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 既にTwitterでもお知らせしているのでご存知の方も多いとは思うが、僕は今回、それまで就いていたバス運転手の職を辞して、地元の不動産会社に転職することになった。不動産のブログを書いているとは言え僕自身は不動産業界は未経験であり、特に不動産投資の経験もなく、そもそも学校卒業後、一貫して経歴不問の現場労働で生計を立ててきた僕が、40歳になって全くの異業種に飛び込むというのはなかなかの緊張を強いられるものであるが、それはともかく当ブログは、思い起こせば最初はバス会社への転職を機会に、一時的に手が空いたからという割と気軽な理由で開設したものであった。

 それが3年を経過して、このブログと、ブログの宣伝のためにアカウントを開設したTwitterを通じて様々な出会いや機会を頂くようになり、今回の転職も同様で、自分でも当初は予想もしていなかった方向に展開が進んでいて、嬉しい半面、少し戸惑っている部分もある。

 手前味噌を承知で書けば、自分一人の判断だけでその影響を制御できるものでもなくなり始めている当ブログだが、まだアクセスもまったくなかった初期の記事を改めて読み返してみると、記録に残す意図も、情報を充実させようという気概もなく、また僕自身もまだ分譲地探訪の経験値が乏しく当該地の状況を客観視できていない、早い話がただ少し見てきた印象を書いただけという粗末な記事が散見される(それは今も同じかもしれないが)。

 そこで今回は、自身の職替えを機会に、そんな初期に訪問した分譲地のひとつで、特に情報量の乏しい「北総ニュータウン八街台」を再訪し、訂正というわけではないが、補足情報として改めて紹介したいと考えた。ここは紹介記事の中でも特に情報量の乏しいもののひとつで撮影画像も少なく、かと言ってその立地上、ふらりと立ち寄って現況確認や定点観察できるような場所でもなく、僕自身も紹介後に足を踏み入れる機会がなかったところだ。
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北総ニュータウン八街台。 

 ちなみに「北総ニュータウン八街台」という分譲地名は、3年前の調査時点で出されていた物件広告に記載されていたものである。「旧北総ニュータウン八街台分譲地」という記述だったので、おそらく売主の所有する資料など、何らかの形で当初の分譲名が判明し、広告に掲載していたものと思われる。多くの開発業者が廃業した今となっては、単一の自治会や管理組合が形成されるような住宅団地でもなければ、それ以外になかなか当初の分譲地名を探り当てることは難しくなっている。

(参考記事:「北総ニュータウン八街台」2017年12月5日投稿)
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その名称までが記録に残るほどの規模の分譲地ではないが、販売広告から当初の名称が判明している。

 分譲地の模様や立地は、当初の紹介記事でも軽く触れているが、幹線道路から遠く離れた農道の奥、行き止まりの立地にある。3年前の訪問時には、八街にも店舗があるフランチャイズ系の不動産業者のノボリが立てらてていたが、今回訪問してみると、分譲地内には1軒の真新しい家屋が建てられており、既に住民が暮らしている模様であった。ノボリを掲げていた業者が建築を手掛けたものかはわからないが、今回の訪問時では、分譲地内に業者のノボリは見られなかった。
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2017年の訪問時に撮影した北総ニュータウン八街台の写真。地元不動産会社のノボリが見える。
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以前は更地であった区画に、新築の家屋が1軒建てられていた。

 当時の記事ではあまり疑問を挟んでいる様子はないが、70~80年代と異なり今日では、地元業者は通常、こうした不便な立地にある古いミニ分譲地を積極的に取り扱うことは少ない。そもそも駅や商業地に近い立地と比べて、この手の限界分譲地はどんなに価格を下げても売りにくいことは今や明白であるし、分譲地自体の規格も古くインフラも貧弱なことが多いので、売れ筋の規格住宅を限られた予算内で建築するうえで様々な障壁があるためだ。

 居住者にはそれぞれの好みや事情があるので、この立地に居宅を構えること自体は僕は特に意外にも思わずとやかく言うつもりはないが(特に僕にはその資格はないだろう)、現在の八街の不動産市場においてはこれは珍しいケースである、というのが率直な感想だ。
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古い分譲地は今では人気のない擁壁があったり、立地が悪くインフラ整備が進んでなかったりで、通常は地元業者も積極的に扱わない。

 その他は、一部の区画が、単管パイプの骨組みにビニールシートを巻き付けただけの、近接地評価ダウン系の資材置き場に変わり果てていた他は、新しい家屋もなく特に変わっている様子はない。いくつかの区画は「セイブ地所販売」や「リアル不動産販売」など、厄介な大阪系業者の看板が立てられているが、これも古い写真を見る限り3年前と同じようだ。まあ、年月が経過したと言っても所詮は3年なので、むしろこの立地でそれ以上状況が一変している方が不自然かもしれない。
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新築家屋の他に、ブルーシートが張られた資材置き場と化した区画もある。

