当ブログについて

お知らせ

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 数日前に、YouTubeの「不動産投資の楽待」チャンネルに出演した際の動画が公開されてから、当ブログは過去に例のないほどのアクセスを頂いていました。当初は僕もその反響を喜び、動画の再生回数やコメント欄を頻繁に確認したのですが、再生回数はともかくそのコメントの内容を見るにつけ、次第に失望の方が大きくなり、動画の影響でアクセスが増えることへの拒絶反応が起きていました。ここしばらく、ブログ記事を非公開としていたのはその理由によるものです。

 のちにTwitterのフォロワーさんよりご指摘を頂いてコメント欄を確認したところ、動画の内容とも無関係な、ほとんど人身攻撃としか言いようのないコメントに限っては、楽待側で削除している模様で現在は無くなっているのですが、正直なところ、書かれていたコメントを見る限り、そもそも僕がこのようなブログを続けてきた意図そのものがあまり正確に伝わっていないことが多いように見受けられました。

 もちろん、読み手の解釈は自由であり、それは書き手が一方的に押し付けられるものではなく、意に沿わない感想を持たれたからと言って一方的に情報を遮断することはあまりに尊大に過ぎる話なのですが、考えてみればそれ以前の話として、僕はこのブログの開設当初から唐突に限界分譲地の紹介を始めており、そもそも開設したきっかけなどをお伝えする機会がこれまでほとんどありませんでした。ですので、おそらく初めて当ブログを読まれる方も少なくないであろうこの機会に、改めてそのあたりの話を簡単にさせていただければと思います。

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 まず、おそらくこれは過去に紹介した分譲地の記事をお読みいただいていた方であれば薄々分かっていたことだとは思いますが、はっきり言って当ブログで紹介している分譲地の多くは、今となっては経済的に裕福な人たちが住まいとして選ぶような地域ではありません。一部、地価の安さを逆手に取って豪奢な住宅を建築したり、あるいは別荘として取得されて使われている住宅もあるのですが、それは例外的な存在であり、多くの住民は、90年代以前にはこのような立地の分譲地の取得が所得面で限界であった人、または地価や賃料の安さを理由に暮らしている人が大半だと思います。

 限界分譲地の各戸の所得や資産状況について統計を取ったわけではなく、あくまで見ただけの印象による推測に過ぎませんが、家並みや敷地内の状況、保有している自家用車の種類や状態などを見れば、これは誰でも容易に推察できるものです。今、北総の僻地にある寂れた分譲地を見て、そこが高級住宅地であるとの印象を受ける方は皆無だと思います。動画内でも簡単に言及していますが、丁寧な管理をしていない家と言うのは、単に空き家と言うだけではなく、家屋の維持管理にお金を掛けられていない住宅が目立つ、という意味なのです。

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 もちろんそれは、単に経済的な困窮が理由なのではなく、年齢や持病の問題で思うように手入れが回らないという事情もあると思います。いずれにせよ、一見しただけで荒んだ印象を持つ分譲地が数多く存在します。しかし、それでも当ブログで紹介している分譲地の多くは、今でも現役の住宅地として使用され、そして土地にせよ中古住宅にせよ、価格はともかく、今でも地元の不動産業者によって商品として普通に取り扱われているものです。

 僕は、この点こそ北総の限界分譲地が抱える問題点であると考えています。動画のコメント欄でも散見されますし、しばしば頂く感想として、現在は人口減の時代で都心回帰が進むのだから、放っておけば衰退してやがて自然に還るので対策は必要ない、というものがあります。確かに我が国においては、空き家問題という言葉が取り沙汰される近年よりずっと前、それこそ高度成長期の時代から、災害や産業構造の変化とともに居住に適さなくなった集落は、家屋や家財道具を撤去することもなくそのまま放置され、長い年月を経て朽ち果て、自然に吞み込まれていくのが通例でした。住民の能動的な集団離村という形で集落が解散した事例もありますが、近年の消滅集落は、人口の自然減に伴う集落の放棄というケースが特に多いと思われます。

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 しかし、こうした消滅集落の事例を、当ブログで紹介する限界分譲地、限界ニュータウンに当てはめて同様の結果を期待するのは、以下の点においてかなり無理のある話であると考えています。まず多くの北総の限界分譲地は、採鉱や林業の衰退とともに姿を消した遠い山村の消滅集落と異なり、自然消滅を期待するには大都市圏や人口密集地から近すぎるという事、そして地域の公共交通網の現状や住民の就業構造などを考えても、住民の公共交通への依存度や期待値が低く都市部のような公共交通機関の利用を前提とした居住地の集約化は望めないという事、そして現在でも地元の不動産市場で流通している以上、最安値の価格帯の不動産商品として一定の需要があり、仮にもその取得に強い規制を掛けることは地域の住宅市場に大きな混乱をもたらす恐れがあるという事です。

