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 先日、民間調査会社「ブランド総合研究所」が毎年行っている「都道府県魅力度ランキング2020」において、7年連続で最下位の座を死守してきた茨城県が、遂にその栄誉ある座を、隣接する栃木県に奪取されたというニュースが話題を集めた。旧大洋村を抱える茨城県は、42位などという、極めて中途半端かつ話題性もない無益な順位の座に収まることに甘んじ、一躍栃木県が最下位のスポットライトを一身に浴びることとなったわけだが、この「地域ブランド調査」は、大きな注目を集める都道府県のランキングの他に、全国各地の約1000市区町村を対象とした、全国市区町村魅力度ランキングも発表されている。

 そして本年(2020年)の、その市町村別魅力度ランキングにおいて、なんと当ブログでもおなじみの千葉県山武市が、岡山県新庄村、秋田県羽後町と並んで最下位タイの997位を獲得する快挙を成し遂げたことが、2020年10月28日付の千葉日報で報じられた。

参考記事:「まさか…山武が最下位!? 全国市町村魅力度ランク 市長『知名度アップに奮起』」(千葉日報オンライン2020.10.27)
 
 記事によれば、山武市は昨年までに、同ランキングにおいて2年連続で999位というゾロ目の好成績を叩き出すなど、栄誉ある魅力度最下位の称号を得るべく人知れず奮闘していたようなのだが、今年になってついに念願の最下位に躍り出た。
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健闘の甲斐あって、遂に全国最下位の魅力度という栄誉ある地位を獲得した千葉県山武市。
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 最下位獲得の報せを受けた松下浩明山武市長は、千葉日報の取材に対し「このままにはしておけない。これを機に市民一丸で一層知名度アップに奮起したい」と、胸の奥底から湧き上がる喜びに満ち溢れたコメントを寄せている。その発言からは、自らが首長を務める自治体に最下位の烙印を押したこのランキングそのものに対する疑念を感じ取ることはできず、最下位決定を口実にした山武市民の結束および統制への強い意欲と、そして自身がそのイニシアチブを握る中央集権体制の確立への期待を隠さない。
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魅力度最下位の報せに歓喜のコメントを寄せ、市民の結束を呼びかけた松下浩明山武市長。(山武市ホームページより転載)
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山武市の快挙は地元紙でも驚きを持って大きく報じられた。

 山武市と言えば、当ブログではもはや改めて語るまでもなく、丘陵部の山林の奥から沿岸部に至るまで、市内全域にわたって、膨大な数の魅力に欠ける限界分譲地が今なお取り残されている楽しい町である。既に当ブログでも、紹介した山武市内の分譲地は20箇所以上にも及んでおり、その山武市が魅力度最下位の座に就いたとなれば、これは当ブログとしてもその援護射撃として、山武市内の限界分譲地がいかに資産としての魅力に欠けるものか、そしてそれ故にいかに多くの分譲地が今なお買い手が現れることもなく取り残されているか、改めて語らねばなるまい。

 そこで今回は魅力度最下位獲得記念として、そんな山武市において、特に魅力に乏しい分譲地を、僕の独断と偏見でピックアップして、その魅力のなさを解剖していきたいと思う。
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 ところで、限界分譲地の評価を構成する要素はいくつもあり、人によっても捉え方は異なる。また山武市内には、かつて秋田県の第三セクターが分譲した建売住宅で悪質な欠陥住宅被害が続出し、購入者が秋田県に対して集団訴訟を起こした、まさに魅力がなさすぎて法廷にまで持ち込まれた分譲地なども存在するのだが、そんなガチの話ではいくら何でも生々しすぎるので、今回「魅力度最下位」の分譲地を選定するにあたって、僕が独自に定めた判定基準は以下の4点である。

①利便性が低く、資産としての魅力に乏しい
②膨大な数の売地の中で、あえてその分譲地を選ぶ理由がなく、希少性での魅力に乏しい
③購買意欲を惹起させる売価設定がなされておらず、価格面の魅力に乏しい
④実際に宅地として利用されている区画が存在せず、利用実態が魅力の乏しさを証明している

 まず、①に関してはそもそも当ブログで扱う分譲地の大前提であるので問題ないとして、②は、仮に利便性が低くとも、例えば海が近くマリンレジャーに適していたり、近隣に家屋がなく隠れ家的なロケーションであったりと、利便性とは異なる独自の付加価値を備える分譲地を除外することを意味する。

