画として、20万円の売値で広告が出ている東金市滝地区の分譲地について、誰も待ち望んでなかった不要不急の情報を公開したい。

 20万円という価格が安いかどうかはその地目(現況)や坪数にもよるとは言え、少なくとも住宅用地として分譲された土地であればまず間違いなく坪1万円を下回るので、一般の不動産市場で販売される限界分譲地の価格としては、現状ではこれが底値に近いと思う。だが、千葉の限界分譲地は、この位の価格帯で取引されることはまったく珍しくない。他ならぬ当ブログ「限界分譲地の使い道を模索する」の記事で紹介している横芝光町の我が家の、同じく30坪の物置用地も、20万円で取得したものだ。
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20万円で広告が出され続けている東金市滝の売地広告。(大里綜合管理のサイトより)

 しかし、我が家の土地は元々40万円で広告に出されていたものを、交渉して20万円で取得したものである。また長年広告が出され続けていて、価格変更が繰り返されている限界分譲地の売地でも、その価格が30万円を下回った時点で、ついに成約して広告から消えてしまうことが多い。つまるところ、20万円で今なお広告が出され続けているということは、その時点で既にお察しニュータウンなわけであるが、この価格で広告が出され続けると言うのも案外珍しいことなので、今回はその売地の現況を簡単に紹介していくことにする。
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 東金市の滝地区は、千葉東金道路の東金インター近く、八街市と東金市の境に位置する山林地帯である。周囲は丘陵上やその合間に切り開かれた田畑の他には、ゴルフ場や工業団地などが存在するだけの、人口も少ないエリアであるが、隣接する油井地区には、東金の大規模開発分譲地のひとつである「とーがねニュータウン丘の町」もあり、また高速道路のインター近くなので国道は交通量も少なくない。しかし、この滝にある分譲地は、そんな国道から細い横道に入った山間部にポツンと位置している。

 周囲の谷戸には今でも水田は残るが、作付面積はだいぶ縮小されているらしく、既に放置されて長い年月が経過していると思われる休耕田も多い。一帯の航空写真を見ればよく分かるのだが、現役の水田は車道脇に残るのみで、車道から離れた谷戸の奥はほとんど休耕地となってしまっている。この近隣は高速道路、工業団地、国道など、様々な開発事業によって農業人口の減少が続き、旧来からの農家の住宅はほとんど見かけない。
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水田は一部に残るのみで、多くは休耕田となっている。
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谷戸の奥はほとんど休耕田である。

 分譲地は20区画強程度の小規模なもので、隣接した旧来からの民家と思われる家屋を除けば、家屋は7棟のみ。この辺りの分譲地としては、利用区画の割合はまずまずだろうか。この滝の分譲地はもちろん、先述した油井の「とーがねニュータウン丘の町」も、駅や商業エリアから遠く、東金市内においても住宅地としてあまり人気が高いとは言えないが、広告にもある通り小学校が近く、高速のインターも近くその手前に千葉駅や東京駅へ向かう高速バスの停留所もあるためか、利便性の悪さの割には居住者は多いという印象である。ただし自家用車必須のエリアの為人通りはなく、分譲地近くの電柱には「車上あらしにご用心!」との貼り紙が貼られていた。
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分譲地前の車道。
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人通りがないためか、車上荒らしへの注意を促す貼り紙も。

 分譲地の入口の空地には、今の時期に猛烈に繁殖する特定外来生物のオオキンケイギクが咲き乱れているが、その片隅に「除草剤禁止 この地区飲用井戸使用のため 区長」と記された小さな立札がある。確かに上水道の配備されていないこの地域では、土壌汚染は絶対に避けなくてはならないが、考えてみると、これまで訪問した、個別井戸を利用している分譲地で、除草剤に言及した注意書きのあるところを見た記憶がない。

