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 当ブログでは、これまで千葉県の郊外に散在する、ほとんど需要のなくなった「限界分譲地」に的を絞って探索してきた。それらの分譲地は、もちろん当初から住宅用地としての利用を想定して開発されたものもあるが、既に繰り返し述べてきたように、多くの場合、一般の住宅取得者ではなく、地価の上昇を見込んだ投資家に向けて分譲されたものであり、その思惑が大きく外れて今日もなお更地のまま多くが取り残されているものである。

 つまり開発当初から、実際の宅地利用における利便性はあまり重視されていなかった「住宅地」であるがゆえに「住宅地」としての利用には元々不向きなのである。そんな宅地の活用を、僕は当ブログで度々呼びかけてはいるものの、僕自身、これらの限界分譲地が、それでなくとも人口減が進む今の時代に、郊外型ニュータウンとして再起する可能性があるなどとはこれっぽっちも考えていないし、それはスプロールを加速させるだけで、長い目で見るまでもなく賢明な住宅政策とも言えないだろう。自治体の多くは、こうした限界分譲地の現状に無関心だが、おそらくどちらかと言えば、駅から遠く離れた農村部の分譲地に家屋を建てることは、インフラ整備の効率面から、あまり賛成していないはずである。
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造成から長い年月を経た限界分譲地は荒れ、住宅地として再起する可能性はもはやない。

 しかし裏を返せば、住宅地としての需要がないからこそ、宅地利用の枠組みを超えた利用方法がないものかと考えてきたわけである。もちろん、近隣住民に迷惑を及ぼすような利用方法を是と考えているわけではないが、一般的な住宅地でトラブルになりやすい音やペットの問題などは、家屋のほとんどない分譲地ではあまり問題にならないし(分譲地内で馬を見たことがある)、地価も安いので、遊び場所としての分譲地として、何か活用方法はないものかと思案していたのだ。

 ただ、現実には、人の住まない分譲地にそうそう使い道などあるわけもなく、多くの場合、菜園用地として利用されるにとどまっている。「九十九里町作田 小屋用地として再利用される旧分譲地」の記事で紹介させていただいた吉田克也さんのように、新しい生活スタイルの拠点として活用する方もいるのだが、それは一般的なものでもなく、限界分譲地の仲介を行う業者も、菜園用地として購入する方がほとんどだ、と述べている。近頃は太陽光パネルのブームも一段落し、発電基地として転用されることも減っているようだ。
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 さて本題に入るが、僕は先日、横芝光町にある小さな限界分譲地を1区画取得した。昨年、僕は既に住宅用地として別の場所に小さな宅地を購入しており、それに加えてさらに別の分譲地を購入することを訝しく思う方もいるかもしれないがその理由は後述するとして、今回はこれまでの記事と異なり個人的な話題になるものの、その購入した限界分譲地の模様と、購入に至るまでの経緯を簡単に書き留めておこうと思う。
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 その分譲地は、横芝光町の木戸浜海岸から歩いて10分ほどの、総区画数は50にも満たないかつての旧別荘地で、家屋の数は7棟。そのうち居住中の家屋は3棟で、あとは貸家、売家、空き家と現況は様々だが、このエリアでは珍しくもない平凡な限界分譲地である。以前も記事にしたことがあるが、木戸浜海岸は、現在は海水浴場が開設されておらず、かつて存在した海の家も今は跡形もなく、海岸周辺に点在した民宿も多くは閉業し、寂れた雰囲気の漂う静かな海岸だ。

 海水浴場が開設されていなくとも、遊泳を行う者はまばらにいるのだが、そもそも九十九里浜の海水浴場は、夏場の蓮沼海浜公園やサーファーに人気の一宮町を除いて往年の賑わいはもはやなく、湘南のように砂浜が海水浴客で埋め尽くされる光景は、今となっては見ることができない。
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分譲地近くの木戸浜海岸の入口(2018年撮影)。
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2018年7月14日(土)に撮影した山武市の小松海岸海水浴場。真夏の週末でありながら、海水浴客はほとんどいない。

 木戸浜海岸は、真夏の週末に来てもほとんど人影もないことがある静かな海岸で、僕たち夫婦は逆にそれが気に入って頻繁に訪れていたのだが、その木戸浜海岸からも充分歩ける距離にあるこの小さな分譲地に、数年前からずっと広告が出されていた30坪ほどの小さな売地があった。