 ③については、いくら利便性や資産価値の低い土地であろうと、捨て値に近い価格の売地は、それはそれで資材置き場や駐車場、菜園用地としての需要を呼び起こしてしまうので除外せざるを得ず、そして④は、当ブログでも頻繁に取り上げる放棄分譲地を意味するものであるが、放棄分譲地の中には、市場における需給バランスなどとはまったく異なる事情で放棄に至ったと思われる分譲地もあるので、そのような所は除外し、あくまで売り地が存在するも、買い手が今なお付かず放置されている分譲地に限定した。
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 そんなわけで、上記4つの条件をすべて満たし、おそらく圧倒的多数の方が、どんなに安くても購入する気になれず、またおそらく周辺地域にとってもお荷物にしかなり得ないであろう分譲地を選定した結果、今回は山武市下横地字釜前、農村集落のど真ん中に取り残された放棄分譲地を、魅力度最下位の町における、もっとも魅力のない分譲地として認定する運びとなった。
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 山武市の下横地は、総武本線の成東駅から南東方面へおよそ6kmに位置する、典型的な九十九里平野の農村である。隣接する同市上横地が、市内における限界分譲地の一大供給地であるのに対し、下横地は他にこれといった開発分譲地も見当たらず、広大な水田のほかは、干拓前からの砂丘上に旧来からの農村集落が残る静かな地域であるが、なぜかこの農村集落のど真ん中に、総区画数僅か10程度の小さな放棄分譲地が残されている。
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大里綜合管理の公式サイトに掲載されている、山武市下横地の放棄分譲地の広告。

 物件広告には「県道緑海東金線近く」などとある。県道緑海東金線は、東金市内のごく一部を除き、特に商業施設が立ち並ぶわけでもなく、主要な幹線道路とも言えない単なる2車線の一般県道であり、そんな県道から近いというだけの、ほとんどどうでもいいようなレベルの立地条件がウリとして書かれてしまっている時点で、早くも最低の魅力度は担保されたに等しく、訪問前から早速一抹の不安を覚える。
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山武市下横地の水田地帯。

 広告に掲載されている地図を見てもすぐにおわかりの通り、分譲地の周囲には、所狭しと旧来からの農村住宅が立ち並んでいて、分譲地はそんな集落の合間に残されていた未利用地を造成して作られたようだ。今回の記事の投稿にあたって、試しに1つの区画の登記簿を取得して見てみたのだが、所有者は1985年に取得して今もそのまま記載事項は変わっていないので、80年代半ばころの開発と思われる。
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分譲地の周辺。特に変わったところもない静かな農村集落だ。

 集落自体は何も変わったところはなく、その魅力を云々するような要素もないが、そんな旧来の集落の合間の狭い小路を抜けていくと、やがて一本の棒切れが立てられている更地が目に入る。ストリートビューの同一地点の画像では、おそらく「売地」と記載されていたであろう傷んだ立て札が見えるのだが、ついに問い合わせもなかったのか、今はその看板も消滅し、単なる一本の棒が突き刺されているだけである。
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農村集落の奥深くに見えてくる小さな放棄分譲地の空き地。
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空き地に残された、売地看板の残骸と思しき棒切れ。
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同一地点のストリートビューの画像。辛うじて「地」の文字が読み取れる。

 分譲地の入り口にはゴミ集積場が設けられているが、住民がいないのでもちろん使われることはなく、今はゴミ混じりの土砂が堆積している。近隣住民も集積所として利用することはなかったようだ。なお、このゴミ集積所に隣接した区画も、現在68万円で売りに出されている。物件広告には97坪、坪単価7000円などと記載してあり、一見やや魅力的にも見えてしまうが、これは共有持ち分のある私道の面積も含めて記載・算出しているので、実際には宅地としての有効面積は33坪しかなく、坪単価は2万円となる。大して安くもないうえに広告表記も不誠実であり、魅力はまったくない。
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分譲地入口のゴミ集積場。土砂が堆積しており使われていない。
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ゴミ集積場に隣接した区画の広告(不動産ジャパンより転載)。坪単価を、私道負担分も含めて算出していて魅力がない。

 そのゴミ集積場の奥、生育したカイヅカイブキの木に覆われ鬱蒼とした山林が、今回僕が市内最低の魅力度と認定した問題の放棄分譲地である。カイヅカイブキの木は、おそらく開発当初に分譲地に彩りを添えるために開発業者が植樹したものが、数十年の時を経て、管理する者もなく生育しきったものであろう。
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ゴミ集積場の奥に続く放棄分譲地。カイヅカイブキの大木で鬱蒼としている。

 大洋村の別荘地もサワラなどの木がよく植樹されているが、北総においても、こうしたカイヅカイブキやサワラなどが植樹された分譲地は、元は別荘地として分譲されたものであり、一般の住宅地(を想定した投機不動産)には、どんな木であれ分譲時から植樹されている例はまずない。つまりここも本来は別荘地の名目で開発されたものであり、そして先に紹介した、大里綜合管理の広告にある「前面道路森のアーチ」とは、つまりこの伸び切ったカイヅカイブキの木のことであるようだ。
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「森のアーチ」と称された、分譲地の私道。
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枝打ちもされず、私道にせり出したカイヅカイブキの木。