 昨今は、発がん性があると指摘され国によっては販売禁止措置が取られている除草剤も、国内では今なお規制もなく販売が続いていることが問題視されており、ここも区長の判断で予防線を張ったということだろうか。猛烈に咲き乱れる外来種の駆除は容易な作業ではないが、発がんの危険性が払拭しきれない以上、区長の判断は責められるものではなかろう。小規模な分譲地だからこそ可能な措置なのかもしれない。
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特定外来生物のオオキンケイギクが咲き乱れる空き区画。
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区長名で、除草剤の使用を禁止する看板。

 分譲地の北西側には高圧電線の送電塔がある。送電塔をめぐる問題は、別に限界分譲地固有のものでもないが、多くの場合、送電塔近くの不動産は取引価格が落ちると言われている。現時点では高圧電線と健康被害の因果関係は証明されていないとは言え、不動産取引の現場では、送電塔は嫌悪施設のひとつとして重要事項説明書への記載が求められているし、そもそも健康被害があろうとなかろうと、進んで送電塔の下の土地を欲しがる人はあまりいないと思うので、この分譲地の20万円という価格も、その点を鑑みたことなのかもしれない。考え方は人それぞれだが、個人的には、あの高圧電線が発するノイズ音が正直苦手である。
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分譲地の北東に建つ送電塔。

 ところでこの送電塔であるが、1975年に撮影された古い航空写真を確認する限りでは、どうやらここに分譲地が開発される以前より、既にこの位置に送電塔が建てられていた模様である。既に多くの土地が宅地化した都市部ならまだしも、今なお周囲に山林しかないこの地で、わざわざ送電塔の下を開発したということは、やはりここの土地が他より地価が安く、また取得しやすかったのだろう。先ほど僕は「進んで送電塔の下の土地を欲しがる人はあまりいない」と書いたが、実際はいたのである。開発業者が。

 いくら取得金額が抑えられようとも、投機目的の分譲地としては、送電塔の存在は当然不利になる要素のはずだが、今よりもずっと杜撰な不動産取引が横行した時代、販売業者がこの立地を買い手にきちんと説明していたかどうかは定かではない。
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 分譲地内に建つ家屋は、いずれも80年代後半から90年代初頭ごろの建物とみられる。この分譲地は1980年前後の開発なので、北総の多くの限界分譲地同様、開発から実際の利用開始まで若干のタイムラグがある。この分譲地は以前、2棟の中古家屋が、それぞれ250万円と298万円の売値で販売されていたことがあり、僕はその際にも見学のため訪問していて、実は今回は初めての訪問ではないのだが、その2棟とも現在は既に成約し利用されているので、具体的にどの家屋が販売されていたのかは公表を差し控えることにする。しかし、価格相場としては、やはりそのくらいの水準になってしまうということだ。東金市内の他の限界分譲地よりも安い価格帯だが、これもやはり送電塔の存在が影響しているのだろうか。
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分譲地内。多くの家屋はバブル期末期の建築だ。
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 分譲地の北側背後には竹林が迫る。竹林は荒れ、枯れ竹が折り重なるように倒れているのが見えるが、しかしこれも古い航空写真で確認したところ、送電塔とは異なり、こちらの竹林は分譲当初には存在しなかったもののようだ。1983年に撮影された国土地理院の航空写真では、この分譲地と、隣の送電塔がある一帯は、大規模に山肌が切り崩されていて、地肌が剥き出しになっている模様が確認できる。それからおよそ40年、管理者もいなかったその造成地は、猛烈な竹の繁殖に見舞われ、元の山林よりもよほど厄介な荒れ地と化し、次第にかつての旧分譲地まで浸食しつつあるようだ。
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周囲に水田もまだ多く残る1983年に撮影された国土地理院の航空写真。送電塔と分譲地の周辺一帯は広範囲に山林が切り崩され、地肌が見える。
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分譲地の北側背後は現在竹林と化している。
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時は経ち、一度は切り崩された山林は竹林と化し、分譲地の背後に迫る。

