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 これまで当ブログでは、数回にわたって、茨城県の旧大洋村(現・鉾田市)に残る旧別荘地を紹介してきた。それはほとんど偶然とも言っていい巡り合わせから、特に地縁もない茨城県の片田舎が、一躍当ブログの主要な探索地となったわけだが、調査に赴き記事を書く傍ら、僕はずっと大洋村の物件の中から、僕でも買えるような格安の価格帯の売物件を探し続けてきた。

 それはもちろん、僕自身の純粋な興味によるところが一番大きいのだが、もうひとつ、このまま大洋村に時折顔を出すだけの立場のまま、これ以上大洋村の別荘地を写真付きで紹介し続けることに大きな抵抗があったためだ。たとえどれほど真摯な言葉で取り繕うとも、居住者でもなければ、利用者でもない単なる闖入者の立場のまま今の手法で紹介をし続ける限り、それは興味本位に基づく読み物の域を出ることができない。興味半分でも面白い地域ではあるとは思うが、当ブログの目指す方向性とは異なるのである。

 さてそんな折、4月のある日の朝、知人よりLINEで、「家いちば」という物件売買サイトで、大洋村の古い建売別荘が、物件価格20万円で売りに出されているという情報を頂いた。実はその前日、僕は横芝光町の物置用地の近くにある廃屋の取引が、売主の急な心変わりで破談になってしまっていて失意の中にあったのだが、まさかの翌日のこの朗報で、そんな廃屋なんかもういらねーよとばかりにその傷はあっさり完治し、連絡を受けて10分後には早くも物件見学の申込フォームに入力し始め、同日の夕方までには、その2日後に実際に売主の方とお会いして物件の見学をさせてもらう段取りまで漕ぎ着けた。とても家を買うものとは思えぬ無計画ぶりである。
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「家いちば」に掲載されていた20万円の古別荘。

 物件情報には、大まかな所在地の他には、建物の画像が1枚だけしか掲載されていなかったのだが、その地名と、物件画像に写る屋根の色や背景の地形、更には物件概要に記載された管理費などの金額から、グーグルマップを利用して所在地の特定に成功。見学予定日の前日には、現地入りした知人よりその物件周辺の模様を伝え聞いており、良く言えば探偵、普通に考えればほとんどストーカーまがいの手法で既に大体の物件の模様は把握していた。

 だが、まさかそのことを売主の方に伝えるわけにもいかないので、約束の日には素知らぬ顔で、物件所在地の近くのコンビニで売主の方とお会いしたところ、あいにく既に買う気満々の雰囲気までは隠せてなかったようで、まだ実際に建物を見てもないのに「もう買うと決めてるのですか!?」と驚かれてしまった。

 「家いちば」は、掲載物件の立地や状態、資産価値は問わない代わりに、成約に至るまではあくまで売主と買主がサイト専用の連絡フォームを利用して直接連絡を取り合い交渉するシステムである。申込フォームには自己紹介欄もあり、僕は正直に、分譲地の探索ブログを書いていてその調査に使うと伝えておいたので、売主さんからすればまさに純度100%の不審者であったわけだが、幸いなことに売主さんはこの家を手放すことにまったく未練はないらしく、掲載情報通りの条件で購入の確約を取ることができた。

 懸念していた家屋の状態も、もちろん随所に老朽化は見られ、一部の床板は柔らかくなっており、また残置物の処理も僕の負担となるが、伝え聞くところによれば、大洋村の格安物件は、壁が剥がれていたり屋内に野生動物の糞が残されていたりすることもあるようなので、それに比べれば状態ははるかに良いものであった。雨漏りの形跡も、今のところは見当たらない。ただしこの建物は、建物自体は平坦地の上に建てられているにもかかわらず、なぜか基礎は電柱の輪切りと思われる丸木であった。なお、この建物は1981年築、築年数は39年である。

 20万円という金額はこれまで僕が見た大洋村の売り物件では最安値のものだが、その価格の安さの最大の理由は、敷地内への車両の進入が不可という点である。敷地に面した私道脇に、白線で引かれた専用の駐車スペースはあるのだが、家屋が建つ敷地内までどうしても階段で上り下りしなければならない地形が、他と比較しても廉価である理由であろう。
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取得した大洋村の古別荘。敷地内へ車両は進入することができない。
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別荘の室内の模様。残置物も含めての引き渡しとなった。
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庭に設置された物置内にも大量の残置物が残る。
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丸木の基礎。木製電柱を輪切りしたものだろうか。