 ただ問題は、この分譲地は北側にある谷戸に向かって結構な傾斜地になっており、分譲地の南側は雑木林なので、区画によっては日当たりに難があることだ。北向きのひな壇分譲地においては、立ち並ぶ家屋はことごとく眺望の良い方角に背を向けており、場合によっては壇上にうすら高くそびえる擁壁や隣家に向けて採光部を設けることになる。IMG_20210125_110543
一見すると眺望の開けたひな壇に見えるが、北向きの傾斜地である。

 このような、ひな壇分譲地に対する憧れやメリットを、風水で占うまでもなく現況のみでストレートに否定する北向き傾斜地の分譲地は、この北総ニュータウン八街台を含め、当然ながら求心力が弱く空き地が目立つ。そして未利用区画の多い分譲地が共通して抱える問題が、一部未管理区画の、事実上の放棄である。

 改めてこの北総ニュータウン八街台を歩いてみると、敷地内にフロントガラスが割れた廃車が放置されたプレハブ倉庫以外に家屋のない西側の区画は、排水路のグレーチングもおそらく盗難によって失われ、路上に堆積した土砂にも雑草が繁茂し、ある未管理区画に至っては、2019年に発生した台風15号の暴風によるものと思われる、分譲地南側の杉林の倒木が越境したまま放置されている。

 そして分譲地の奥は、何故か道路が先細りになるような歪な形状をしているのはともかく、もはや越境樹木によって車寄せも困難になり始めている。この分譲地はいくつかの区画が擁壁上にあるが、その擁壁には階段もなければ駐車スペースも設けられていない。
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画面左側のプレハブ倉庫は以前からあるが、今は使われている気配がない。
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グレーチングが盗難されたと思われる排水溝。
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未管理区画の前は雑草が繁茂している。
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台風によるものと思われる杉の倒木が越境したままの未管理区画。この光景を見て取得を決意する者はいない。
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何故か道路が先細りになる外縁部。最奥の区画はもはや車を寄せる気にならない。

 先にも述べたようにこの分譲地は谷戸に面した傾斜地なので、丘陵上から流れ込む雨水を処理するために、分譲地内の所々に複数の調整池が設けられている。ここは「ニュータウン」を名乗るものの、分譲地としては区画数の多くないミニ開発地だが、それにしては調整池のスペックが大袈裟だ。台地上の住宅地は水はけが悪く冠水しやすい所も少なくなく、それに比べればここは安心なのかも知れないが、裏を返せば、それほど多くの雨水処理が必要な地形なのかもしれない。

 ただしこの分譲地は居住中の家屋の数は現時点で10戸に満たないので、調整池に繋ぐ排水路も含め、管理は万全に行き届いているとは言い難く、調整池前の街灯にも蔦が絡みついたままであった。
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分譲地内に複数設けられた調整池。
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調整池までの排水路は土砂が堆積し、機能は損なわれている。
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蔦が絡みついた街灯。調整池のスチール製フェンスも、夏場は猛烈な蔦で覆われることが想像される。

 こうして改めて歩いてみると、やはり3年前の訪問時と同じように、どうしてこの分譲地を、地元業者、それも大手のフランチャイズ系列の会社が、わざわざノボリまで立てて販売していたのかますますわからなくなる。このブログで訪問するミニ分譲地では、草刈り業者の手による売地の看板はどこでも見かけるものの、地元業者のノボリなどまず見かけることはない。よほどこの地を売らねばならない特別な事情があったのだろうか。

 北総ニュータウン八街台は、その規模から言っても、おそらくブログ開設当初でもなければ、逆に関心を払わず見落としてしまっていたかもしれないくらいの典型的な管理不全の分譲地であるが、山武市の山中や九十九里平野では、絶対に見向きもされないようなコンディションの分譲地でも、こうして地元業者が入り、そして実際に住宅の新築が行われているという点も、これも八街の住宅事情の特殊性なのかもしれない。

 近頃俄にその不動産市場に注目が集まっている八街は、どんな僻地の分譲地でもそれなりの数の家屋がある。北総ニュータウン八街台は、八街市内の中では、例外的に家屋の割合が極端に少ない分譲地である。もはや後戻りが出来ないほどまで進んだそのスプロールは、今も僅かに、ゆっくりと進行している。ついつい記事にしやすい新しい分譲地を追い求めてしまいがちな当ブログだが、こうして過去に訪問した分譲地の再訪も時には必要であると感じさせられた訪問であった。
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