 さて目指す20万円の売地は、そんな竹林に面した一画にある。分譲地内には、他にも大里綜合管理の看板が立つ区画がいくつか散見されるが、訪問時点では「売地」の看板が立てられていたのは、この20万円の区画のみであった。背後の竹林との境界にはフェンスが立てられているが、これも折り重なる枯れ竹に押され、既に倒れ掛かっている。加えて残念なことに、この売地は、南西側の隣地は別の管理会社の管理地となっていて綺麗に整備されているものの、北東側の隣地はまったくの未管理区画で、ここも背後の竹林同様、猛烈な竹の繁殖が進んでいて、幾本もの竹が売地内にまで越境してしまっている。
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冒頭で紹介した広告の売地。
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隣の区画は荒れ果て、繁殖した竹が隣地(売地)や道路にまで越境する。

 隣地の樹木が敷地内まで越境してしまっている場合、本来はその地主に伐採を依頼するのが正当な対処であり、たとえ自分の所有地に越境しているからと言って勝手に伐採したら、場合によっては罪に問われる恐れがある。しかし、多くの地主が遠方在住で、しかもその管理意識も低い限界分譲地の場合、住民は、特に隣地の所有者に了承を得ることなく勝手に伐採して管理しているのが実情だ。他人の区画を完全に私物化すれば見咎められる可能性はあるが、越境樹木の伐採程度であれば、地主に連絡が取れないケースも多々ある以上これは仕方ないことだと思う。

 しかしその場合、竹というのはまことに厄介な植物である。改めて述べるまでもなく、放置竹林の伐採・抜根など到底素人の手作業で太刀打ちできるものではなく、その撤去・整地には多額の費用を要する。この売地の価格は送電塔の影響もあろうが、まず何よりもこの状況こそ、未管理区画が周囲の資産性・流動性を下落させるもっとも分かりやすい例であると言える。

 管理する意思もない未管理区画の所有権など制限してしまえと、僕が当ブログで度々繰り返しているのはこの点なのだ。現状では不在地主の「逃げ得」が許されているだけで、他の区画所有者はみなそのあおりを食う形で不利益を受忍させられる状況が続いているからだ。否、未管理区画の地主でさえ、無用な固定資産税を負担していることを考えれば、これは誰も得しない、まったく合理性に欠けた話だと思うのである。
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適切に管理している区画所有者があおりを食う状況は不合理である。

 そんな訳で、20万円でも買い手が現れない分譲地というものは、やはりそれだけの理由があってのことなのだが、通常であれば、ある未利用区画の所有者がその土地を手放す場合、広告を掲載する前に、まずは近隣の家屋に住む住民にコンタクトを取るのがセオリーである。限界分譲地では、自宅用地の他にこうして近隣の別の区画を取得して、そこを菜園やカーポートとして利用している例をよく見る。

 その売却のタイミングのひとつは相続で、全く利用する予定もない被相続人が固定資産税や管理費の負担から逃れるために売り急いだ場合、周辺の他の売れ残りよりも安めの価格で放出される。現在の住民にしても、何かの事情でその住居を売りに出す場合、駐車場用地として利用できる別の区画を1区画でも併せて売りに出せば、少なくとも、駐車場スペースが不充分な別の中古物件よりは有利となる。これは賃貸物件でも同じことが言えるだろう。

 今の時代、限界分譲地のような利便性の悪い立地で、家屋が隙間なく建ち並ぶ住環境を希望する人もあまりいないと思われる中、こうした未利用区画の再利用、区画の再統合・拡張こそ、あるべき限界分譲地の利用方法として求められていると思うのである。
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駐車スペースに転用された未利用区画。
 

20万円の売地がある分譲地へのアクセス

東金市滝
・千葉東金道路東金インターより車で4分
・東金線東金駅より九十九里鐡道バス「九十九里ライナー」「レイクサイドライナー」「八街線」 「NT丘の街」バス停下車 徒歩8分