 その後の契約の流れは、家いちばが指定する宅建士が間に入り、宅建士による現地調査を経たのち、一般の不動産取引同様、対面での重要事項説明が行われるのだが、既に周知の通り、取引時は新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言中であったため、重要事項説明は、LINEのビデオ通話機能を利用したオンライン重説となった。

 これは僕にとっても初めての経験で、現場労働者である僕はこれまで、テレワークはおろかビデオ通話の使用経験もなかったが、不動産取引の新たな時代の幕開けともなるオンライン重説は貴重な経験となった。もっとも、ウェブカメラも持っていない僕は、単にスマホを三脚で立てただけなのだが。

 その後は、やはり家いちば指定の司法書士の先生と連絡を取り合い、郵送されてきた契約書の捺印と、指定された期日に売買代金と手数料を振り込み無事に契約が完了した。その取引の流れ自体は一般の不動産業者によるものと変わりはないのだが、指定された司法書士は東京・銀座の事務所であったため、地元業者指定の地元の司法書士と比較して、大洋村までの交通費などが若干高めである可能性はある。

 ちなみに司法書士への手数料は登録免許税を含めて133700円、家いちば指定の宅建士への仲介手数料は71700円で、手数料だけで物件価格と同額になってしまった。どの物件を購入する際にも掛かる費用とは言え、元の物件価格が価格なので、なんだか手数料がひどく高額に感じてしまう。ということで、契約時の支払額は合計で41万円となってしまったが、ともあれ売買契約自体は特に障壁もなく、晴れてその古別荘は僕の所有となった。
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 とは言っても、実はまだここで一件落着というわけにはいかない。大洋村の、それも開発当初に建売で分譲された別荘地の多くは、今でも別荘地内の水道を、それぞれの別荘地内で構築された集中井戸を利用している。この集中井戸は浅井戸であるために、その水質の悪化も懸念されているものだが、元々上水道の普及率が低い農村部で、加えて多くの別荘地内の道路は私道であるがゆえに公営水道の配備も進んでいない。

 僕が買った別荘地の場合、その集中井戸の利用料は、私道の管理費(道路整美や街灯の維持)と併せて、年間で37000円(税込)。しかも昨年度より、別荘の共有施設を利用する新規の物件取得者は、これの他にさらに加入金として81000円(税込)を負担する必要がある。加入金は最初に一度だけ負担するものであり、これに関しては、共有設備の加入金が必要な分譲地の物件は、その分だけ物件価格が抑えられているのが普通なのでそこまで気にはならないが(ないに越したことはないが)、多くても月に数度の別荘利用で、年間37000円もの水道代というのは、なかなかテンションの下がる負担である。
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集中井戸を管理する「かしま野管理サービス」が発行する会報誌。

 そこで、集中井戸を管理する地元の管理会社「かしま野管理サービス」に問い合わせ、もし仮に、自前で井戸を掘ってそれを利用した場合は、集中井戸の利用代はどうなるのか問うてみたところ、井戸代は管理費より省かせてもらうが、道路維持や街灯の管理費は頂くことになるので、金額はそこまで変わらない、との回答であった。これは正直かなり悩んだが、それでも結局は、僕も加入金と、集中井戸の利用代を含めた年間管理費を負担することで話はまとまった。

 確かに、水道代として考えれば月に3000円以上の負担は僕にとって重いものである。しかし元々別荘地というものは、定住者が限られていることから、管理会社・管理費が存在するのが普通である。千葉にある一般住宅用の限界分譲地のような、利用者による共用設備の自主管理など土台無理な話であり、実際にその限界分譲地において僕はこれまで幾度も、管理者もなく、朽ち果てた集中井戸や街灯の残骸を目にしてきた。
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 この別荘地の私道上には、別荘利用者が共同で利用する駐車スペースが存在する。街灯も勿論稼働している。それらはしっかりと利用しておきながら、管理費の負担ばかり免れる訳にもいかない。高いと言っても、各地の大手事業者による有名別荘地の管理費と比較すれば安いし、限界分譲地を利用するということは、つまりはこういうことなのだと、自分に言い聞かせるために既に数十行以上にわたってクドクドと述べ続けながら、いまだキーボードを打つ手が止まらないほどにダメージの大きい金額である。

 そんなわけで、勢いだけで取得してしまったゆえに、その先行きもちょっと不安にならざるを得ない大洋村の別荘であるが、今後はこの古別荘の補修の模様をお伝えするとともに、ここを茨城県側の拠点として、更に大洋村や周辺地域の調査にも邁進していくつもりですので、どうぞ温かいご声援のほどよろしくお願いいたします。

 それにしても管理費(以下略)
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