津波と塩害

旧サブブログ: 海辺の限界分譲地

 僕の住む家がある横芝光町の分譲地は、往時は海水浴場として賑わった木戸浜海岸から直線距離で1kmにも満たない。近くには栗山川も流れ、町が発行するハザードマップでは、もちろん我が家の分譲地も含め、周辺一帯は浸水リスクの高い地域として青く染まっている。自宅の敷地内でも波の音が聞こえてくるほどの距離だ。

 災害リスクをどうでも良いと考えているわけではなく、僕の妻は東日本大震災の被災者でもあるので、本来ならばもう少しリスクの低い土地に住むべきだとは、頭ではわかっている。東京の下町エリアのように、浸水リスクが高くとも、そのリスク以上に利便性やコストパフォーマンスが高いのならともかく、この地価の安いエリアで、わざわざハイリスクな立地を選ぶ合理的な理由はない。

 それでも住んでいるのは、人気がないがゆえに分譲地内に家屋がほとんどなく開放的であること、土地値や賃料が安かったこと、また海岸近くということで、真夏でも夜になればそれなりに涼しいこと、すでに木戸浜海水浴場は閉鎖されて久しく、今は観光地のような喧騒がまったくないことなど、日々の暮らしにおいて快適な要素がいくつもあり、分譲地自体も、近隣の目を気にせず好き勝手に使えるスペースが多く自由度が高いからだ。

 したがって、あくまで自己責任でこの地にとどまり続けている以上、自己防衛として災害対策は可能な限り万全にせざるを得ない。日用品などでも、なるべく災害時でも使えるようなものをチョイスしているつもりであるし、非常食の備えも充分にしているとは思うが、しかしいざ大地震が起きて津波の危機が迫ろうものなら、そんな非常用品など二の次、まずは緊急避難用地として指定されている(海が近いので避難所の開設は行われない)、最寄りの小学校まで身支度一つで避難しなくてはならない。

 今年は、1月16日に発生したトンガ大噴火、また3月16日に発生した福島県沖地震など、千葉県北東部においても潮位の上昇が観測され津波注意報が発令された災害が続いている。ところがこの災害、両者とも深夜の時間帯に発生しており、僕は夜勤アルバイトのため留守にしていて、妻が自宅で一人で過ごしている状態であった。

 夜勤のために車は僕が使っていたので妻には移動手段がなく、どちらにしても妻はその時間にはお酒を飲んでいるのが普通なので、よほど危険が差し迫ってもいない限り車で避難することができない。

 そこで今回、緊急避難用としての折りたたみ自転車を購入し、玄関に常備することにした。僕も妻も、都内で暮らしていた時に使用していた自転車が今も自宅にあるのだが、田舎なので普段は自家用車で移動するために自転車に全く乗らなくなってしまい、おまけに横芝光町に来てからは、海が近くて塩害がひどいので、外に放置していた自転車はすっかり錆びついてしまった。もはや、再利用できるのはアルミ製のフレームのみで、ハンドルも、タイヤのスポークも、サドルも、チェーンもスプロケットなど鉄部は全て錆びついており、そのままではまともに使用することができない。

 それ以上に問題なのは、このあたりは今や完全に車社会で、自転車人口が極端に少ないがために、近所に自転車屋がなく(かつてはあったようだがすでに閉業している)、部品の調達も整備もままならないことだ。東京から持ち込んだ自転車は折りたたみではないので運ぶ手段もなく、お金をかけて直したところで、結局平時は放置してしまうのは目に見えているので、屋内保管できる折りたたみ自転車を新たに買い直したほうが良いという結論になったのだ。改めて考えてみれば、近所で見かける自転車は、いつも都会から来たと思しきロードバイクばかりで、ママチャリなどで移動する人を見かけることは殆ど無い気がする。

 保管性を考えて、電動キックボードも視野に入れてはみたのだが、こちらは法令に適合した保安部品をつけていないと、公道での走行は不可である。もっとも、緊急避難時は道路交通法について気にしていられる場合でもなく、反則金の支払いごときで命が助かるのであれば、そんなものはいくら払っても惜しくないが、ちょうどキックボードに関しては法改正も控えているとの報道があり、現時点で販売されているキックボードは改正法にも適合しない中途半端な商品のおそれが高いので、今回は見送ることにした。

 電動キックボードの法改正に関しては、ただでさえ整備が不十分な日本国内の道路事情においては、無謀運転による歩行者などとの接触事故のリスクも高まるとして反対の声も強いが、我が家から避難所の小学校までは、四方が開けた広大な田んぼしかないので、そういうリスクについては少ないと思う。むしろキックボードのような、生身の体一つで乗るような玩具は、都会より田舎のほうが向いている。保管のしやすさは折り畳み自転車以上であり、今後の状況次第では導入を検討してもよいだろう。

 ということで、ここまで書いてきて、やれ津波などの災害リスクだの塩害だので、果たして僕の家のある土地は本当に住心地が良いのか、ちょっと疑問にもなってきたところではあるけれど、昨今は自宅周辺の賃料相場も上がってしまい、今の家賃では新たに借りるにしても、間違いなくグレードダウンしなければ借り直すこともできないので、当面は今の貸家に住み続けざるを得ないし、引っ越しの予定もない。災害対策については、今後も引き続き工夫をこらしていきたいと考えている。

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