 また、分譲地という性質上、再び農地やその他の事業用地として転用を図るにしても、いずれにせよ細分化し散逸しつつある所有者情報の集約が必要となり、すぐ隣でそんな手間暇をかける必要がない広大な敷地の事業用地が普通に売買されている現状では、そのような転用の可能性も絶望的であると言えます。

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 こうした中、多くの限界分譲地の家屋が、安価に放出されたり、有態に言えば「下層」の賃貸物件として再供給され、今後も利用されていくという現状がある以上、おそらく不適切な管理状態の家屋や空き地が増えていくであろうことが予測される住宅地の利用方法や、それによって当然発生するであろう様々な問題点を、同じくこのような地価の安い分譲地にしか住まいを求められない僕たちの視点を通じて、目に余る事例をケーススタディとして発信し、その課題を共有しようと考えたのが、そもそものブログ開設のきっかけでした。

 ですので当初は、それこそこのブログがYouTubeで紹介されることなど夢にも考えておらず、極めてローカルな情報ブログを想定していたものです。これまで文筆業の経験など一切なく、またそれを目指したこともなかった僕がそんなものを作ろうと考えるほど、北総の限界分譲地を含めた不動産市場に関する情報は限られていました。

 ただ、それをそのまま問題点の羅列という形で書いたのでは、非常に退屈なものになってしまい読んでいて苦痛ですし、何より僕自身も書き続けられるようなものではないので、自分もそのような分譲地に住む住民の一人として、いわば少し自虐の意味も込めて、読み物として読めるように軽口を混ぜていました。地価が安いだけで、お世辞にも恵まれた住環境とは言えない限界分譲地の問題点を、自虐的に笑い飛ばしつつも、ちゃっかりと使えるところは使っていく強かなライフスタイルを提案したかったのです。

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 そんな僕でも、今残されている多くの限界分譲地のすべてを、今後も住宅地として適切に維持していくべきだと考えているわけではありません。今でこそ、安価な投資先としてにわかに注目を浴びている北総の不動産市場ですが、今日の人口動態を考えれば全ての維持など土台無理な話です。ただ、すべての維持は無理だとしても、取捨選択はできるのではないかとは思いました。どうにも使いようもない荒廃した分譲地に関しては、細分化された所有権の整理はまた別の話として、現状では放置以外に取れる手段はないのですが、一方で、従来はなかった発想で新たな利用方法が生まれれば、利便性の枠組みだけで測ることのできない、万人向けでなくても独自の付加価値を備えた住宅地としての再生もありうるのではとの期待があったのです。

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 ただそこまで提案するには、都市設計など学んだこともない僕ではあまりに力不足に過ぎる。僕が出来ることは、とりあえず身近にある限界分譲地の現状を伝えていくことのみだと考えて、それで今日までブログを運営してきたものです。読者の皆さんが、僕のこの思惑にすべて共鳴する必要はないと思いますが、これはそういうひねくれた意図のもとに続けてきたブログだという事はご理解いただけると幸いです。自分語りの混じったうっとうしい記事になりましたが、記事公開の再開に当たって、こんな話はあまり語る機会もないと思うので少し思いを吐露させていただきました。突然の非公開でご迷惑をおかけいたしました。今後とも当ブログをよろしくお願いいたします。

コメント

  1. きりん より:

    突然のことでびっくりし心配をしてました
    不特定多数の方を相手にするわけですからいろいろありますよね
    SNSの書き込みがきっかけになり嫌な思いをされる方はたくさんおられると思います
    今後も記事を楽しみにしています

  2. 煮豆 より:

    以前より興味深くブログを拝見しています。
    北総地域でマイホーム購入のため土地探しをはじめた矢先にこちらのブログに辿り着きまして、一般的な不動産会社からは得られない情報を知ることができ、不動産売買初心者ながら、見る目を養いつつ土地探しができとてもありがたく思っています。
    Youtubeご出演は視聴数の多さから様々な反響があったようですが、純粋にお人柄が知れてうれしい一面もありました。
    直近八街で起きた自動車事故と非線引き区域を絡めるYahoo記事を目にしましたが、吉川さんのブログを読んでいたからこそ理解できる内容でした。
    ご無理のない範囲で、今後も発信いただけるとうれしく思います。

  3. 匿名 より:

    いつもラインで新着通知もらいますが一覧更新されたので何かあったのではと心配になりました。 興味深いので今後も楽しみにしてます。良し悪し悩みますが、行動範囲内なので気になって見に行ってしまいます。

  4. 通勤特急 より:

    このブログの内容は学術的な価値が有ります!日本地理学会のホームページの後にこのブログを拝見しました!素晴らしいです!今後も楽しみにして居ります!私もバブル期の不動産広告集めていました!宜しくお願いします!

