少し前に、僕は自分のTwitterで、近隣に太陽光パネルが設置されてしまった分譲地の写真をいくつかアップしたら、予想もしなかった反応を頂いた。分譲地内の空地に太陽光パネルが設置されている光景は北総ではごくありふれたもので、その無神経極まりない設置ぶりは当ブログでもこれまでいくつか紹介してきたものの、僕としては、こんなもんの近くには住みたくないなと妻とよく話している程度で、それほど問題意識を持っていたわけでもないのだが、僕が考える以上に、はるかに深刻にこの問題をとらえている方も大勢いて、中にはこの問題を提起するために作られたアカウントもあり驚かされた。
地価が安く売地が豊富にあるがゆえに、それまで何の変哲もなかった限界分譲地が、ある日を境に太陽光パネルによってその住環境が破壊されてしまった例は枚挙に暇がないが、僕の家の近所にも、人道に反するようなパネル設置をされてしまっている分譲地が一つある。その存在は以前から知っていたものの、環境問題を訴えるブログではないのでこれまで記事にはしてこなかったが、北総の分譲地の抱える問題の一例として、今回取り上げてみることにしたい。
山武市の板中新田にあるその太陽光パネルは、グーグルマップの航空写真でも、パネルの反射光が発生していることが確認できるのだが、そのすぐ南側に分譲地が展開されている。太陽光パネルは通常、南向きに傾斜して設置されるものなので、これではパネルの反射光がダイレクトに分譲地に注いでしまうのではないか。ストリートビューでもその光景は確認できるのだが、僕の自宅から車で10分程度の位置なので、その光景をカメラに収めてきた。
分譲地自体は、山武のどこでも見られる、空き地や未管理宅地の目立つ典型的な限界ミニ分譲地であるのだが、分譲地背後の小高い丘陵上の斜面にパネルが設置されているため、分譲地内のどこからでもその太陽光パネルが目に入る。あいにく訪問時は曇天であったため反射光は確認できなかったが、反射光がなくとも、何ともうっとうしい光景だ。板中新田は旧山武町の中でも八街の市街地から遠く、居住者は多くない。田舎であることが唯一のメリットであるこの分譲地で、こんなパネルが背後にそびえ立っていたら、いかに坪単価が1万円程度の山武の分譲地であれ、もはや新たな居住者が流入する可能性は限りなく低くなるだろう。
それにしても太陽光パネルの並び方が遠目に見ても異様なので、分譲地内に入ってパネルに近づいてみると、あろうことか、このパネルは、これほどの急峻な傾斜地であるにもかかわらず、斜面は土留めすらされておらず、建築現場の足場に使うような単管パイプのみで設置されている。反射光云々以前に、これは危険ではないのか。この辺りの土壌は、春先になると猛烈な砂埃が舞うことでもお分かりの通り、目の細かい砂地だ。地震や豪雨などで地盤が緩んだら、パネルもろとも崩落する危険性もあるのではないか。
そもそも千葉県にはがけ条例というものがあり、2m以上の傾斜地においては、たとえ擁壁が構築されていようとも、その擁壁が建築基準法の定める基準を満たしていなければ「がけ地」として扱われ通常の住宅建設は認められていない。それが限界分譲地に置ける土地利用の足枷となっているのはこれまでも指摘してきたが、おそらくこの分譲地も、パネルが設置された斜面に近接した区画は、今日では通常の建築許可が下りない可能性が高い。その一方で、その斜面そのものに、こんな場当たり的な設置工事で、いつ崩落してくるかもわからないような太陽光パネルが設置されてしまったら元も子もないというか、まるっきり矛盾しているではないか。
地価の安い北総は、今日残存する限界分譲地自体も投機目的で開発されたものがほとんどだが、その後も、バブル期の建売住宅建築ラッシュ、アパート建設ラッシュ、そして近年のサブリースアパートの増殖、更にはこのような太陽光パネル事業など、常にその時代の流行とも言える投機事業の実験台にされてきた。このような無神経なパネル設置を行う事業者が、これまで北総に投資して市場に散って行った多くの先見性のない投資家同様、時代の変遷とともに取り残され、終わりなき固定資産税の支払いに追われ続ける泥沼のループに陥ることを願わずにはいられない。
太陽光パネルの設置にさらされる分譲地へのアクセス
山武市板中新田
- 圏央道山武成東インターより車で15分
※板中新田へアクセスする公共の路線バスはありません。
コメント
大変興味深い記事で、他の記事も含めてついつい読みふけってしまいました。
有難うございます。太陽電池パネルは、補助金が出ている事もあり、空地利用で凄い勢いで設置されていますね。 八ヶ岳山麓でも、北杜市などでは、大量に設置され景観を悪くしております。
崖地や、単管パイプの脆弱な構造物。 なぜ可能かと言えば、建築基準法の適用外だからです。
2010年に民主党時代に「行政刷新会議」という機関が内閣府に置かれ、その中にリーンイノベーションWGがあり、ここで建築基準法の適用外が決められました。 要するに、クリーンエネルギーだから、規制緩和してドンドン設置しようという事で、補助金大量投入も決まりました。
でも補助金は税金ですし、電力会社の買い取りも利用者に転嫁されています。
それから8年たって、九州電力では夏場は買い取りを拒否。 補助金もこれから激減します。
今まで空地活用として進んできましたが、採算が厳しくなりミニ事業者は倒産、放置されるものが、更に増えてくると思います。
空き家や雑草は、まだ処分可能ですが、ソーラパネルは一般産廃ではないので、廃棄費用が膨大にかかります。これからは更に負の遺産になる可能性大です。
山武市湯坂ニュータウンも分譲地で太陽光パネル
>>みなしごさん
コメントありがとうございます。湯坂ニュータウンですね。調べてみます。ありがとうございます。
はじめまして。最近貴ブログを発見し、過去の記事から順番に遡って読んでおります。
個人的には、こうなるのは致し方ないと思います。地主としては、負債をこういう形で処分できてよかったのではないでしょうか。
私も義父がバブル時代に、うっかり横芝光町の、何にも使えないようなゴミのような限界分譲地を買ってしまっていて今その処分方法に困っております。
そんな中、太陽光パネルをつければ草刈り代や固定資産税の負担より多い収益が出るかもしれないとなれば、地主の立場からすればパネルを設置しようと当然思うものではないでしょうか。
私も検討したことがあるのですが、不幸にも(?)南側に住居があり、かつ平地だったので昼には影がかかってしまい、パネルの設置を諦めた経緯があります。