 当初は、60万円の売値で広告が出されていたのだが、木戸周辺で坪2万円というのは少々強気の価格であり、買い手が決まることもないまま、いつの間にか40万円に値下げされていた。これは限界分譲地でよく取られる販売手法で(不動産販売はみなそうだとは思うが)、いくら損切りを決意したにせよ少しでも高く売れればそれに越したことはないので、まずは少々高値の売値を提示し、問い合わせが鈍かったら、少しずつ値下げを行っていくのである。
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60万円から40万円に値下げされた売地。看板は埼玉県川越市の仲介業者のものだ。
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購入した限界分譲地の周辺。家屋は少ない。
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分譲地の遠景。

 坪2万円で強気とは言っても、周辺には、いまだ坪10万円近い売値を提示して、ファンタジーの世界に生きている売主も少なくないので、それに比べればこの土地の売主は冷静であり、ここなら価格交渉の余地はあるなと考えて、密かに候補に入れていたわけなのだが、今回、遂に購入を決意して、現地に看板を出す仲介業者に連絡を取って見た次第である。

 看板を出していたのは埼玉県の川越市にある不動産業者であった。物件広告は、千葉の限界分譲地を盛んに仲介する茂原市の日栄不動産が出していたのだが、投機目的で分譲された限界分譲地の所有者は元々県外在住者が多いので、おそらく現在の所有者が川越近辺在住で、近隣の仲介業者に依頼したのだろうかと当初は推察した。しかし僅か坪2万円、しかも30坪程度の狭小地を、わざわざ手間暇かけて埼玉県の仲介業者が仲介するとは考えられない。まあ、もしダメなら日栄不動産に問い合わせればいいかということで、この川越の業者に電話をかけてみた。
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 電話に出た担当者の方に、看板を見て連絡した旨を伝えると、当然ながら横芝光町の物件などこの売地以外に扱っていないらしく、どの物件であるかはすぐに伝わった。40万円という売値はあくまで日栄不動産の広告なので、まずは価格を聞いてみたのだが、「別にいくらでも良いみたいですよ」とまったくどうでもよさそうで、商売っ気がまるでない。確かに、販売価格が40万円では、仲介手数料は僅か2万円にしかならないし、やる気など出るはずもない。しかし、いくらでもよい、と言われても、まさか500円で売ってくれと言うわけにもいかず、冷やかしだと思われても困ってしまう。

 そこで一旦価格面の話は保留し、再度売主の方本人から連絡を頂くことになったのだが、奇妙だったのは、仲介業者が、売主の方を呼び捨てで呼んでいたことである。そして実際、売主の方から連絡を頂いたのだが、その話しぶりは明らかに素人のものではなく取り引き慣れしている感じで、こんな二束三文の限界分譲地に財産をつぎ込んで一獲千金を目論み玉砕したダメ投資家のイメージとはおよそかけ離れた印象であった。

 売主の方に、日栄不動産はいくらで広告を出しているのですかと聞かれたので、40万円で出してますと答えると、じゃあ坪1万円でどうですかと提案された。その価格の提示も、最初から値引き交渉をされることを百も承知の上といった感じで、不審は言い過ぎとしても奇妙なことしかなかったので、これはいったん登記簿をしっかり確認してからの方が良いなと考えて、ひとまず交渉は保留として電話を切った。
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 後日、法務局匝瑳支局に赴いて売地の登記事項証明書を取得して見てみると、やはりと言うか、現在の売主は、分譲された当初に取得した方ではなく、数年前に、その方から何らかの理由で贈与されて所有している方であった。北総の限界分譲地は、分譲当初は現在の相場価格の10倍、あるいはそれ以上の価格で販売されていたものであり、それが売主の決断(覚悟)を遅らせる最大要因なわけであるが、この土地に関しては、現在の所有者は高値掴みも何もしていないどころか、それこそ支払った固定資産税や諸費用以上の価格で売れればよい、という土地であったのだ。

 しかし、贈与を受けられたのは、その方の人脈によるものであって、いくら無償贈与であったとしても、何の縁もない僕が、贈与された土地なんだからタダでくださいと言うわけにもいかない。僕としても勿論安いに越したことはないのだが、あまり突拍子もない価格を提示してそっぽを向かれても困る。正直、ここでの指値はかなり悩んだ。僕も、ただ分譲地を巡り歩いているだけの素人で、北総の限界分譲地の取引相場に通じているわけでもないのである。

 そこで、再度売主の方に連絡を取り、日栄不動産の広告価格である40万円の半分の、20万円を指値として提示してみたところ、売主の方は少し戸惑った様子だったが「これも何かの縁ですから20万円でお譲りしましょう」と、割とあっけなく成立した。これなら10万円でもいけたんじゃねえのかと一瞬頭をよぎったが時すでに遅し。こうして僕はこの木戸浜近くの軽く山林化した限界分譲地を、20万円で取得することとなったわけである。
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20万円で購入した30坪の売地。既に軽く山林化している。

