山武市埴谷 雑木林の分譲地 (12)
 山武市は北総地域の中でも、小規模なミニ分譲地が乱立する自治体の一つである。旧山武町時代に、森や雑木林を切り開き、あるいは田んぼや沼を埋め立てて多くのミニ住宅地が造成されてきた。さすがに都心からこれほど遠い地域となると、大手の開発業者による大規模な住宅団地の対象地とはならず、資本力も乏しい中小業者による、開発許可の不要な、貧弱な小規模分譲ばかり繰り返されてきた。団地名もなく、ニュータウンとも呼べないミニ分譲地のデパート。その中には、はっきり言って居住性など全く度外視され、ただただ分譲のみを目的として開発され、また買い手も端からそこに住む意思などなく、ただ値上がり後の転売のみを目論んで投資目的で購入し、あいにくそのまま次の買い手が見つからず今日に至っているような宅地が相当数ある。
山武市埴谷 雑木林の分譲地 (1)
 まともな分譲地であれば、少しでも買い手の歓心を買うために日当たりを考慮したり、団地内に緑地や公園などを配備して居住性を高めるものだが、八街や山武でバブル時代に跋扈した業者にはそんな発想は全くない。二束三文で買い叩いた畑や山林を、ただただ細かく切り刻んで分譲するのみ。それでも地図上に適当に線を引いて山林を売りさばいていた原野商法と比較すれば、実際に重機を入れて宅地造成していただけまだまともではあるが、そのお陰で、エベネザー・ハワードが見たら怒りのあまり泡を吹いて卒倒しそうなスプロールが際限なく広がり、理想の都市計画は霧散し、自治体は今もその負の遺産に苦しめられている。そんな当時の乱暴且つ無茶苦茶な住宅開発の名残を今に伝える分譲地が、ここ山武市埴谷の林の中に現存するので紹介したい。
山武市埴谷 雑木林の分譲地 (2)
 こちらがその分譲地の入口。雑木林の内部を一直線に細長く切り開き、10区画ほどの宅地が造成されている。南北の木は切り倒されずそのままで、内部は日中でも薄暗い。
山武市埴谷 雑木林の分譲地 (3)
山武市埴谷 雑木林の分譲地 (4)
 奥に進むと数戸の住宅が見えてくるが、写真で見てもお分かりの通り本日は雲一つない快晴にもかかわらずほとんど日が当たらない。画像で見ている限りは、男心をくすぐる要素もなくはなく、隠れ家チックでこれはこれでアリかも、などと思われるかもしれないが、実際のところ雑木林に隣接した土地は風通しが悪いため(風通しが良ければ良いでこの辺りは砂埃がひどいが)夏場は湿気がひどく虫も多く発生し、また落ち葉や苔によって屋根が汚れるだけでなく雨樋もあっという間に詰まってしまう。カビも発生しやすいし、家屋の傷みも早い。宅地としては全くお勧めできないと言う以前に、林業関係者でもあるまいし、そもそもどうしてこんなところに家を建てた、と首をかしげざるを得ない場所である。
山武市埴谷 雑木林の分譲地 (7)
山武市埴谷 雑木林の分譲地 (5)
 しかも山武は古くから、山武杉で名高い杉木の名産地と言うことで、よく見れば生えている木はほとんど杉だ。スギ花粉の方にはたまったものではなかろう。
(2019年9月追記:執筆時点では知らなかったのだが、山武杉は花粉の少ない品種として知られるらしい)
 
 こんな土地を投機目的で購入した方は、いくら地価狂乱の時代とはいえ、果たして本気でこんな宅地が値上がりすると思っていたのだろうか。ここしかない、と言うのならまだしも、周囲には他に、充分に日照が確保される、もう少しマシな宅地がいくらでもあるのである。おおかた業者に地図や公図だけ見せられて、ロクに現地確認もしないまま購入したパターンだろう。
山武市埴谷 雑木林の分譲地 (8)
山武市埴谷 雑木林の分譲地 (10)
 土地選びは慎重に、などと言う言葉も空しく木霊しそうな限界住宅地。ちなみに最後の画像の通りこの雑木林の北側にも、未舗装の分譲地が伸びているが、南側に雑木林が迫った住宅は陰鬱で、何とも言えぬ雰囲気を醸し出している。


 雑木林の宅地へのアクセス 
山武市埴谷
・圏央道山武成東インターより車で10分
・総武本線八街駅・成東駅よりちばフラワーバス八街線 「外野」バス停下車 徒歩11分
・総武本線日向駅より山武市基幹バス 「山武中学校」バス停下車 徒歩10分