「ある開発業者の変遷」追記/「八街の放棄分譲地」に関する訂正

資産価値0

 先日(2022年7月13日)に、僕はYouTube上のチャンネルで『ある開発業者の変遷』と題した動画を一本投稿した。それは、現在も東京渋谷区道玄坂に自社ビルを所有している「長島商事株式会社」というかつての開発業者が、千葉県や山形県に展開したいくつかの分譲地の現況を報告するというものだが、動画投稿後、Twitterのフォロワーさんの方が、インターネットの官報検索サービスを利用して、同社が1977年1月24日付で、公正取引委員会より景表法違反に基づき排除命令を受けた事実を確認し報告してくれた。

 同社は、現在はおそらく自社ビルの賃貸経営を主な業務として行っている事業者で、70年代のような宅地開発業務は行っていないので、僕は動画内では可能な限り当時の販売広告への言及にとどめ、現在の同社に対しての評価は避けたつもりだった。それは、同社への名誉毀損などを恐れるというよりは、僕のチャンネルはあくまで旧分譲地が主題であり、元開発業者への責任追及だとか、宅地分譲の話題から脱線したゴシップ的な内容にしたくなかったからであるが、しかし分譲地の広告に関して排除命令が出ていたとなると、現在はともかく、当時の開発業者としての同社への評価をも大きく軌道修正せざるをえない。しかもご紹介いただいた当該の公正取引委員会の告示をよく読むと、なんとその問題となった広告の分譲地は、僕がYouTubeチャンネル開設後、初めて投稿した動画の取材地である八街市上砂の放棄分譲地であった。

参考:公正取引委員会告示「昭和52年(排)第1号」1977年1月24日付  (サイト「官報検索!」)

 驚いて上砂の放棄分譲地の登記事項証明書を改めて見返すと、確かに私道の共有持分が、同社から各区画所有者に持分移転されている旨が記載されている。上砂の放棄分譲地の動画では、僕は開発業者の素性について一切関心を払っておらず、登記簿に記載された業者名など完全に失念していたのだが、この事実を動画内で指摘できなかったのは痛恨のミスである。追記の動画を作成しようかとも思ったのだが、しかしこれは映像で表現するのもやや難しい題材でもある。そこで今回、ここ最近すっかり放置気味だった当ブログで、この排除命令について追記することにした。

 リンク先の公正取引委員会告示は例によって、「@飾区」と言った意味不明の誤字や、漢数字とアラビア数字の混在が目立つもので非常に読みにくいので、まずは排除命令の根拠となった「(二)事実の要旨」の項目を訂正の上全文引用する。

 

(二)事実の要旨

1 長島商事株式会社(以下「長島商事」という。)は、昭和51年5月1日から行つた千葉県印旛郡八街町上砂字馬渡452番58などの分譲地の取引について、

(1)

イ 大新ハウス株式会社(所在地東京都渋谷区恵比寿南一丁目10番(10号)に無断で同社名のビラ(以下「第1のビラ」という。)約300000枚を作成し、新聞販売店を通じて、昭和51年5月1日、読売新聞及び毎日新聞に、同月2日、朝日新聞に折り込み、千葉市及び千葉県船橋市におけるこれら新聞の購読者である一般消費者に配布した。

ロ また、大新ハウス株式会社に無断で同社名のビラ(以下「第2のビラ」という。)約300000枚を作成し、新聞販売店を通じて、昭和51年5月8日、読売新聞に折り込み、東京都墨田区、江東区、葛飾区及び江戸川区並びに千葉県市川市及び船橋市における同紙の購読者である一般消費者に配布した。

(2)

イ 長島商事名のビラ(以下「第3のビラ」という。)約389000枚を作成し、新聞販売店を通じて、昭和51年5月22日、朝日新聞に、同月23日、読売新聞及び毎日新聞に折り込み、東京都墨田区、江東区、葛飾区及び江戸川区におけるこれら新聞の購読者である一般消費者に配布した。

ロ また、長島商事名のビラ(以下「第4のビラ」という。)約389000枚を作成し、新聞販売店を通じて、昭和51年5月29日、朝日新聞に、同月30日、読売新聞及び毎日新聞に折り込み、東京都墨田区、江東区、葛飾区及び江戸川区におけるこれら新聞の購読者である一般消費者に配布した。

 

