【追記】2023年1月現在は、当分譲地は周辺の雑木林の伐採が進み景観が大きく異なっています。
山武市は北総地域の中でも、小規模なミニ分譲地が乱立する自治体の一つである。旧山武町時代に、森や雑木林を切り開き、あるいは田んぼや沼を埋め立てて多くのミニ住宅地が造成されてきた。さすがに都心からこれほど遠い地域となると、大手の開発業者による大規模な住宅団地の対象地とはならず、資本力も乏しい中小業者による、開発許可の不要な、貧弱な小規模分譲ばかり繰り返されてきた。団地名もなく、ニュータウンとも呼べないミニ分譲地のデパート。その中には、はっきり言って居住性など全く度外視され、ただただ分譲のみを目的として開発され、また買い手も端からそこに住む意思などなく、ただ値上がり後の転売のみを目論んで投資目的で購入し、あいにくそのまま次の買い手が見つからず今日に至っているような宅地が相当数ある。
まともな分譲地であれば、少しでも買い手の歓心を買うために日当たりを考慮したり、団地内に緑地や公園などを配備して居住性を高めるものだが、八街や山武でバブル時代に跋扈した業者にはそんな発想は全くない。二束三文で買い叩いた畑や山林を、ただただ細かく切り刻んで分譲するのみ。それでも地図上に適当に線を引いて山林を売りさばいていた原野商法と比較すれば、実際に重機を入れて宅地造成していただけまだまともではあるが、そのお陰で、エベネザー・ハワードが見たら怒りのあまり泡を吹いて卒倒しそうなスプロールが際限なく広がり、理想の都市計画は霧散し、自治体は今もその負の遺産に苦しめられている。そんな当時の乱暴且つ無茶苦茶な住宅開発の名残を今に伝える分譲地が、ここ山武市埴谷の林の中に現存するので紹介したい。
奥に進むと数戸の住宅が見えてくるが、写真で見てもお分かりの通り本日は雲一つない快晴にもかかわらずほとんど日が当たらない。画像で見ている限りは、男心をくすぐる要素もなくはなく、隠れ家チックでこれはこれでアリかも、などと思われるかもしれないが、実際のところ雑木林に隣接した土地は風通しが悪いため(風通しが良ければ良いでこの辺りは砂埃がひどいが)夏場は湿気がひどく虫も多く発生し、また落ち葉や苔によって屋根が汚れるだけでなく雨樋もあっという間に詰まってしまう。カビも発生しやすいし、家屋の傷みも早い。宅地としては全くお勧めできないと言う以前に、林業関係者でもあるまいし、そもそもどうしてこんなところに家を建てた、と首をかしげざるを得ない場所である。
しかも山武は古くから、山武杉で名高い杉木の名産地と言うことで、よく見れば生えている木はほとんど杉だ。スギ花粉の方にはたまったものではなかろう。
(2019年9月追記:執筆時点では知らなかったのだが、山武杉は花粉の少ない品種として知られるらしい)
こんな土地を投機目的で購入した方は、いくら地価狂乱の時代とはいえ、果たして本気でこんな宅地が値上がりすると思っていたのだろうか。ここしかない、と言うのならまだしも、周囲には他に、充分に日照が確保される、もう少しマシな宅地がいくらでもあるのである。おおかた業者に地図や公図だけ見せられて、ロクに現地確認もしないまま購入したパターンだろう。
土地選びは慎重に、などと言う言葉も空しく木霊しそうな限界住宅地。ちなみに最後の画像の通りこの雑木林の北側にも、未舗装の分譲地が伸びているが、南側に雑木林が迫った住宅は陰鬱で、何とも言えぬ雰囲気を醸し出している。
雑木林の宅地へのアクセス
山武市埴谷
- 圏央道山武成東インターより車で10分
- 総武本線八街駅・成東駅よりちばフラワーバス八街線 「外野」バス停下車 徒歩11分
- 総武本線日向駅より山武市基幹バス 「山武中学校」バス停下車 徒歩10分
コメント
今更ですが、アイコン可愛いですね(挨拶)
この場所の雰囲気は好みなので、お金持ちの趣味人なら冬の間だけ住む別荘地的な使い方というのもアリかなと思えなくもないような……
周りに畑があると家からの景色など解放感があって良さそうなのですが、逆に風で土埃が飛んできてしまうのが難点なんでしょうね。
川沿いや田んぼだと今度は蚊が多そうですし、やはり周りは住宅が無難なのかも知れませんね。
家と家の敷地の間が家一軒分は離れていて、なおかつアスファルトで舗装されてるようなのが快適なんでしょうね。
家同士がギチギチに並んでるのは窮屈ですしね。
ありがとうございます! ここは、この人気のない雰囲気にひかれて、これまでに何度も読者の方やTwitterのフォロワーさんが見学に行ったとのお話を聞いているんです。多くの方の好みを聞いていると、やっぱり、下手に隙間なく家が立ち並んでいるよりは、スカスカで密度が少ないところを好まれる方が多い印象ですね。もっとも、そうでなければ限界分譲地を選ぶメリットなどないのですが……。僕もすっかりこの環境に慣れてしまっているので、窮屈なところには戻れそうにありません。不便なので、年を取ったらきつくなるのはわかってはいるのですが。
1枚目、2枚目の写真。こういうところに看板を取り付けに行った記憶があります。もう30年以上前の話でどんな内容の看板だったかは詳しく覚えていませんが、売り家だったと思います。当時はまだ新築の雰囲気がありましたがこの写真を見るとやはり経年劣化の感はぬぐえませんね。
この杉の前後に数件並ぶ感じなどは古い記憶の中にある風景そのものです。というか実はこういう風景が無いか?と思い八街の山武ところを見ていました。私が行ったところは冨里かもしれませんが、この辺はこういう風景ばかりです。ピーナツ畑の淵に未舗装ジャリ道路。僻地の意味不明な家々。当時から何でこんなところに家があって新しい感じなのに売り家なんだろう?と思っていました。取り付けた看板が個人依頼だったか不動産依頼だったか忘れましたが2-3の看板(60cmX90cm)を白い柵に取り付けたような気がします。その時に応対した人は65歳くらいの老人で不動産屋には見えなかったですが。地主になって所有したものの売りたくなったのでしょうか?当時は1992年くらいなのでバブルの只中だったと思いますがこんなところの物件が売れるのか?と思ったものです。