 「森のアーチ」とは、誰もヒバの横枝を払わないから結果としてそうなっているだけのことであり、つまり一言で言えば管理不全の証以外の何物でもなく、既に伐採には相当の重労働を要する程度の巨木に生育していることを考えても、決してセールスポイントになりうる要素ではないと思うのだが、これは広告作成者を責めるのは酷であろう。依頼を受けたからには、どんなつまらない物件であれ、なんとか付加価値があるように見せなくてはならないのが仲介業者の役目だからだ。
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 自称アーチによって分譲地内の私道は日照もほとんどなく、快晴日の日中でも薄暗い。既に述べたようにこの無住の放棄分譲地は、元々は別荘地の名目で分譲されたものである可能性が高いが、購入者は、果たしてこんな立地の分譲地が別荘地になり得ると本気で考えていたのだろうか。

 この集落は海岸までは直線距離でおよそ3kmほどある。山武市内の海水浴場は、今日ではどこもあまり賑わってるとは言えないが、唯一大型プールがある蓮沼海浜公園は、夏休みともなれば、水着姿の若者が大勢闊歩する一大レジャースポットとなる。しかし、そんな蓮沼公園からも遠く離れたこの集落の中で水着姿で歩いたところで、単なる不審者になるだけであり、およそマリンレジャーの拠点に相応しい立地とは言えない。
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 農村集落に関心を持つ方向けの分譲地であったとしても、そもそも農村集落の中に住みたいのであれば、まず迷うことなく集落内の空き地か中古住宅を取得すべきであり(北総は農村部の物件も比較的豊富で安い)、こんな一区画僅か30坪程度の、家庭菜園をこしらえるのがやっとの狭小地を取得して新築を建てるメリットなどまったくない。魅力度云々以前に、そもそも分譲地としてのコンセプトが完全にバグっているので、ここに魅力を感じる購買層が存在し得ないのである。
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コンセプトが鋭角に歪んでいて、ターゲットとなるべき購買層が存在しない。

 にも関わらず分譲地内の売地の坪単価は4万円を超える法外なもので、これではおそらく問い合わせすらまずないであろう。更に魅力度の減退に追い打ちをかけるように、この分譲地の南側にある広大な敷地を有する古民家は、おそらく無住となって相当の年月が経過していると思われる朽ち果てた廃屋となっており、今やその敷地全体が荒れ果てた竹林と化しつつある。仮にここに住まいを構えようものなら、終わりなき竹の根の侵食と藪蚊との闘いが待ち受けることになろう。
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分譲地の南側の古民家は完全に朽ちた廃屋になっており、敷地は竹林と化している。

 
 そんなわけで、今回紹介した下横地の放棄分譲地のポイントをまとめると、
  • 駅から遠く、分譲地へ向かう公共交通機関が存在せず、特記すべき利便性がない。
  • 日当たりや眺望などのセールスポイントが一切なく、広告主も苦し紛れの記載をせざるを得ない。
  • 一部、不誠実な記載の広告を出す物件が存在する。
  • 売価が現在の相場を反映していない。
  • 管理不全により、宅地利用のために、実勢価格を上回りかねない出費を要する。
  • 現状では第三者は対策が取れない危険空き家、および放置竹林に隣接している。
となる。読者の方も、どうして僕がここを魅力度最下位の分譲地として認定したか、これでご理解いただけると思う。誤解しないでいただきたいのは、この分譲地が位置する集落そのものを魅力度最下位などと語るつもりはもちろんない。むしろこれは、近隣の方にとっても、所有者は顔も見せないし、ヒバの枯葉は落ちてくるし、買い取るにしても高すぎるしで、まったくもって邪魔物でしかないのではなかろうか。せいぜい私道を来客用の駐車場として使える程度だが、分譲地と異なり農家は敷地が広い家がほとんどで、多くの家庭では路上駐車の必要もなかろう。

 つまりこの土地は、売主はいつまでも売れずに苦しみ、仲介業者はセールスポイントの記述に苦しみ、近隣住民にとっても迷惑で、買い手の関心も惹かないのだ。この分譲地こそまさに、もはやその存在自体が誰も得しない、山武市における、市内最低の魅力度と断定するに相応しい放棄分譲地であろう。ということで今回は僕の独断で、山武市における魅力度最下位の分譲地の称号は、この下横地の放棄分譲地に捧げることとする。
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魅力度最下位の分譲地へのアクセス


山武市下横地
・圏央道山武成東インターより車で約20分
(この分譲地の訪問に適した公共の交通機関はありません)




追記・訂正
 本記事内において、分譲地に植樹されている樹木について、記事公開時は「ヒバ」と記載していましたが、詳しい知人より指摘があり、カイヅカイブキの木と思われるとのことなので訂正いたしました。誤認による不正確な記述でご迷惑おかけいたしましたことをお詫び申し上げます。