2019年9月9日未明、房総半島南部より上陸した台風15号は、千葉市中央区で風速57mを観測するなど、県内観測史上最大の暴風雨をもたらし、千葉県のみならず、茨城県、神奈川県、そして伊豆諸島まで及ぶ甚大な被害を引き起こした。

 その勢力は、地元出身者に「50年ここで暮らしてきたが、これほどの被害は過去に記憶がない」と言わせるほど激甚なもので、特に経年家屋を中心に家屋の損傷も広範囲で発生したのだが、市民生活にもっとも深刻な影響を及ぼしたのは停電で、電柱の損壊や、倒木による断線などで、千葉県内だけでも80万軒以上に及ぶ大規模停電に見舞われた。当記事の執筆時点(9月16日)で、なおも8万戸以上で停電が続いている。
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暴風によって倒壊した道路脇の看板。(多古町十余三)
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倒木が広範囲な大規模停電を引き起こした。(富里市十倉)
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作動していない交差点の信号機。車両同士が徐行して通過している。(富里市十倉)

 僕の住む芝山町の自宅も、停電、断水に見舞われ、幸い団地専用の水道であったために断水は公営水道より早く当日に解消したが、停電は3日に及び、台風通過後は一転して無風の熱帯夜となり、築年数が古く断熱性に劣る我が家はとても屋内で過ごせる状態でなく、妻とともに車中泊を強いられることとなった。

 それでも芝山町内では僕の住む地域は復旧は早く幸運な方で、山林の多い芝山町は近隣と比較して復旧作業は大幅に遅れており、なおも町内の大半の地域で、停電、断水(電動井戸ポンプが作動させられず汲み上げられない)状態の不便な生活を強いられている。

 当ブログにおいてはこれまで、主に北総エリアに点在する分譲地を訪問し、その模様を写真に収め紹介してきたが、それらの分譲地や特定の物件の中には、今回の台風によって、深刻な被害が及んでいる可能性が考えられるものがいくつかあり、再訪問して被害状況の確認につとめた。今回は、過去に訪問した記事の中から、実際に台風被害が発生していたものをいくつか紹介していきたい。


【八街市朝日・倒壊寸前の廃アパート】

 まず真っ先に訪問したのは、「八街『危険空き家』レポート」の記事で紹介した、八街市朝日の、屋根材が取り払われ放置されている廃アパート「アビタシオン・エム」である。記事でも書いたように、このアパートは執筆時点で既に行政側もその危険性を認識しており、実際に周辺住民に被害を及ぼしていたものの、まだ抵当権が残されている建物であるがゆえに所有者が建物の撤去に応じず、崩落が続いている危険家屋である。
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台風到来前から既に危険な状態であった八街市朝日の廃アパート「アビタシオン・エム」。(2018年2月撮影)
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レポート時点で既に外廊下は崩落し、周辺住民に被害を及ぼしていた。(2018年2月撮影)

 僕たちは元々このアパートの近所で暮らしていたものの、記事執筆後に転出してしまい、僕自身は時折前の県道を自家用車で通過するだけで、あまり再訪する機会はなかったが、八街市内に通勤する妻からは、たびたびその現況を耳にしていた。これまでは、特に目立った変化はなかったのだが、家屋にこれほどの被害を及ぼした今回の台風である。既に屋根が取り払われたこの建物が無事で済むはずがない。朝日もまだ停電が続いていたようだが、早速駆けつけてみることにした。

 アパートは県道に面していて駐車場所がないので、裏側からアクセスを試みたが、遠目から見ても明らかに前回訪問時より、建物の形が歪になっている。屋根の垂木はすべて吹っ飛ばされ、屋根に大穴が空いてしまっている状態だ。県道側はなおも原型をとどめてはいるものの、木材が風雨でこれ以上劣化すれば、おそらく自重によって倒壊するであろう。
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遠目から見ても明らかに外壁が歪んでいるアビタシオン・エム。
 
 近寄るのは抵抗があったが、外壁は敷地側に歪み、周辺道路には特に建材の破片が散らばっている様子もなかったので、建物に近付いて見たのだが、特に二階部分の外壁が大きく傾き外壁材も剥がれ始め、居室のドアまでも激しく歪んでいる。この状態でなおも外壁が崩れ落ちず維持されているのが不思議になるほどの状態であった。
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内側に向けて二階部分が大きく歪んでいる。
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外壁材も剥がれ、自重で今にも倒壊しそうだ。

 敷地内は樹木や雑草の繁茂が激しくあまり状況が掴めないのだが、ここは浄化槽が腐朽して敷地内に陥没箇所があるので無用な立ち入りは絶対に禁物である。大まかに見ただけでも、敷地内は瓦礫の山と化しているようだ。IMG_20190915_100431
敷地内は雑木林と化しその模様はよくわからないが、瓦礫が散乱しているのはわかる。

 八街も広範囲で停電があり、総武本線の運行再開も時間が掛かり、市民生活に混乱をもたらした。その状況で早急な対策を求めるのも酷な話であることはわかる。加えて先にも述べたようにこの建物は、今なお抵当権が登記されており、行政としても、空き家対策特別措置法も適用できない状態であり、現状ではどうにもならないのだが、元々台地に位置する八街市は砂埃で知られるように、強風の吹く土地柄として知られる。周辺住民に人的被害が及ぶことは避けなくてはならない。予断を許さない状態に突入していることを強く述べておきたい。

(中編へ続く)