横芝光町屋形 農村集落の廃別荘地

B級別荘地

 このブログで紹介している分譲地の所在地の情報収集は、主に物件サイトの売地情報や、草刈業者のホームページなどから所在地を特定して行っている。限界分譲地は、中古物件と違って開錠の必要があるわけでもなく、その価格を考えても、果たして買う気があるかもわからない客をいちいち現地まで案内していては無駄なコストばかりかかってしまい、まったく割に合わないので、草刈り業者に限らずほとんどの不動産会社は、見学希望者に勝手に現地まで行って見てもらう事を想定し、物件の所在地や地番を詳細に記していることが多い。

 物件情報は膨大な量で、そのすべてを調査するのは困難なので、その中でも価格が極端に安かったり、掲載された物件画像の時点で既に限界ニュータウン探訪記と化しているような荒れ果てたものをピックアップし、現地まで訪問しているのだが、先日、僕の自宅から車で5分程度の近所にある、横芝光町屋形の物件広告を何気なく見ていたところ、おすすめポイントに「周辺には、空き家がポツポツと有ります」などと、実に気になる一文が添えられていた。ちなみに取扱業者は、もはや毎度おなじみ茂原の日栄不動産である。

周辺にポツポツと空き家があると記された、横芝光町屋形の売地広告の物件概要欄。(Yahoo!不動産より)

 2020年の4月に、150万円から110万円に値下げしたとの記載もあるが、それでも坪単価は2万円弱ほどであり、正直言って印象に残るような価格ではない。150万円ではなおさらのことで、そのために、今まで近所とは言えまったくノーマークだったのだが、周辺に空き家がポツポツと有ると言われると話は異なる。家屋ではなく「空き家」と断定している。

 横芝光町屋形、木戸といった海岸近くのエリアに残されている旧分譲地は、ベッドタウンと言うよりは、別荘地の名目で分譲されたものが多く、今でも別荘として利用されている家屋は少なくない。これは別荘地全般に言えることなのだが、別荘の利用頻度や管理状況は所有者によって千差万別で、そのため別荘地の家屋については、「空き家」の定義付けが曖昧にならざるを得ず難しい。それにも関わらず、空き家と断定しているこの分譲地の現況はいったいどんなものか、近所なので軽く見学してみることにした。

 分譲地は、旧来からの屋形の集落の合間を縫って開発されたような立地で、舗装が荒れた分譲地の入り口の道の両脇には、すでに解体されてブロック塀だけが残された宅地と、鉄板の屋根も錆びた古民家の空き家がある。海から直線距離にしておよそ1㎞ほどの立地のため塩害がひどく、ブロック塀の鉄筋は一部腐食して崩落しており、鉄策も朽ち果てて風化してしまっている。海の近くの分譲地は、廃屋も屋根が抜け下りていたりして崩落寸前のものも多く、潮風の強さというものを思い知らされる。

分譲地の入り口にある既存集落の宅地跡。潮風で鉄筋や鉄柵は錆びて朽ち果て、ブロック塀が崩落している。

 横芝光町役場でこの道路の種類を調べたところ、分譲地内は全て建築基準法第42条1項3号道路(既存道路)であり、幅員さえ確保すればおそらく建物は建築可能だとは思うが、道路の荒れ方を見ても、日常的に住民が出入りしているようにはあまり見えない。今は真冬なので路肩の雑草も枯れ果てているが、夏場はおそらく両脇から雑草が猛烈に繁茂すると思われ、幅員も狭いので、車で侵入するには雑草をかき分けながら走行するしかなさそうだ。なお、物件広告には、夏季に撮影したと思われる画像が掲載されているが、それを見る限りでは、まともな乗用車で訪問しようという気にはなれない光景である。

物件サイトに掲載されている同物件の周辺画像。

 少し奥へ進むと向かい合った2棟の家屋が見えてくる。いずれも瓦屋根の古びた造りであり、どちらの家も住民がいる模様は見られない。それでも北側の1棟は敷地内の雑草も綺麗に刈り取られ、縁側の軒屋根こそすべて剥がれて失われているが、すぐにでも住宅として使えそうなコンディションだ。しかし、その向かい、南側のもう1棟は、玄関までの道も雑草に覆われ、壁や車庫のシャッターには蔓が這い、放置されてかなりの期間が経過していると思われる。

 九十九里平野の別荘地では、洋風の洒落た別荘住宅が登場するのは80年代に入ってからのことで、70年代に建築された別荘家屋は、同時代の一般の民家と変わらない平屋の瓦屋根のものが多いので、あるいはこの2棟も別荘として利用されていたものかもしれない。しかし、南側の家屋に限って言えば、その築年の古さから見ても、再利用には大規模な修繕工事が必要と見受けられ、これは確かに空き家と断定して差し支えないもののように見える。

北側の家屋は、生活感がなく常住している気配は見られないが、きれいに管理されている。

南側の家屋は壁に蔓が這い、敷地内も荒れている。

 せっかく役場まで行って道路の種類について聞き込みをしたのに、うかつにもこの道路が公道か私道か聞くのを忘れてしまったのだが、見たところ、開発当初から今日まで、一度も再舗装されえているようには見えないような傷み方である。物件広告には「私道負担なし」とあるのだが、果たしてこれは公道なのだろうか。