  5. 北総住民 より:

    初めてコメントさせて頂きます。
    私自身不動産に携わる仕事をしており、いつも興味深く記事を読ませて頂いておりました。
    様々大変なことあろうかと思いますが、貴ブログは非常に価値のある内容を発信頂いていると思います。
    非公開になった時にはとても心配しましたが、ご無理なさらずに、また更新されること楽しみにしております。

  6. ちるみ より:

    吉川さんこんにちは。
    吉川さんの記事が楽待YouTubeチャンネルに取り上げられて良かったな〜と単純に思っていたのですが、一部の楽待読者に辛い反撃を受けていたとは・・・
    チャンネル再生回数が今34万回で他の記事に比べて遥かに多いのは皆さん感心が有る記事だからです。
    ボロ家再生大家さんは多いですし、楽待での物件は半数以上が関西の物件ですから、こっちも沢山限界集落あるよ〜
    って思っている方も多いと思います。
    毎回興味深い記事ですので、今まで通りブログ書き続けて下さいね!

  7. A より:

    素晴らしいです。
    動画拝見しました。限界ニュータウンだから住み手なし需要なしあとは朽ちるのを待つのみであると邪推しておりました。
    限界ニュータウンたらしめるのは、環境だけでなく、当初の分譲地の開発販売業者、現在の大阪の委託販売業者が不適切なビジネス手法による弊害も要因であったとは勉強になりました。
    現在の感染症に起因する経済不況を鑑みると、わざわざ都会に密集するのではなく、こう言った限界ニュータウンの中から再利用可能なモノを工夫さえすれば、十分活用できるのではないかと思います。
    どうか負けないで。

  8. リフォーム屋 より:

    突然の閉鎖?
    何かあったのか?と心配してました。
    初回記事からの 当ブログファンとしては
    理由が 分かって ほっとしました。
    個人のブログにも 色々 批判的な意見言って来る人 そんなに居るんですか?
    世知辛い世の中ですね…
    確かに 考えてみると
    限界分譲地に 良く見る 古家再生業の人達からは 扱ってるエリアの事を
    あまり リアルに知らしめられるのは
    マイナスなのかも知れないですね^_^;
    自分にとっては 一番楽しみな 読み物です!
    これからも 更新されて行くことを
    期待しております。
    無理の無い範囲で 活動を!!
    エールを送ります。

  9. SU-100 より:

    動画を拝見しました。視聴者が不特定多数であることから辛辣な書き込みで心を
    痛められたこと心中お察し致します。これにめげずにブログの継続をぜひお願い致します。限界分譲地の問題は高度経済成長期の土地神話の負の遺産であり、その情報を発信し続けることは大変有意義なことだと思います。

  10. 吉川祐介 より:

    >>きりんさん
    コメントありがとうございます。ご心配をおかけしました。
    これまで記事を書いたりすることはあっても、自分が表に出てあれこれするという機会はなかったので、この手の問題にあまり耐性がなかったゆえのことでした。今後ともよろしくお願いいたします。

  11. 吉川祐介 より:

    >>煮豆さん
    コメントありがとうございます。このブログは元々煮豆さんのように、あくまでこのエリアで家探し、土地探しを行う人、実際に土地を使っている人に向けて書いているものなので、そう仰っていただけるとありがたいです。YouTubeで広く発信するような題材ではなかったと今は考えております。今後ともよろしくお願いいたします。

  12. 吉川祐介 より:

    >>匿名さん
    コメントありがとうございます。確かに規模の小さい分譲地などは、僕も足を踏み入れて良い物か少し悩むときはあります。実際に住民の方に、何をしているのかと声を掛けられることは結構ありますが、僕はその時は毎回「土地を見に来ました」と答えるようにしています。嘘ではないですし…

  13. 吉川祐介 より:

    >>通勤特急さん
    コメントありがとうございます。そんな、僕は学校で都市設計などを学んだ経験は一切なく単なる素人の見解ですから、学術的なんて恐れ多いのですが、個人的に興味深いテーマなので今後とも調べて行こうと考えております。よろしくお願いいたします。

  14. 吉川祐介 より:

    >>北総住民さん
    コメントありがとうございます。
    ちょっとここのところ忙しい用事が続いていた矢先のことだったのでうんざりしてしまったという面もあります。少し更新頻度は落とすかもしれませんが、今後ともよろしくお願いいたします。

  15. 吉川祐介 より:

