放棄区画

旧サブブログ: 海辺の限界分譲地

 我が家のある分譲地の総区画数は43区画。家屋は7戸で、我が家も含めて4戸が常住、1戸が別荘として利用中、残りの2戸は、一応別荘や会社の保養所のはずなのだけど、僕も妻も、近所の人も、実際に使われている光景は一度も見たことがなく半放置状態だ。

 残る36区画はすべて空き地である。過去に建物が建てられていた形跡もなく、分譲当時からずっと空き地のままの未利用区画だ。その空き地のうち、地主から依頼を受けた草刈り業者が管理をしている区画は約6割ほどで、残りは草刈りもされることもなく、雑草や雑木が生え放題の放棄区画である。

 その放棄区画の中でも、おそらく一番荒れ果てているのが我が家の隣の区画である。多分所有者は、購入してから一度もまともに整備をしたことがないのではないかと思う。

 この分譲地は元々養魚場だったところを埋め立てて造成してあるので、当初は草木一本もない状態で分譲・販売されていたはずなのだが、分譲から35年が経過した今、この放棄区画は、小鳥の糞から発芽したと思われる雑木が、今や2階の屋根くらいまでの高さに達し、緩やかに雑木林と化しつつある。もちろん、夏の間は恒常的に我が家の敷地内に横枝や雑草が越境してくる。

 登記簿を取って所有者情報を調べてみたところ、所有者は、1987年の分譲当初に購入した東京都内の方で、その後一度も所有者が変わることもなく今に至っている。住所移転の登記も行われておらず、所有者の住所は、35年前の所有権移転登記の時点のままで、しかもあろうことか、その住所は賃貸らしきアパートのものだ。

 Googleマップでその住所を確認すると、該当のアパート自体は今でも残されているようだが、それは広くてもせいぜい2DK程度と思われる、どこにでもあるような木造アパートで、まさかこのアパートに35年後の今も暮らしていることはあるまい。特にコンタクトを取ってはいないのだが、試してみるまでもなく連絡不能であろう。

 この分譲地は更地でも固定資産税が課税されるので、役場は所有者の現在の消息を捕捉しているかもしれないが、仮に僕の所有地と同じ課税額であるとしたらその税額は年4900円なので、これだと仮に滞納していても、役場は未納分の徴収にも動かず放置しているかもしれない。固定資産税が安すぎて、差し押さえて公売を行ってもトータルで赤字になりそうな場合は、あえて深追いしない自治体もあるとは聞く。

 僕はこの分譲地の空き地の登記簿を、これまでに約20区画分くらい取得して見ているが、いくつかの区画は、住宅ローン(当時は投機目的で購入する更地でも組める信販会社の住宅ローンがあったらしい)を組んで購入しており、その極度額を見る限り、1987年当時は1区画(30坪)600万円前後で分譲されていた模様だ。

 隣地の所有者の方も、自宅は賃貸アパートでも、資産形成を夢見て、この光町の限界分譲地に己の夢を託したのだろうか。突き放すようで申し訳ないけど、僕はこの分譲地の30坪をを20万円で購入している。当時の坪単価と同額で、実に30分の1の大暴落であり、これでは資産形成も何もあったものではない。

 越境してくる横枝や雑草については、その都度自己判断で勝手に伐採している。厳密に言えば、本来はこういう越境樹木も財産の一部で、伐採はきちんと土地所有者の許諾を取って行うものであり、役場を通じて所有者にお願いするのが原則なのだが、我が家のような限界分譲地において、そんな迂遠なことをしている人が果たしてどれだけいるだろうか。

 そもそも、こういう放棄区画は、所有者自身が、自分の土地の現況などまったく把握していないのが普通であるし、越境樹木をきちんと刈り取ってくれるほど責任感のある方であれば、そもそも最初から草刈り業者を入れて管理している。我が家を含め、うちの分譲地の住民は、全員が自己判断でそれぞれ自宅の周りの放棄区画の草刈りを行っている。あまり大きな声では言えないけど、それで波風ひとつ立たないのが限界分譲地の実情である。

コメント

  1. ぽん より:

    いつも吉川さんのブログを見て不思議に思うのですが、このような辺鄙な場所の分譲地を
    わざわざローンを組んで購入した人がいることに驚かされます。
    (土地神話の時代、猫も杓子も土地を欲しがっていたとはいえ・・・)

    小金持ちが、現地も碌に確認せずに適当に土地を買いあさるのならまだ分かります。
    しかし、吉川さんの隣地の所有者はわざわざローンを組んでいるのですよね・・?

    昔なら金利も相当高かったでしょうし、600万前後の土地とはいえ金利込みだともっと高くなりますよね。

    せめて現地を確認したりしなかったのでしょうか?
    それとも、現地は見たけど不動産屋に騙されて、なけなしの金をつぎ込んだのでしょうか?

    完全に自業自得ではありますが、似たような土地所有者をブログで何回も見る度に非常に切なくなります。。。。何故その土地を購入してしまい、今はどう思っているのか、、、気になってしまいます。

  2. 吉川祐介 より:

    >>ぽんさん

    コメントありがとうございます。

    隣地の方は一括で買っているようなのですが、他の区画の方はローンを組んでいる模様の方が何人もいますね。

    僕も、この時代を実体験として知っているわけではないのでなかなか当時の人たちの土地に対する感覚は分からないのですが、確実に言えるのは、どんな分譲地でも飛ぶように売れて数か月もしないうちに完売してしまうので、先を越されてはならない、と言う焦りがあったのではと思います。もちろん見学した方もいましたが、現地も見ずに購入した方は相当な数に上ると思います。

    既に都市部では、サラリーマンの給料での土地購入は不可能になってましたから、これが、一庶民が地主=資産家になる最後の手段、と考えられていたのかもしれません。

    こうした土地を所有していたばっかりに、悪徳業者にも狙われ、親子間のもめごとになっている事例もあります。実際に最近になってこの手の分譲地を購入した人は、失意のうちに不本意な安値で売らざるを得なくなった売主さんの複雑な感情を目にする機会が多いです。昔はもっと高かったのだ、ここまで安くしてるんだから値切らなくてもいいじゃないか、などなど…。愚痴る売主さんに対し、そのお子さんがたしなめることもあるそうです。

    だからこそ、僕はもう、勇気をもって手放して、すべて次の世代に明け渡してほしいと思うのです。

  3. ぽん より:

    返信ありがとうございます。

    確かにおっしゃる通りですね。確かに600万くらいなら、現実的に手が出せる価格ですし土地の購入に焦っていれば買ってしまうかもしれないですよね。

    >>だからこそ、僕はもう、勇気をもって手放して、すべて次の世代に明け渡してほしいと思うのです。

    そうですね。山の奥地にあるような分譲地以外なら、潔く損切りするべきですよね。需要が0ではないでしょうから。(コンパクトシティとは逆行しますが)

    ブログの趣旨からは外れてしまうかもしれませんが、当時土地を購入された方のインタビュ記事を載せて頂ければ面白いな、なんて思いました。当時の方が、どんな思いから購入したのか気になります。(ほとんどの地主さんは拒否するでしょうが)

タイトルとURLをコピーしました