2

(1)所在地
長島商事は、この分譲地の所在地について、第1及び第2のビラにおいて、「総武本線都賀南口駅前案内受付」等と記載し、あたかも、この分譲地の最寄り駅は、国鉄総武本線都賀駅であるかのように表示し、また、第3及び第4のビラにおいて、「総武線西船橋本日ヨリ受付開始南口駅前受付中」等と記載し、あたかも、この分譲地の最寄り駅は、国鉄総武本線西船橋駅であるかのように表示しているが、実際には、この分譲地の最寄り駅は、国鉄総武本線八街駅であって、この分譲地は、前記都賀駅から約20km、西船橋駅から約45km離れた地点にあるものである。

 

(2)価格
長島商事は、この分譲地の価格について、

イ 第1及び第2のビラにおいて、「安さと道路付が自慢の1㎡5400円から今回限り」、「思いきった価格1㎡5400円から7200円まで(最高地14800円)」等と、第3及び第4のビラにおいて、「安さと環境が自慢の1㎡25400円から」、「価格思いきった 今回限り1㎡5400円から7200円(最高地17、0円(原文ママ))」等と記載し、あたかも、安価な区画が相当数あるかのように表示しているが、実際には、同社が販売しようとした14区画は、すべて1㎡当たり14240円以上である。

ロ 第1及び第2のビラにおいて、「総額534600(99㎡・1区画より)」と、第3及び第4のビラにおいて、「総額534600円(99㎡・1区画より)」と記載しているが、実際に同社が販売しようとしたこの分譲地の1区画当たりの価格は、すべて2110000円以上である。

(3)支払方法
長島商事は、この分譲地の代金の支払方法について、

イ 第1及び第2のビラにおいて、「頭金100000円の残金長期ローンで」、「土地のお求めは暮しのペースをくずさない長期ローンをご利用下さい。」等と記載し、あたかも、同社が金融機関と提携してローン提携販売を行つているかのように表示しているが、実際には、同社が割賦販売を行うものである。

ロ 第3及び第4のビラにおいて、「頭金100000円の残金長期クレジットで」、「土地のお求めは暮しのペースをくずさない長期ローンをご利用下さい。」等と記載し、あたかも、同社が割賦販売又は金融機関と提携してローン提携販売を行つているかのように表示しているが、実際には、同社が割賦販売のみを行うものである。

ハ 第1ないし第4のビラにおいて、「頭金100000円で、月々のお支払いは7200円」、「年利12%」、「全額を5年(60回)均等払い。」と記載し、1㎡5400円の土地99㎡を5年60回払で購入した場合、毎月の支払額が約7243円〔総額534600円-100,000円(頭金)=434600円÷60回=約7,243円〕プラス金利となり、ボーナス払を併用すると更に毎月の支払額が少額になる旨を表示している。
しかるに、この分譲地には、1㎡当たり5400円の区画がないため、この支払例が適用される区画はない。また、仮に、この支払例が適用される区画があつたとしても、7200円のほかにわずかな利息を支払えばよいものではなく、この金利年12%は、アドオン方式によるものであり、このほか分割手数料と称する金利が加算されるため、実質金利は年約23・75%となり、毎月の支払額は、約12400円となる。

(4)環境
長島商事は、この分譲地の環境について、

イ 第1及び第2のビラにおいて「現地周辺公共施設」と、第3及び第4のビラにおいて「物件の周辺公共施設」と、それぞれ、記載した上、「商店街」、「役場」等と説明を付した写真を掲載しているが、この商店街は、八街駅前商店街であり、役場は、八街町役場であつて、いずれもこの分譲地から約9kmの地点にあるものである。

ロ 第3及び第4のビラにおいて、「公共施設(学校…近し)市街中心地にも近く便利」と記載しているが、この分譲地は、八街町の中心地の近くにはなく、この分譲地に居住する者の子弟が通学する八街中央中学校から約9km離れた地点にあるものである。


(5)私道負担
長島商事は、この分譲地の私道負担について、第1ないし第4のビラにおいて何ら表示していないが、実際には、購入面積の約9%ないし約14%は、私道に供されるものであつて、占有利用ができないものである。


(6)利用の制限
長島商事は、この分譲地の利用の制限について、第1ないし第4のビラにおいて何ら表示していないが、実際には、この分譲地は、都市計画区域内にあり、1区画については、千葉県知事から道路位置の指定を受けていないため、また、13区画については、千葉県知事の許可を受けて開発行為を行わなければならないものであるところ、許可を受けずに開発行為が行われたため、直ちには、建築物の建築ができないものである。

 

