前回の記事で書いたオフ会の主催者であるYouTuberのかずひろさんは(チャンネル「週刊小屋暮らし」運営。文末リンク参照)、現在は外房エリアのとある雑木林の奥に眠っていた放棄分譲地に自作の小屋を建てて生活しているが、本業はスマートフォンを始めとしたガジェットのレビューを行うYouTuberである。仕事も少ない外房の小さな町の放棄分譲地に、小屋を建てて暮らすという生活も、その稼業だからこそ可能な選択肢の一つとも言える。
ガジェット系YouTuberの方々のもとには、様々なメーカーから(中国系企業が多い)、商品の提供を報酬とする代わりに、自社製品のレビュー動画の作成を依頼する案件が恒常的に舞い込んでくるので、かずひろさんも日々そんな案件をこなして様々なレビュー動画を公開している。
だが、いくら新発売の製品といえども、提供される商品の中には、ご自身で以前から使われている私物のガジェットよりも、性能面で見劣りしているケースもあるようだ。ガジェット系YouTuberで身を立てるくらいなのだから、当然こだわりは人一倍強いはずで、むしろそのほうが自然な話であろう。
今回、僕はありがたいことに、そんな提供品であるAndroidタブレットを譲っていただける幸運に恵まれた。頂いたタブレットは中国Alldocube製のX Gameという製品で、かずひろさんが動画内でレビューしているように、確かに純正ケース付属のキーボードは使い勝手の面で一部難があったものの(ケースごと手持ちで使ってもキー操作が無効にならない)、それ以外は、ゲームもやらず高スペックを必要としない僕は不満に思うところは何もない(充電中の誤作動もない)。
最近はバイトの休憩中にサブブログを更新する機会が増えたこともあり、このタブレットをメイン回線用の端末にするべく、通信会社の乗り換えを行うことにした。
ALLDOCUBE
僕は元々最新ガジェットに対する頓着は薄い方だった。今は当たり前になったスマートフォンも、そもそも最初は、勤務先の連絡手段にLINEを使用することになったのが購入のきっかけで、すでにとっくにiPhoneを始めとしたスマホが普及していたにもかかわらず、僕はまったくなんの関心も持っていなかった。パソコンは持っていたが、それもちょっとネットサーフィンをするためだけの用途であり、重要なのは販売価格だけで、スペックを入念に調べて買うこともなかった。
今でもその知識不足が災いして苦労させられることも多々あるとはいえ、あの頃に比べれば、タブレットに合わせて通信会社を吟味するなど、これまでの僕には考えられなかったことである。それはもちろん、お譲りいただけることになったことが一番のきっかけであったとはいえ、それ以外でも、通信環境や、通信機能を持つ製品に対する関心は俄然高くなっている。
おそらくそれは、僕自身が変わったというよりも、通信機能を持つガジェットそのものの普及が更に進み、僕のような末端のユーザーまで行き届くようになったということであろう。
改めて考えてみると、限界ニュータウンや限界分譲地の利用において、今やネット通信は絶対に切っても切れない関係にある。それは、例えば商業地が遠くて不便だからネット通販が便利だとか、かずひろさんのようにネットを駆使した自営業やテレワークので通勤の必要がなくなったとか、そういう実際に住み始めてからの話ではなく、それ以前の話、物件探しの時点ですでに、多かれ少なかれネットの情報網を頼らざるを得ない状態になっている。
今も千葉県の僻地に数多く残されている限界分譲地は、もちろんまだネットなど影も形もなかった時代に開発され、その後数十年に渡って放置され続けてきたものだが、放置されてしまった原因の一つとして、単にバブルの崩壊だけでなく、ネット普及以前は、そもそも限界分譲地の物件情報の入手自体が困難だった、という事情もあったのではないだろうか。
ネットによる物件広告の掲載が一般的になる以前は、物件情報といえば新聞の折込チラシや紙面広告、あるいは物件情報誌などの掲載が一般的だったが、これらの掲載料はいずれも決して安いものではなく、多くの不動産屋にとって、限界分譲地の優先順位は相当に低かったであろうことは容易に想像がつく。買い手にしても、グーグルマップもないのだから、小さな広告の限られた情報だけでは、そこがどんな場所であるかもわからない。よほど地元密着型の業者でもなければ、問い合わせても、現地の案内などしてくれなかったであろう。
しかし、今は違う。限界分譲地の資産価値が低く、地元業者の関心も低い状況は今でもあまり変わらないが、昔に比べれば、物件広告の掲載コストはずっと安くなっている。物件サイトは、雑誌や紙面広告とは比較にならないほど大量の情報を掲載することが可能で、限界分譲地の安い売地でも、今は写真も掲載され、グーグルマップ上で所在地も公開していることがほとんどだ。
この所在地の公開には理由があって、不動産屋も多忙で、価格の低い土地の問い合わせにいちいち応じていたらきりがないので、可能な限り広告上で情報を公開していると思われる。近隣の目印まで記載して、見学者に自己判断で勝手に見に行ってもらうことを狙っているとしか思えない広告もある。中古住宅と異なり、どうせ現地は更地で何もないし、場合によっては草ボウボウで立ち入ることも困難なのだから、無断見学がもたらすリスクもほとんどない。
多くの買い手にしても、わざわざ日時の約束を取り付けて不動産営業マンの立ち会いの元に案内されるよりも、ドライブがてら一人で勝手に見に行ったほうがよっぽど気楽である。予めグーグルマップで下調べしておけば、好みとは大きく異なる分譲地に無駄足を運ぶリスクも少ない。限界分譲地自体は、今や近代史の一部と化しつつある昭和の時代の遺物だが、それを巡る取引の態様は、ここ10年ほどの間ですっかり様変わりしているはずなのだ。
もちろん、だからと言って、これからは限界分譲地の再利用が活発になる時代が来る、なんて脳天気な見通しを披露するつもりはない。ネット通信がいくら進化しようとも、それを下支えするのはまずは都市文化であり、そしてそんな都市を目指す人が多数派であるからこそ、都市は都市たる所以なのだから、人口減の時代となった今、僻地の分譲地のパワーバランスを逆転させるほどの社会の変革は、よほどの事態が起こらない限りありえないだろう。それはそれで、仕方ないことだと個人的には考えている。
ただ、多数派になどならなくてもいいから、せめて選択肢の一つとして、こんな限界分譲地の暮らしも定着してくれれば良いなと、僕は思うのだ。
【参考リンク】
週刊小屋暮らし
3/20のオフ会参加者さんのYouTubeチャンネル
吉田克也さん
小屋暮らしのまさやさん
「ゼロから始める小屋暮らし」
ジョージさん
「ツールウェアDIYソーラーch」
YouTubeチャンネルはありませんが、オフ会には、小屋暮らしを目指すプレハブさんも参加していました。
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