    >>ちるみさん
    コメントありがとうございます。誹謗中傷みたいなコメントも確かにありましたが、それより嫌だったのは、ろくに現地の事情も知らないのに、こんな土地は価値がないから自然に還せばよい、と訳知り顔で語るコメントでした。不動産投資家の方が見て面白いテーマなのかどうかは最初から疑問でしたが、この話題に関しては、今まで通りブログで細々と発信していこうと改めて再確認することになった経験でした。今後ともよろしくお願いいたします。

  16. 吉川祐介 より:

    >>リフォーム屋さん
    コメントありがとうございます。
    このブログに、直接的に批判的なコメントが寄せられることは多くはないのですが、正直言って、YouTubeのコメント欄を見た限りでは、こういう感想を持つのであればブログを読んでもらう必要はないかな、と思わせられるものが多かったです。大きな反響を得られるのもいいかもしれませんが、別にそこまでする必要はないかな、というのが今の正直な気持ちです。今後ともよろしくお願いいたします。

  17. 吉川祐介 より:

    >>Aさん
    コメントありがとうございます。本文にもある通り、単に自然減でやがて無住になるのが分かり切っているような地域でしたら、僕もここまで色々調べて書かないと思います。でもむしろ多くの限界分譲地は、周辺の農村部と比較しても住民の入れ替わりが多い地域で、それが管理不全の要因の一つになっていると思われるほどです。ですので、まだ現役の住宅地として追究すべき課題はたくさんあると考えております。

  18. 吉川祐介 より:

    >>SU-100さん
    コメントありがとうございます。お声を掛けていただいて、良い機会だと思って出演してみましたが、テーマ的に、YouTubeなどで広く発信する必要のない題材だったかなと思いました。単に、街歩きや廃墟巡りとして限界ニュータウンの動画が見たいのなら、他の人の動画がありますし、このテーマは、僕はブログで書いているのが一番だと再確認する経験となりました。今後ともよろしくお願いいたします。

  19. いつも見てます より:

    動画拝見しました。ブログの内容から引きこもり的な風貌を想像していましたが裏切られました(笑)。ハキハキしていて精力的な感じで、仕事いくらでもできそうな元気な方でした。動画の内容も非常にまともなことをおっしゃっていて問題ないと思ったのですが、世の中何言っても気に入らない人が必ずいますからね。吉川さんみたいに実名を出すわけでもなく、気軽に悪口を言うのは良くないことだと思います。私も風評気にしてしまう質なので吉川さんが落ち込んでしまったことはわかります。どうか気になさらず無理のない範囲でブログ続けてください。でも、動画面白かったなぁ。ご自身で動画やられたらどうですか?滑舌が良くて聞き取りやすかったですよ。しゃべりもスムーズで聞いていて引っかかるところがなく好感が持てました。そのうち夕方のニュースショーから依頼くると思いますよ。あいつらが吉川さんをほったらかしにするとは思えません

  20. 吉川祐介 より:

    >>いつも見てます さん
    コメントありがとうございます。仕事は全然出来るタイプではないですが、性格的には引きこもりとは真逆かなと思います(笑) とにかく部屋の中にいるのが苦手なんです。多分そういう資質が分譲地調査に駆り立ててるのかなと自分では思ってます。
    ただ正直、自分で動画を作る予定はないですね…。まずスキルも機材もありませんし、今回の動画は企画はあくまで楽待さんが立案したもので、僕は自分で企画を立てるとなると、この題材は動画向きではないと思います。テレビも、今のところそんな依頼が来る気配もないですが、正直出演するメリットがないので、お断りすると思います。ご期待に添えずごめんなさい。

  21. 森豊 より:

    ”これだ” ”こんなテーマを取り上げて欲しい” そんな印象です。 とても良いテーマだと感じ入りました。これからも続けて下さい。 

  22. つぼぼん より:

    youtubeからやってきました!
    ブログも面白いですね!
    登記簿から先の取材にいつも引き込まれます。
    バブル当時の状況や心情を汲んでお話されていて、マイホーム取得に邁進したバブル世代の親を持つ身として、心地よいです。
    みんながむしゃらに頑張って、希望に向かって走っていた時代なのだと思います。
    上から目線じゃなくて、同じ目線に立って語ってくださるから、中身がスーッと入ってきます。
    朝のラッシュに耐えかねて、わたし自身は地方都市に移住する選択をしました。限界ニュータウンに敢えて住む、という選択は思いつかなかったのが今となっては不思議です。
    本が届くのを楽しみにしてます。

    • 吉川祐介 吉川祐介 より:

      コメントありがとうございます! 返信遅くなり失礼いたしました。

      ここのところYouTubeの方に注力していて、こちらのブログが開店休業状態で申し訳ないのですが、本分はあくまでこのブログであるとの意識は変わらないので、また時間を見つけて更新したいと考えています。
      今後ともよろしくお願いいたします。

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