 ところで看板を出していた仲介業者は、前述のように最初から全くやる気がなかったのだが、取引価格20万円ということで、遂に仲介を放棄し、売主の方に、互いに自分たちで取引してくれと丸投げしてしまった。売主の方も、当初の予想通り、やっぱり素人ではなかったようで、登記に必要な書類はこちらで全部準備するから、それを持って自分で法務局に行って登記してくれと言われて、代金を支払った数日後、書式を整えた申請書や登記識別情報、契約書や売主の印鑑証明書がすべて一式書留で郵送されてきた。

 ちなみに余談であるが、売主の方は、遠方在住ではあるがこのエリアの不動産事情は理解しているようで、まだ代金を支払う前、購入の意志を伝えただけの時点で、「使うなら、草刈りでもなんでも、もう好きに使ってくれていいですから」と利用を許可してくれた。

 僕は今回、売主の方と直接お会いしていない。もちろん川越にも行っておらず、ここまで書いた取引の流れは、全て電話のみで行ったものである。電話での土地取引など、都市部ではリスクが高すぎて到底考えられないであろうが、この土地はそもそも40万円の売値でも、数年にわたって売れ残っていた土地である。地面師の暗躍する余地などどこにもない。通販感覚で取得できる土地。仲介業者にも見放され、もはや地価が上がる可能性など全くない限界分譲地の取引など、こんなもので良いのではないかと、あらためて認識させられる経験であった。
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 さて最後になるが、既に住宅用地を取得している僕が、なぜ改めてこんな寂れた分譲地を購入したのか簡単に述べていきたい。

 僕は本来ならば、この木戸浜のような、家屋もほとんどない分譲地に住みたいと考えている。しかし、僕は既に妻がいて、生活もある。妻は震災の被災者であるので、軟弱な地盤の上に家を建てる訳にはいかない。また、一般の注文住宅のように数千万円も掛ける気はないが、一応自宅はローンを利用して建築する予定なので、あまり訳の分からない立地にローンを組んで建築するのも考えものだ。加えて僕は決して収入も高くないので、北総の住宅事情を考えても、極力住宅ローンの支払総額を抑えなくてはならない。そこで考えたのが、住宅と、物置を分離する計画である。

 現在も、僕は芝山町の貸家を借りて暮らしているのだが、北総の貸家は、かつての建売住宅を貸家に転用した物件がほとんどで、妻と2人で暮らすには広すぎるものが大半だ。中古住宅も、やはりかつての建売住宅ばかりで、それを購入してリフォームしたところで、例えば何か不慮の事態のが起きてそこに住めなくなった場合、売るにせよ、貸すにせよ、北総では似たような物件の供給が多すぎて、市場で太刀打ちできないのである。
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北総では、ファミリータイプの家屋は、売家も貸家も供給過多だ。

 そのため、僕は住宅用地は、近隣に集合住宅が建てられない住宅地を選んでいる。現在居住中の貸家からも近い芝山町のその住宅地に、1LDK程度の、単身者か、せいぜい夫婦で暮らせる程度の簡素な家を建築する。古い住宅地なので周辺は建坪30坪を軽く超えるような大きな家ばかりなので、万が一の際も周辺物件と競合することがない。最近は庭が広い家も、管理面からあまり人気がないので、庭スペースも抑える。しかしそれでは、肝心の僕たち自身が手狭になってしまう面もあるので、そこで今回、この木戸の分譲地に、物置小屋と、菜園用地として、居住用の宅地とは別に、新たに取得したのだ。簡単に言えば、住宅ローンの支払から、押し入れと庭の費用を省いたということである。

 そもそも僕たち夫婦は、休日の大半は外出していて、自宅にいる間はほとんど二人でリビングで過ごしているので広い家は必要ないし、こうしてよく訪れる木戸浜海岸の近くに物置や菜園があれば、それも遊びとして面白く使えるのではないかと考えたのだ。まあ、現状では、この土地は菜園どころかただの山林で、現時点では雑草の処理に往生している有様なのだが、この土地の利用の模様は、このブログではなく、主にTwitterで発信していく予定なので、興味のある方はそちらもご覧いただければ幸いです。

 最後になりますが、現在、僕の職場は深刻な人材不足に襲われていて、ほとんどブログの更新も、コメントの返信もできない状態が続いております。いくつ土地を買おうとも、探訪は根気よく続けていく所存でありますので、どうか気長に見守っていただければと思います。
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