 『ある開発業者の変遷』の動画内で紹介した長島商事の紙面広告も、明らかに舗装工事を施していない私道を舗装済みと表記していたり、最寄り駅(?)と称する駅からの距離の数値が実際とは大きくかけ離れていたりと、やや不誠実というか、それこそ別個に排除命令を受けてもおかしくないほどいい加減な表記が目立つものであったが、新聞折込で頒布していた広告の記載はもっとひどかったようだ。実質年利は23%であるという恐ろしい指摘もある。問題となった現物の広告を是非見てみたいものだが、さすがにそれは今となっては入手はほぼ不可能であろう。

 ただ幸運なことに、この上砂の放棄分譲地の新聞紙面広告は、つい先日偶然読売新聞の縮刷版で発見したのだが、こちらもやや怪しいと思われる表記はあるものの、上記の公正取引委員会告示で指摘されているようなあからさまな嘘は見当たらない。新聞の紙面広告は、今とは比較にならないほど緩かったと言え、それなりの掲載基準があるはずなので誇張は控えめにして、一方で折込広告に関してはほとんどがノーチェックのため、折込ではよりデタラメな記載が横行していたということなのだろう。

1973年8月29日付読売新聞に掲載されていた、上砂の放棄分譲地の紙面広告。公正取引委員会告示で指摘されていたようなあからさまな嘘や誇張は見られない。

 意外だったと言うか、僕としても訂正しなくてはいけないのが、「(6)利用の制限」の項目の、この分譲地は都市計画区域内に位置していて、開発許可を受けていないので建築不可であるという指摘だ。千葉県北東部の放棄分譲地の大半が建築不可である理由は、開発当時は、その放棄分譲地が位置する自治体の大部分が都市計画区域外で、分譲当時は建築確認申請自体が不要だったためである。そのため僕は八街もてっきりそうだと思い込んで、この上砂の放棄分譲地についても、YouTubeのコメント欄でどうして建築不可なのかと問われた際に、開発当時は都市計画区域外だったためと回答していたのだが、実際にはそうではなく、これは開発許可を得ずに造成工事を強行した違反造成地だったのである。

 公正取引委員会が事実誤認や思い込みを元に排除命令を行うとは思えず、この点はしっかり精査していると思うので、これが事実なのだろう。コメント欄でご質問いただいた視聴者の方に誤った回答をしたことをお詫びしなければならないとともに、違反造成などという、よりひどい新事実が判明してしまったことには改めて驚嘆を禁じえない。

 また、これは余談だが、この紙面広告に掲載されている物件写真は、当記事の冒頭に掲載した画像と、ほとんど同じアングルで撮影していると思われる。さすがに開発から半世紀も経過すると、時間の変遷と自然の強靭さを痛感せざるをえない変貌ぶりである。違反造成地ともなれば、おそらくこの分譲地は未来永劫建築許可など下りることはなく、このまま山林に還していくのが唯一の合理的な選択肢なのだろう。ちなみに2022年7月18日現在、動画内で紹介した120万円の売地は、今なお価格を下げることなく掲載され続けている。

コメント

  1. 限界ニュータウン探訪記ファン より:

    ユーチューブの補足説明有難うございました。たしかに文字表現の方が分かりやすいですね。
    それにしても、昔の日本はこんな状況だってのですね。
    新興国はどうなっているのかと思うことがありますが、時間が経てば良い方向に変化があることも確かかなと思います。なかなか買われない国もあると思いますが。
    また、新しい動画を楽しみにしています。

  2. YAMAJI より:

    はじめまして。Youtubeでお勧めに出てきたのでチャンネル登録させていただき、こちらのブログも拝読させていただいております。
    なんだかミステリーの伏線回収を思わせるような展開ですね。
    自分が仕事で出入りしている新聞販売店の中には折込チラシの印刷も請け負っているところもあるんですが、そういった店刷りの折込チラシならなおのこと残りにくいと思います。
    知人のエフェメラコレクターも、時代を強く映し出すにも関わらず残らないのがチラシの特徴と述べてますので、当時のチラシ資料も乏しい中でここまでの調査内容には驚嘆させられます。

    単行本も拝読させていただきます。楽しみにしています。

  3. ゆうや より:

    子供の頃千葉市に住んでいて親が読売新聞を購読していましたので「第1の広告」は見ていたと思います。この不動産屋さんではないかも知れませんが西船橋を案内所とする広告も見たような気がします。東京の会社が西船橋駅前にテントを張って受付して、旗を持った社員さんに引率されて、バスで連れていくのかなぁと子供ながらに妄想していました。

  4. aoi より:

