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 2019年の8月に、僕は横芝光町に今も残されている海跡湖である「乾草沼(ひぐさぬま)」のど真ん中に開発された謎の分譲地を紹介している(参照「横芝光町宮川 湖沼に囲まれた分譲地」)。それはそのタイトル通り、四方を沼地に囲まれた陸地部分に造成されたまったく意味不明な分譲地で、当然のことながらそんな場所に家を建てて暮らす人などほとんどおらず、僕が訪問した時点で、家屋はわずか1戸残されているのみだったのだが、当該記事を公開してからしばらく後に、読者の方よりコメント欄で、この湖沼の分譲地の空き区画の多くに太陽光パネルが設置されているとの情報を頂いた。

 僕もその後、乾草沼の前を通ることは幾度となくあり、空き地の多くにパネルが設置されている模様は遠目で視認していたのだが、記事の公開時とは大きく現況が異なっている点に言及しないままでいるのも考えものなので、今回、改めて当該の分譲地を訪問してみた。正直言って、既に大半が個人の私有地と化している以上(これについてはよくわからない点もあるが後述する)、今更改めて語るような話もないのだが、一度は紹介したものの、ここはもはや分譲地としての役割をほぼ終えているという事をお伝えするために、改めて簡単に現況を紹介していきたいと思う。
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 太陽光パネル基地に転用されたからと言って、分譲地自体が封鎖されていることはなく、道路そのものは今でも通行可能なのだが、遠目から見ても、2019年の訪問時と異なり、沼の周囲に多くの太陽光パネルが立ち並んでいるのが分かる。雑草が生え放題だった荒れ地や、道路が封鎖されていた放棄分譲地も、既に太陽光パネルが設置されていて稼働している。
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遊休地や放棄分譲地に設置された太陽光パネル。

 フェンスに取り付けられた発電事業者の表示を見ると、そのほとんど全てが同町内在住の個人名の表記であり、保守責任点検者の欄には、太陽光発電投資を謳う東京の業者名が記されている。太陽光発電による売電価格は最盛期と比較して下落しており、一時期のような設置ラッシュは鳴りを潜めていたようだが、近年は再び設置件数が増えているようで、それに伴い、太陽光パネル設置業者と周辺住民の軋轢もまたぞろ話題に上るようになってきた。
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 当ブログは、元々太陽光パネルの設置に対してきわめて批判的なスタンスを取っていた。それは、今も人が住む住宅地の一角に太陽光パネルが設置されることによって、景観を損なうのと同時に、個人的に太陽光発電基地が発するノイズ音が苦手なこともあって、無秩序な設置は住環境を破壊するものとして強く非難していたものである。しかし、実はこの話題は賛否両論がはっきりと分かれるもので、荒れ地のまま放置するのであれば太陽光パネルを設置した方がましではないか、との異論・反論を頂く機会も幾度となくあった。

 確かに、貴重な生態系が残る自然の地を切り拓いてパネルの設置を行うとなれば、それは大きな反発を招くのも致し方ないと思うが、放棄分譲地が護るべき雄大な自然かと言われればそんなはずもなく、むしろ紛れもなく自然破壊の産物である。特に、人の住まない放棄分譲地が太陽光パネル基地に転換されることについては、僕自身も強く批判するような材料を持たず沈黙せざるを得ない。

 低圧の太陽光発電システムの非効率性を断じる方もいるのだが、そのあたりの専門的な話となると、素人の僕が聞きかじりの生半可な知識で語るわけにもいかず、元々太陽光発電の是非について語るブログでもないので、僕はいつしか太陽光パネルについて語るのを避けるようになっていた。

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 周囲をパネルに取り囲まれて、すっかり住宅地としての様相は失われているが(元々そんなものはなかったかもしれないが)、以前の訪問時に見かけた家屋はまだ残っていた。相変わらず居住感のない家だがそれは良いとして、家の周囲に、2区画ほど、大里綜合管理の看板が立っている区画が残されているので、分譲地内のすべての区画がパネル用地として買い上げられた訳でもないようだ。看板はなくとも、今もパネルも設置されず空き地のままになっているところも目立つ。
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大里綜合管理の看板が残る区画。

 という事は、普通に考えると、前記の発電事業者はこの分譲地で、取得に成功した区画を順次パネル基地として利用している事になると思うのだが、果たして本当にそんな非効率極まりない手法で設置用地を取得していたのだろうか。この辺りは適当な区画の登記簿を所得して確認してみないとはっきりしたことは言えないが、まともに正攻法で分譲地の用地を取得していたら、おそらく普通の広大な事業用地を取得するより数百倍も手間が掛かると思うのだが、なぜわざわざ著しく余分な交渉の手間を要する細切れの限界分譲地を選定したのかはわからない。もっとも造成が完了している分譲地であれば、単なる雑木林を買うよりは整地の手間が省けるので、トータルでどちらが費用が掛かるものかは未知数である。

 それにしても、現在の大里綜合管理のサイトを見ても、この分譲地内の売地情報はひとつも掲載されていないが(大里綜合管理の管理物件は膨大な数なので売地情報はごく一部しか掲載されていない)、今も更地として残るここの区画所有者は、既に住宅地としての役目を終えてしまったこの土地を、いったい今後どうするつもりなのだろうか。
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 見渡す限りの更地だったかつての分譲地はすっかり姿を変え、どこを向いても太陽光パネルしかない。ただ先にも述べたが、ここはパネルが設置される前から既に分譲地としての役目はまったく果たしていなかった所なので、放棄地が太陽光基地に変わっただけだ、と言われれば返す言葉がない。それでも心情的には、本当にこれで良いのかという思いを拭う事が出来ない。

 奇妙なことに、奥の方は一部私道が封鎖されていて、私道上にパネルの架台が設置されているところがある。設置者は、ここの私道の共有持ち分をすべて買い上げたのだろうか。私道の共有の状況も登記簿を見てみないと分からないが、正直言って、僕はここの分譲地を、費用を掛けてまで調査する気はもはや失せている。
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封鎖され、架台が設置された私道。共有持ち分の状況はどうなっているかは調べないと分からない。
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 歩いても歩いても、目に入るのはパネルばかりで、分譲地として語るような要素はもはや何もない。分譲地というものは元々私有地なのだから、ここに分譲地が開発された時点で、既に環境保護の可能性は失われていたのだろう。太陽光パネルを撤去して元の放棄分譲地に戻せなどという主張に、何の正当性も合理性もないことは僕でもわかる。

 しかしだ、この乾草沼は、以前の記事でも言及したが、本来は貴重な動植物の姿が見られる、後世に残すべきビオトープであったはずなのだ。であるとしたら、確かに過ちとして分譲地として開発されてしまっていた経緯があったとしても、それはそのまま再利用することなく原野に戻すのが最適解だったのではないかと、今、変わり果てた旧分譲地の姿を目にして思う。沼の中には小さな島があり、そこに渡る歩道も存在したのだが、その歩道に至る土地もパネル基地となり、今は整備されることもなく放置されている。乾草沼は、保護すべき地域の環境資源となる道を、ついに閉ざされてしまったようだ。
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太陽光パネル基地と化した湖沼の分譲地跡へのアクセス


横芝光町宮川
・銚子連絡道路横芝光インターより車で5分