 もっとも町内には、一応町道指定を受けていながら、通行者がいないために、もはや舗装は落ち葉や腐葉土で完全に覆われ、車両の走行は不可能と思われるほどまでジャングル化した雑木林の道もあるので、見た目だけで判断することはできない。空き地は雑木林や竹林と化したところが多く、近隣の他の限界分譲地と比較しても管理状態は劣悪だ。

路盤は傷んでいる。周囲の空き地も荒れており、管理状態の良くない分譲地だ。

 奥に進むと、更に2軒の家屋が見えるが、こちらもいずれも住民がいるようには見えず、日常的に利用されているようにも見えない。それでも1軒は、通常の「空き家」程度のコンディションが維持されているが、その奥にある二階建ての家屋は、敷地内はゴミが散乱し、庭木は道路をふさぐほどまで越境しており無残な有様だ。使われなくなった別荘が物置として利用されている模様はよく見かけるが、このゴミの量は尋常ではなく、ここは不法投棄のターゲットにされてしまったのかもしれない。

 この道沿いには側溝があるのだが、その側溝も土砂で埋まり、その土砂からさらに雑木が生えている始末である。この荒れた二階建て家屋の奥、道路の突き当りに、物件サイトに掲載されていた売地があるのだが、これでは夏場はまともにたどり着けるのかも怪しい。

奥にある2棟も、住民がいる気配はない。

庭木はひどく越境し、ゴミも散乱している。

 目的地である売地の向かいにも1棟家屋があり、貸しペンションとして運営されていたことがあったのか、「七海荘」と書かれた表札が残されているが、こちらもまた敷地内は荒れ、長く利用されている気配もない。これも確かに「空き家」と断定してしまっても良いような状態で、なるほど確かにこの売地の周辺は「空き家がポツポツと有ります」としか言いようのない状態だ。

 売地は、既存集落の民家の敷地に隣接しており、境界付近に群生する竹の隙間から隣家が見えるが、直接行き来できる道はなく、物件画像を見る限りは、夏季はその隙間も枝木でふさがり見通せないようなので、工夫すればある程度のプライバシーは保てるロケーションではある。しかし、この辺りの別荘地の典型であるが、ここもまた造成工事が適当だったらしく、敷地は一目見てひどく波打っているのがわかる。そんな人もいないと思うが、この地盤の状態のまま建築すると沈下の恐れがあるかもしれない。なお、現地に建てられている看板は、取扱業者とは異なる草刈り業者のものだった。

問題の売地は突き当りにある。

向かいには「七海荘」の表札がある家屋があるが、これも放置されている。

造成工事の質が悪かったのか、地面はひどく波打っている。

 それにしてもここは「空き家」が多く寂寥感の漂う限界分譲地である。これまで訪問した限界分譲地は、空き家の割合は多くても全戸の5割程度だったが、ここはその割合を大きく上回ってしまっている。この売地に至る途中に横道があるのだが、その道沿いにある2棟の家屋もやはり長期間利用されていないと思われる放置家屋で、結局、おそらく現役で使われていると思われる家屋は、分譲地の東端にある1棟のみであった。

 僕は、このブログで限界分譲地の活用を呼び掛ける一方で、先日長崎県の野崎島の記事を挙げたことからもわかるように、廃墟、廃村が醸し出すもの哀しい雰囲気も嫌いではない。むしろ、ある面ではそれが限界分譲地探索の原動力のひとつであるという気もする。しかし、それは単なる見学者の呑気な感想でしかなく、売主にしてみれば、右を見ても左を見ても、目に入るのは資産価値を下落させるような負の要素しかなく、泰然としてられるものでもない。

 

横道に入ってもやはり管理の悪い放置家屋が並ぶ。現役と思われるのは東端の1軒のみであった

 もっともこの分譲地は、周辺の既存集落や別の分譲地に近接しており(直接は道路でつながっていない)、分譲地内の道路から近隣の民家も見えるので、見渡す限り廃屋、というわけでもないが、それにしても、今も現役の農村集落のど真ん中に、こんな廃別荘地が置き去りにされているというのも奇妙な光景ではある。ただ置き去りにされているというだけならともかく、一部の敷地や道沿いには投棄されたゴミも多く、環境の悪化を引き起こしているのも深刻な点だ。

 一番の問題点は、この分譲地の側溝は所々土砂で埋もれていてほとんど機能していないものの、機能している箇所も、分譲地の外側のどこに排水を放流しているのか分からない点である。側溝の先は単なる水田脇の農道で、用水路もなく、見たところ、結局側溝の排水をそのまま外に垂れ流ししているようにしか見えない。昭和の開発業者の、あまりにずさんな工事ぶりと、数多の公害を引き起こしていたのも不思議ではない当時の環境意識の低さがが垣間見える光景である。40万円もの値下げを断行して買い手を待つ売主の方には悪いが、むしろここは、今後はもう利用すべきではない分譲地なのかもしれない。もっともそれを言い出したら、それこそこの分譲地に限った話ではないのだが。

結局垂れ流しにされているようにしか見えない側溝の排水。環境面への影響を考えても、ここはもう利用すべきではない分譲地かもしれない。

 

農村集落の廃別荘地へのアクセス

横芝光町屋形

・銚子連絡道路横芝光インターより車で約15分

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