    毎日、ブログ投稿に動画制作にお疲れ様です。楽待というyoutubeの動画から吉川さんの事を知り、youtubeの吉川さんの投稿動画も全て拝見させていただきました。湯沢マンションの動画第二弾も楽しみにしております。さて、湯沢さんの動画を視聴して、バブル期には家を建てる事が出来ない分譲地や崖地まで取引されている事を初めて知りました。当日は、現物確認をしないで土地の売り買いが盛んだったという事で、これは今でいう仮想通貨みたいなものなんでしょうか?得体の知れない物が盛んに売買されているのは、昭和も令和も変わらないのだと感じました。取材等々毎日多忙かと思いますが、お身体ご自愛の上頑張ってください!これからも更新を楽しみにしております。

  5. 山野渉猟派 より:

    つい昨日から動画で数本観てすっかりハマってしまいました。滑舌も良いし分かりやすく、法的にも論理的にもしっかりした構成で、おまけにユーモアもあり次回以降も期待しています。有り難うございます。

  6. Den より:

    Youtubeのチャンネルでブログの存在も知り、チャンネルもブログも見せていただいております。(佐倉市民です)
    初めてコメントさせていただきます。

    文中に「リンク先の公正取引委員会告示は例によって、「@飾区」と言った意味不明の誤字(以下略)」とありますが、この「@飾区」については思い当たる節があります。
    あくまで想像なのでその点はご容赦頂きたいです。

    「葛飾区」の「葛」の字には「匃」の部分が「匂」になっている略字体がありますが、昭和から平成にかけて、正字でなく略字体の方がコンピュータの文字コードに割り当てられていた時期がありました。
    一方、官報のような公文書には「葛飾区」のような地名を略字体で書くわけにはいかず、仕方がないので、正字をコンピュータに「外字登録」して対応していたのではないでしょうか?
    (この対応は、官報が公示された昭和55年当時ではなく、過去の官報を含めデジタル化しようとした時期、例えば土地登記簿のデジタル化が行われたのと同じ昭和末期~平成初期?頃かもしれません)

    で現在、件の文字コードには(紆余曲折の末)「葛」の正字が割り当てられなおしているわけですが、外字で「葛」の字をデジタル登録していたデータを現在のWeb上などにそのまま表示した場合、当然外字は使えない(正しく表示できない)ので、Web化する際にとりあえず外字の文字コードになっているデータを全て一括で「@」とかに置き換えて表示されているのではないかと思います。
    (Web化事業では個々の外字データを置き換える予算は出なかったのかもしれませんねw)

    「葛」の字の問題は当の葛飾区のサイトにも詳しい経緯が載っているので、ご覧ください。
    https://www.city.katsushika.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/005/533/_res/pdf/katsu_07.pdf

  7. Den より:

    すいません、先ほどの投稿文章で「官報が公示された昭和55年」と書きましたが、「官報が告示された昭和52年」ですね・・・訂正させてください。

  8. Den より:

    Youtubeのチャンネルでブログの存在も知り、チャンネルもブログも見せていただいております。(佐倉市民です)
    初めてコメントさせていただきます。

    文中に「リンク先の公正取引委員会告示は例によって、「@飾区」と言った意味不明の誤字(以下略)」とありますが、この「@飾区」については思い当たる節があります。
    あくまで想像なのでその点はご容赦頂きたいです。

    「葛飾区」の「葛」の字には「匃」の部分が「匂」になっている略字体がありますが、昭和から平成にかけて、正字でなく略字体の方がコンピュータの文字コードに割り当てられていた時期がありました。
    一方、官報のような公文書には「葛飾区」のような地名を略字体で書くわけにはいかず、仕方がないので、正字をコンピュータに「外字登録」して対応していたのではないでしょうか?
    (この対応は、官報が告示された昭和52年当時ではなく、過去の官報を含めデジタル化しようとした時期、例えば土地登記簿のデジタル化が行われたのと同じ昭和末期~平成初期?頃かもしれません)

    で現在、件の文字コードには(紆余曲折の末)「葛」の正字が割り当てられなおしているわけですが、外字で「葛」の字をデジタル登録していたデータを現在のWeb上などにそのまま表示した場合、当然外字は使えない(正しく表示できない)ので、Web化する際にとりあえず外字の文字コードになっているデータを全て一括で「@」とかに置き換えて表示されているのではないかと思います。
    (Web化事業では個々の外字データを置き換える予算は出なかったのかもしれませんねw)

    「葛」の字の問題は当の葛飾区のサイトにも詳しい経緯が載っているので、ご覧ください。
    https://www.city.katsushika.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/005/533/_res/pdf/katsu_07.pdf

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